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東北大、慢性腎不全マウスの組織修復に成功-ヒト多能性幹細胞を投与 | 科学技術・大学 ニュース | 日刊工業新聞 電子版(記事は下記に)
NEDO:Muse細胞を用いたヒト3次元培養皮膚が実用化へ(記事は下記に)
今、注目のMuse細胞の発見者 出澤真理氏が第4回がん撲滅サミットに登場!|第4回がん撲滅サミット実行委員会のプレスリリース(記事は下記に)
NEDO:Muse細胞を用いたヒト3次元培養皮膚が実用化へ(記事は下記に)
【現場から、】新しい時代に、注目のMuse細胞 研究本格化 TBS NEWS
【現場から、】新しい時代に、注目のMuse細胞 研究本格化
シリーズ「現場から、新しい時代に」。今回は「Muse(ミューズ)細胞」と呼ばれる新たな万能細胞についてお伝えします。いま研究が本格化していて、近い将来、脳梗塞などの後遺症を点滴で治せるようになるかもしれないと、注目されています。
仙台市に住む針生敏郎さん(66)。1年半前、脳出血で倒れ、妻の幸美さん(55)と一緒にリハビリを続けています。
「痛がったり、したいことが伝わらない。聞いても答えてくれない。意思が伝わるようになれば」(妻 幸美さん)
脳神経細胞が死滅して起きる、まひなどの後遺症。治療に効果を発揮すると期待されているのが、Muse細胞です。こちらの実験映像。脳梗塞を起こしたラットは歩くことすらままなりません。しかし、Muse細胞を投与してから3か月後、回復を遂げました。一体何が起きたのか。Muse細胞を発見した東北大学の出澤真理教授。この万能細胞には、壊れた神経細胞などを再生させる力があると話します。
「血管に投与しただけで傷の場所に行き、壊れた複数の細胞に同時多発的になり代わってくれる」(Muse細胞発見した 出澤真理教授)
Muse細胞を血液中に投与。すると、傷ついた場所までたどり着き、新たな細胞に変化して、機能をよみがえらせるというのです。驚くべき力を持つMuse細胞。実は、私たちの体内に存在しています。
「体はいろいろな所が傷ついたり、細胞がなくなったりしている。それをメンテナンスして、恒常性を保つ一端を担っているのがMuse細胞」(Muse細胞発見した 出澤真理教授)
しかし、まひなどの後遺症は、体内のMuse細胞では足りず、ドナーから取り出した他の人のMuse細胞を投与することで、あのラットのように回復が見込めるのです。
そして、いま、実用化に向けた研究が本格化しています。東北大学病院では去年9月から、Muse細胞の点滴を実際の患者に投与する治験が始まっています。まひなどの後遺症を点滴で治せるかもしれないMuse細胞。厚生労働省の承認を得て再来年にも製品化される期待が高まっています。
「すごく楽しみにしている。一日でも早く実用化されればトライしたい」(妻 幸美さん)
「Muse細胞の点滴ができると、再生医療が一般のクリニックでもできるようになる。医療を大きく変えることができるのではないか」(Muse細胞発見した 出澤真理教授)
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プレスリリース:脳梗塞に対するMuse細胞治療の治験開始
2018/09/07
9月3日に、共同研究を行っている株式会社生命科学インスティテュートと共に東京で記者会見を行いました。
内容は、「脳梗塞患者を対象としたMuse細胞製品の探索的臨床試験の開始」についてです。
Muse 細胞(Multilineage-differentiating Stress Enduring cell)は、2010 年に本学の出澤真理教授らのグループにより発見された、ヒトの多様な細胞に分化する能力を有する多能性幹細胞です。もとから生体内の間葉系組織内に存在する自然の幹細胞であることから腫瘍化の懸念が少ないことに加え、目的とする細胞に分化誘導する必要がなく、そのまま静脈内に投与するだけで傷害部位に遊走、集積し、生着して組織を修復するという特長を有しています。
私たち脳神経外科も早くからこの細胞に注目し、前臨床試験(動物実験)を行ってきました。前臨床試験の結果、Muse細胞で治療することにより、運動機能や知覚障害の有意な改善が得られることが証明されています。
今回の治験では、発症後亜急性期の脳梗塞患者さんを対象に、細胞製剤を静脈内投与することにより治療します。プラセボを対照とし、二重盲検で35例の患者さんを治療します。9月中に当院で治験を開始予定です。
本治療により、脳梗塞の患者さんの転帰改善につながれば幸いです。
NHK、テレビ朝日(報道ステーション)からはテレビ取材も入りました。下記にそれぞれの記事・動画へのリンクを用意しました。
文責:新妻邦泰
三菱ケミカル系バイオ企業、再生細胞で脳梗塞を治療へ :日本経済新聞
三菱ケミカル系バイオ企業、再生細胞で脳梗塞を治療へ
2018/9/3 15:25
三菱ケミカルホールディングス傘下の生命科学インスティテュート(東京・千代田、木曽誠一社長)は3日、開発中の再生医療製品「Muse(ミューズ)細胞」の新たな臨床試験(治験)を始めると発表した。すでに急性心筋梗塞の治験が1月からスタートしており、今回は2つめの治験として脳梗塞治療を狙う。有効性や安全性を確認し早期実用化を目指す。
治験について説明する生命科学インスティテュートの木曽社長(写真(左))=東京都中央区
脳梗塞の治験について説明する東北大の
冨永教授(東京都中央区)
ミューズ細胞は東北大学の出沢真理教授らの研究チームが発見した多能性細胞の1つで、様々な細胞に分化する性質が知られている。点滴で静脈に送り込むと体内の傷ついた場所に集まり、組織や細胞を再生する性質がある。この性質を使った様々な研究が進んでいる。
生命科学インスティテュートは東北大学病院で9月から脳梗塞患者を対象にした治験を始める。脳梗塞による年間死亡者数は6万人以上とされ、脳梗塞を含む脳血管障害は日本における入院原因の第2位。発症後に運動機能障害などの後遺症も起きるため、要介護になる可能性も高い。
これまでのラットを使った治療実験では運動機能の改善効果が確認されており、今回、実際の脳梗塞患者を対象にした治験で安全性や有効性を確かめる。
木曽社長は「今ある医療現場の他の治療法に比べて製造コストも低く、使い勝手もいい治療法となるだろう」と強調。研究代表の東北大の冨永悌二教授は「脳梗塞の後遺症は生活の質を落とす原因だが、ミューズ細胞で介助不要な状況に改善できる可能性がある」と話した。
今回の治験は脳梗塞発症後2週間以上が経過し20歳以上80歳以下の患者が対象で、身体機能の障害などを起こしていることが治験に参加できる患者の条件となる。約35人を対象に治験を進め、2020年1月の終了を見込んでいる。(高田倫志)
今、注目のMuse細胞の発見者 出澤真理氏が第4回がん撲滅サミットに登場!|第4回がん撲滅サミット実行委員会のプレスリリース
今、注目のMuse細胞の発見者 出澤真理氏が第4回がん撲滅サミットに登場!
2018年9月5日 10時00分第4回がん撲滅サミット実行委員会
2018年11月18日(日)午後1時から東京ビッグサイト国際会議場で開催される第4回がん撲滅サミット(https://cancer-zero.com)。
その医療スペシャル講演に先日の『報道ステーション』(ANN系列)でも取り上げられたMuse細胞の発見者 出澤真理氏(東北大学大学院医学系研究科細胞組織学分野教授)がいよいよ登場する。
東北大学大学院医学系研究科
細胞組織学分野教授 出澤真理氏
Muse細胞とは2010年に出澤氏らのグループによって発見されたもので、現在、第3の万能細胞として期待されており、体のさまざまな組織の細胞に変化する修復細胞である。古代よりトカゲやヤモリなど生物の体中に存在していたMuse細胞だが、人間に関して言えば、進化と共に減少し、さらに老化によって失われていくため、Muse細胞の活力は他の動物に比べて減退していると言わざるを得ない。
しかし、もともと人間の体の中に存在しているものだから、これを人為的に補強することによりストレス耐性があり、腫瘍性を持たないため、他の幹細胞よりも短時間でDNA損傷の修復を安全に行うことができるのである。そこで、このMuse細胞を点滴で静脈に投与することで、脳梗塞、腎不全、肝障害、皮膚損傷などの医療に応用しようという動きが加速化され始めた。その一つに出澤氏の東北大学大学院と岐阜大学大学院とのグループで急性心筋梗塞患者への臨床が2018年1月から開始されたほか、早ければ今年の9月から脳梗塞患者への臨床試験が開始される予定である。
すでに出澤真理氏の発見は世界でも注目されており、2018年4月にこれまで29人のノーベル賞受賞者が受賞してきたノーベル賞への登竜門『米国National Academy of Inventors』を受賞している。
新しいことを開始した人を見ると、とかく委縮させがちな日本だが出澤真理氏や中村祐輔氏のように物事を発見したり、開発した人物の話を聞くことは個人的にも、国益的にも重要であろう。
果たして出澤氏はMuse細胞をいかにして発見したのか、そしてMuse細胞は人類の医療にどんな変革をもたらすのか。その意外なエピソードは必聴、必見である。
第4回がん撲滅サミットの入場エントリー受付はすでに開始されている。詳しくは第4回がん撲滅サミット(https://cancer-zero.com)をご覧いただきたい。
お問い合わせは下記の通り。
【大会事務局】
公益財団法人がん研究会有明病院 総務課
〒135-8550 東京都江東区有明3丁目8番31号
TEL 03‐3570‐0397(直通)
担当:山﨑・高橋
【大会長事務局】
社会医療法人厚生会 木沢記念病院 経営支援部
〒505-8503 岐阜県美濃加茂市古井町下古井590
TEL 0574‐25‐2181(代表)
担当:南條
NEDO:Muse細胞を用いたヒト3次元培養皮膚が実用化へ
Muse細胞を用いたヒト3次元培養皮膚が実用化へ
-医薬品・化粧品等のスクリーニングや製品性能検証用キットとして販売開始-
2014年12月11日
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
国立大学法人東北大学
株式会社Clio
DSファーマバイオメディカル株式会社
NEDOは、東北大学、(株)Clio等のグループとともに、Muse細胞から皮膚のメラニン色素を産生するヒトのメラニン産生細胞を安定的に調製する方法を開発し、ヒト3次元培養皮膚を作製する実用化可能な技術を確立しました。(株)Clioは今回確立した技術をDSファーマバイオメディカル(株)にライセンスし、同社がヒトMuse細胞由来のメラニン産生細胞を組み込んだ3次元培養皮膚の安定的な製造技術を開発することで、医薬品・化粧品等の開発におけるスクリーニングや製品性能検証等用途に用いるキットの販売開始に至りました。
これにより、医薬品や化粧品などの開発において動物実験を用いず、ヒトの皮膚により近い培養皮膚を用いることで、医薬品や化粧品等による白斑症等の副作用や、化粧品による美白効果の検証が可能になることが期待されます。
図1.Muse細胞からヒト3次元培養皮膚による医薬品・化粧品等の研究・開発用キット作製の流れ
1.概要
20世紀末に多能性幹細胞※1の培養に成功して以後、これを用いて様々な細胞や器官を作製し、新薬開発や移植医療などへの利用を目指す再生医療技術は、従来の医療技術では根本的な治療が難しい組織・臓器の損傷や機能不全等に対する革新的な治療技術開発への取組として大きな注目を集めています。NEDOは、最先端医療技術の実用化を目指す中で、こうした再生医療技術の開発を進めてきました。その成果の一つとして、2010年に東北大学大学院医学系研究科出澤真理教授らのグループによって発見されたMuse細胞は、我々の皮膚、骨髄、脂肪等に広く存在する腫瘍性を持たない多能性幹細胞であり、生体内において傷害を受けた組織に自発的に移動し修復する働きを有していることから、こうした機能を利用することで安全で有効性の高い再生医療が実現されるものと期待されています。
このたびNEDOは、「次世代機能代替技術の研究開発」(2010年度-2014年度)プロジェクト※2において、東北大学、(株)Clio等のグループとともに、Muse細胞から皮膚のメラニン色素を産生するヒトのメラニン産生細胞を安定的に作り出す方法を開発しました。また、そこで得られたメラニン産生細胞を用いてヒト3次元培養皮膚を作製する実用化可能な技術を確立しました。
ヒトのメラニン産生細胞は皮膚において重要な役割を果たすものの、従来の技術ではこれを大量に培養することが難しく、メラニン産生細胞を含むヒトの3次元培養皮膚の安定的な製造は困難でした。(株)Clioは、今回確立した技術をDSファーマバイオメディカル(株)にライセンスし、同社がヒトMuse細胞由来のメラニン産生細胞を組み込んだ3次元培養皮膚の安定的な製造技術を開発し、医薬品・化粧品等の開発におけるスクリーニングや製品性能検証等の用途に用いるキットの販売を開始することで、本技術の実用化に至りました。
この実用化により、医薬品や化粧品等の開発において動物実験を用いず、ヒトの皮膚により近い培養皮膚を用いた製品機能の検証が可能になるとともに、医薬品や化粧品等による白斑症等の副作用や、化粧品の美白効果も検証可能になり、安全性や効能の高い製品の開発が促進されることが期待されます。
2.今回の成果
メラニン産生細胞の安定的な供給が可能
メラニン産生細胞は、紫外線による皮膚の障害や悪性腫瘍の発生を抑えるメラニンを産生しますが、それ自体を大量培養することが難しい細胞であり、従来技術では安定的に得ることが困難でした。今回の技術は、培養したMuse細胞に分化誘導処理を施してメラニン産生細胞とすることで、再現よく大量に製造することが可能となり、これを用いた3次元培養皮膚の安定供給も実現しました。
図2.Muse細胞を用いて作製したヒト培養皮膚とヒト本来の皮膚の比較
3.今後の予定・計画
DSファーマバイオメディカル(株)が化粧品や製薬企業等に対してヒトMuse細胞由来のメラニン産生細胞を組込んだ3次元培養皮膚の販売を2015年1月15日から開始します。
また、東北大学では、今回の3次元培養皮膚に関する成果を白斑症等の治療に用いるべく更なる検討を進めています。一方、Muse細胞の分化多能性を利用した技術開発については、皮膚以外の各種臓器細胞についても進んでおり、DSファーマバイオメディカル(株)ではMuse細胞から分化誘導した肝臓の細胞を用いた薬物代謝等に対する細胞アッセイ系として、実用化を進める予定です。
【用語解説】
※1 多能性幹細胞Muse細胞、iPS細胞、ES細胞等のヒトの体を構成する多くの細胞への分化能を有する細胞※2 「次世代機能代替技術の研究開発」プロジェクト内閣官房健康・医療戦略室が推進する9つの各省連携施策において実施
4.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO バイオテクノロジー・医療技術部 担当:阪本、吉村 TEL:044-520-5231
(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報部 担当:上坂、坂本、佐藤 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp
東北大、慢性腎不全マウスの組織修復に成功-ヒト多能性幹細胞を投与 | 科学技術・大学 ニュース | 日刊工業新聞 電子版
東北大、慢性腎不全マウスの組織修復に成功-ヒト多能性幹細胞を投与
2017/7/13 05:00
東北大学大学院医学系研究科の出澤真理教授らは、慢性腎不全のマウスにヒトの多能性幹細胞「ミューズ細胞」を投与し、腎臓の組織を修復することに成功した。静脈投与で障害を受けた腎臓に生着し、5週間後も効果を示した。慢性腎臓病の根本治療につながる可能性がある。日本大学との共同研究。成果は米科学誌ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ソサエティ・オブ・ネフロロジー電子版に掲載された。
ミューズ細胞は出澤教授らが発見した、骨髄や脂肪などの間葉系組織に存在する多能性幹細胞。腫瘍性がなく、傷害を受けた組織の信号を認知して生着し、組織に適応して分化する特徴がある。
研究チームが免疫機能のない慢性腎臓病のモデルマウス10匹に対し、ヒト由来のミューズ細胞2万個を投与したところ、7週目までに腎臓に生着、分化したことを確認した。
さらに免疫機能が正常な疾患モデルマウスにも同様に投与すると、5週間後までに腎臓に生着し、腎臓の組織に分化し、機能が回復していた。免疫抑制剤を使わずにミューズ細胞は生着しており、異種間移植の可能性を示していた。
腎臓で不要なものを濾過する組織「糸球体」には、毛細血管を構成する「足細胞」が存在する。腎不全などで足細胞が変質すると、修復されない。ところがミューズ細胞を投与すれば、足細胞は修復していた。
年内の治験開始を目指しており、急性心筋梗塞で安全性を主に確認する第一相試験を予定。将来的には、健常なドナーから採取したミューズ細胞を慢性腎臓病患者に点滴投与するなどの治療法が考えられる。
出澤教授は「ミューズ細胞による治療は多くの疾患をターゲットにでき、次世代の修復医療となる可能性がある」と話す。
【文献】Muse細胞を用いることで脳梗塞モデルの治療に世界で初めて成功 : EARLの医学ノート
【文献】Muse細胞を用いることで脳梗塞モデルの治療に世界で初めて成功
■2007年に東北大の出澤真理教授のグループが多能性幹細胞のMuse細胞を発見しました.2014年に小保方らが報告したSTAP細胞も一時はMuse細胞ではないかとする疑惑もありました.Muse細胞自体は発見以降そこまで目立った進展の報道はありませんでしたが,2014年にヒトMuse細胞由来のメラニン産生細胞を組み込んだ3次元培養皮膚の安定化製造に成功し,医薬品や化粧品の開発で効果や副作用の検証を動物実験を介さずに検証が可能となり,2015年1月15日よりこの皮膚モデルが販売開始となっています.
■このMuse細胞は間葉系幹細胞に類似した特徴を持ち,かつ,事前の分化誘導を必要としないこと,静脈内投与するだけで傷害臓器にホーミングで生着し分化すること,腫瘍形成性が非常に低いことが大きな特徴とされています.
■脳梗塞では,これまで骨髄から分離した間葉系幹細胞や単核球を脳梗塞後に移植した臨床試験が行われていますが,安全性を示すに留まり,その有効性は限定的でした.以下に紹介する論文は,ラットの脳梗塞モデルにMuse細胞を移植することにより,梗塞で傷害された神経細胞や運動機能の回復を示した世界初の報告です.結果を見ると,移植後2カ月半頃から急速な回復が見られており,これまでほぼリハビリテーションしか治療手段がかなった脳梗塞後遺症(近年は経頭蓋刺激のrTMSが脳梗塞領域で非常に期待されていますが)に対して非常に有効な治療法となります.臨床応用も時間の問題で,東北大は2018年からの臨床試験を検討しているようです.
※私個人的にはこの細胞の発見はノーベル賞級だと思ってます.しかし,Muse細胞発見時も特に大きな報道はなく,今回の脳梗塞モデルの改善効果の報告に関しても,ニュースではローカルの仙台放送が報道したのみのようです.かといってSTAP細胞発見のときのマスコミ騒ぎのようなことにはなってほしくはありませんが.
線維芽細胞に含まれる特異的な細胞集団Muse細胞の移植は確固とした神経分化を介して実験的脳梗塞を改善させる
Uchida H, Morita T, Niizuma K, et al. Transplantation of Unique Subpopulation of Fibroblasts, Muse Cells, Ameliorates Experimental Stroke Possibly Via Robust Neuronal Differentiation. Stem Cells 2015 Sep 21 [Epub ahead of print]
PMID:26388204
Abstract
【目 的】
線維芽細胞内の既存の多能性様幹細胞として存在しているMuse細胞は,腫瘍性を持たず,三胚葉系細胞への分化能を示し,傷害モデルに移植されることで失われた細胞を補充する.細胞死およびヒト皮膚線維芽細胞由来Muse細胞の機能をラット脳梗塞モデルで評価した.
【方 法】
多能性幹細胞表面マーカーstage-specific embryonic antigen-3(SSEA-3)を用いて採取されたMuse細胞(30000細胞)を,中大脳動脈閉塞後2日目の脳梗塞ラットに対して脳の3か所に打ち込み,細胞の生物学的効果を84日間以上評価した.
【結 果】
梗塞脳のスライスを共培養すると,Muse細胞は自発的かつ速やかに神経/神経系細胞に分化していた.Muse細胞移植脳梗塞ラットは,対照群に比して,梗塞範囲の減少なしに70および84日目の神経学的機能と運動機能の有意な改善を示した.Muse細胞は84日間宿主の脳で生存し,脳皮質内でNeuN(成熟神経:~65%),MAP-2(~32%),カルビンディン(~28%),GST-π(希突起膠細胞:~25%)陽性細胞に分化したが,グリア線維性酸性タンパク質陽性細胞は稀であった.腫瘍形成は見られなかった.感覚運動皮質に生着分化したMuse細胞は,神経線維をを脊髄まで伸ばし,後肢の体性感覚誘発電位を示した.
【結 論】
Muse細胞は,宿主の脳環境下で生着後の神経細胞への高率な分化を示し,脳梗塞症状を緩和する神経回路の再構築が可能である点において,他の幹細胞よりも特異的である.ヒト線維芽細胞由来Muse細胞は,特に脳梗塞における自家細胞療法を検討する際に,遺伝子操作の必要性を回避する,幹細胞移植の新たなソースとなる.
■出澤らは,成人の皮膚,骨髄,脂肪組織の中に,多様な細胞になる能力を持つ多能性幹細胞があることを発見し,Multilineage-differentiatingStress Enduring(Muse)cellと名付けた[1].Muse細胞は,間葉系マーカーのCD105と多能性マーカーのSSEA(stage-specific embryonic antigen)-3を用いて分離でき,間葉系幹細胞分画中に混在する.間葉系幹細胞は,同じ中胚葉系の骨,軟骨,脂肪のみならず,内胚葉系にも分化でき,肝硬変や心筋梗塞でもある程度の組織修復が見られることが分かっており,これらの現象が間葉系幹細胞中に存在するMuse細胞によって説明できる可能性があるとされている.
■Muse細胞は骨髄,皮膚,脂肪から採取でき,胚葉を超えて様々な細胞へと分化する多能性を有するが,iPS細胞に見られたような腫瘍形成性がほぼ見られない.また,回収し,そのまま静脈へ投与するだけで傷害組織にホーミング・生着し,その組織に特異的な細胞へと分化することで組織修復と機能回復をもたらす.すなわち,Muse細胞は生体に移植する前のcell processing centerにおいて事前の分化誘導を必ずしも必要としない,という点でiPS細胞とは大きく異なり,静脈内投与するだけで再生治療が可能である.
■Muse細胞は結合組織中や接着培養などの環境では間葉系幹細胞として振る舞う一方,血液中や浮遊培養などの懸濁状態においては多能性を発現するという二重性を有する.細胞懸濁液においてMuse細胞は増殖を開始し,懸濁状態でES細胞が形成する胚様体に酷似したES細胞を単独の細胞から形成できる点も他の幹細胞と異なる特徴である.
■山中らが発見したiPS細胞は,ヒトの線維芽細胞に山中因子(Oct34,Sox2,Klf4,c-Myc)を導入することにより得られる.出澤らは,ヒト線維芽細胞をMuse細胞と非Muse細胞の分画に分けて山中因子を導入したところ,Muse細胞はiPS細胞に変化したが,非Muse細胞分画からはiPS細胞は得られなかったと報告している[2].
■近年,集中治療領域において,急性炎症性の臓器傷害が生じた際に,傷害臓器細胞からのシグナルにより骨髄から幹細胞様の細胞が出てきて傷害部位に集積し,その部位の細胞へと分化することが近年分かってきており,この分化細胞はMuse細胞なのではないかとする説が出てきている.重症病態の多臓器不全,低酸素脳症,Post-Intensive Care Syndrome(PICS)において,このMuse細胞が治療の一手段となる日がくるかもしれない.
[1] Kuroda Y, Kitada M, Wakao S, et al. Unique multipotent cells in adult human mesenchymal cell populations. Proc Natl Acad Sci U S A 2010; 107: 8639-43
[2] Wakao S, Kitada M, Kuroda Y, et al. Multilineage differentiating stress-enduring (Muse) cells are a primary source of induced pluripotent stem cells in human fibroblasts. Proc Natl Acad Sci U S A 2011; 108: 9875-80
by DrMagicianEARL | 2015-10-12 12:23 | 文献 | Comments(0)
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