一条きらら 近況

【 近況&身辺雑記 】

転居後の歯科医院

2024年07月21日 | 最近のできごと
 何度もホームページを見ていて初めて行く、その歯科医院のドアを開けて入った。
 虫歯の詰め物の治療が目的だが、歯科医院に初めて入る時はいつものようにワクワクする。
 歯科医院に限らない。内科でも他の科でも、診療所でも病院でも、初めて行く医療機関は決まってワクワクするような気分に包まれる。
 もちろん緊張感もあるし、痛い思いをするのは嫌だとか、理想的な医療機関ではなく、とんでもない医院や病院かもという不安もちょっぴりある。 
 けれどワクワク感のほうが強いのは、言ってみれば、好奇心のせいかもしれない。
 ドアを開けた私を見て、受付の席に座っていた中高年女性が、「こんにちは」と感じの良い口調で声をかけてきた。
「こんにちは」と、私も明るく言って受付のカウンターに歩み寄る。
「初診です。予約はしてないんですけど」
「えーと、この後3時から予約が入っていて……」
「あ、じゃ」
 ホームページからネット予約は可能だったが、初めて行く歯科医院も美容院も〈予約〉が嫌いなため、すませていない。もし予約でいっぱいなら、もう1軒その近くの歯科医院に行こうと決めていた。
 けれど歯科助手の女性が、「ちょっと先生に聞いて来ます」と言って、治療中の歯科器具の音がしている診察室へ行き、間もなく戻って来た。
「大丈夫です。これに記入して下さい」
 と、紙と台紙とボールペンをカウンターの上に置いた。
 名前や住所などの個人情報を記入し、受診の目的にチェックを入れて、受付へ。
 他に患者の姿はないが、予約制だからかもしれない。予約なしの患者がいないのは、大雨の日だからかもしれない。または歯科医院の数が多い地域だからかもしれない。
 などと考えながら、5分ぐらいだろうか、思ったより早く診察室へ呼ばれた。
 すると、すぐに治療台へ上がるのではなく、歯科助手女性から部屋の隅に案内され、小さなテーブルと椅子が2つあるコーナーで少し待つようにと言われたので、椅子に腰を下ろした。
 前の患者の治療が終わって、カルテとか請求書とか、私の保険証と診察申込書に医師が眼を通す時間と想像されたが、待合室より少し長めで10分くらい待った。
 そのコーナーの壁に、歯科医師の所属の歯科医師会とか団体とか専門医や認定医の証明書とか肩書きなどが書かれたポスターが貼ってある。
 私の経験ではそのようなポスターが待合室に貼ってある歯科医院は、3軒に1軒ぐらいだろうか。それを見ると、何か誇らしげな印象をちょっぴり受けてしまうが、以前、歯科医院の選び方という記事を読んだ時、そういう医院は避けたほうがいいということだった。私は特に避けた経験はないが、その日の私は、ある本を読んでいたせいで、そうしたい歯科医師の心理が想像された。
 転居後の本の整理は、本棚に本を並べていく作業だけではなく、あと1度だけ読んで捨てるということだった。不要な本の整理は転居前にダンボール6コを2回、合計12箱を中古本店に送って売った。現在は本棚に入りきれない本の断捨離である。海外のドキュメンタリーや刑事コロンボ・シリーズなど、あと1回読んでは捨てることを繰り返している。その中の1冊が『わたしは悪い歯医者』で、著者は現役の歯科医師。その本が、あと1度読んだら捨てる本に積み重ねてあって、
(ちょうどいいわ、歯科医院に行くから、これ読もうっと)
 と、眼にしたタイトルを見て手に取ったのである。
 買って読んだのが15年か20年ぐらい前だったが、面白く読んだという記憶があった。もう1度読んだら捨てるから1冊減ると思ったりもした。
 2度目に読んでみたら――。
(そういうことだったのね)
 今まで謎だったことが、溶けたり、納得したり、理解できたりして、面白くもあり、一気に読んだ。
 謎というのはいくつかあって、たとえば、〈医師等資格確認検索〉という厚労省のサイトで検索したことが何度かあるが、最初のページに、
 ――医師、歯科医師の資格を確認することができます。――
 と書かれていて、
   職種  医師 歯科医師
   性別  男性 女性
   氏名
 と表示された欄に、選択してチェックを入れたり、医師名を入力したりして検索ボタンをクリックすると、次ページに、
 ――〈検索結果  1件(備考に*がある場合は詳細表示があります)〉――
 ――番号 職種 氏名 性別 登録年 備考―― 
 それらが表示されるのである。私がこのサイトを利用するのは、医師資格が間違いなくあるかどうかではなく、医師になって何年ぐらいのベテランかを知りたいためである。
 そのページを見るたび、
(職種が、医師と歯科医師に分かれてるって、どういうこと?)
(歯科医師も医師なのに、わざわざ分けてあるなら、内科とか眼科とか耳鼻科とか外科とか分けてないのは、どうして?)
(医師と歯科医師は違うのかしら、どう違うわけ?)
 と、謎だった。歯科医師の数が多く、同姓同名も少なくないということだろうかなどと思ったり、
(歯科医師と、内科医師や整形外科医師って、雰囲気がどこか違う感じ)
 などと思ったり、
(歯科医師は内科医師などに対してコンプレックスがあるような気がする)
 などと思ったり、
(歯科医師ではない医師は歯科医師を見下(くだ)してるみたいに想像される)
(口コミを読んだり人の話を聞いたりすると、たいていの人は歯科医師を軽く見ているみたいな感じを受ける)
(内科の医師のほうが患者から尊敬されてるみたいな感じもするし……)
 それらの謎や疑問が、その本を読んだら、溶けたり納得できたりしたのである。
(そういうことだったのね!)
 内科などの医師と歯科医師はスタートの時点での相違があったのだ。親が歯科医師で後継者になるという人を除き、最初は大半の歯科医師は歯科医師ではない医師を志望していたらしい。けれど学力、学業成績によって、歯科医師になる選択をしたということらしい。
 私はずっと、歯科医師になるような学生は、歯科というジャンルに興味を持ち、歯のトラブルをかかえる患者を救いたいという目標があったと想像していた、その医師の目標を持つスタート時点ということである。
(そう言えば……)
 と、思い当たることがあったり、
(そういうことだったのね)
 という言葉を、その本を読みながら、何度繰り返したかわからない。
 私が〈医師等資格確認検索〉という厚労省のサイトを知ったのは、その本を読んでしばらく経っていたので、気がつかなかったのだ。
(内科とか整形外科の医師と、歯科医師は、やっぱり雰囲気が少し違うのは、そのせいだったのかも……)
 読み終えた後、いろいろ興味深く面白い本だったので、捨てるのがちょっと惜しくなった。 〔続く〕






雨の日の外出

2024年06月23日 | 最近のできごと
 先日、最寄り駅近くの歯科医院へ出かけた。
 前歯の虫歯の詰め物の修復である。〈C1虫歯〉に詰めてあったレジンが、はがれてしまったのだ。その虫歯の箇所が痛くもないし、しみることもない。
 すぐに歯科医院へ行けない事情があり、けれど放置していたらしみるかもと不安になり、フッ素が多く入っている〈チェックアップ〉という歯磨きを通販で買って、夜の歯磨きの時に軽く磨いていたら、その後も全くしみなかった。
 すぐに歯科医院へ行けないのは、どこの医院に行こうかと、来る日も来る日もネット記事で情報集めしていたからである。
 コンビニより多い歯科医院と言われるように、最寄り駅へ向かって歩いて行くと、10数メートル間隔でと言えそうなくらい、あちらにも〈歯科〉こちらにも〈歯科〉の看板だらけ。
 外出時には、その看板や外観を見たり、在宅日はネットの口コミやホームページを見ては、
(どうしよう、ここにしようかナ、他の医院にしようかナ)
 と、先月の月末近くから迷いに迷っていたのである。
 転居したら、あちこち歯科クリーニングに行って、医師と歯科衛生士と受付の人たちに接し、良さそうな医院を見つけようと思っていたのである。
 そのうちそのうちと〈明日できることを今日やるな〉で延期していたわけではない。不幸中の幸いは、前歯といっても上唇を少しめくらなくては見えない箇所の小さな虫歯だから、他人の眼には見えないことだった。他人には見えなくても、毎朝、洗顔の時に鏡を見ながら、
(まさか虫歯が広がってないわよね)
 と、ドキドキするほど心配で、上唇をチョンとめくってみると、茶色に着色した部分は同じか、毎夜、フッ素高濃度配合(1450ppmF)の歯磨きで少量洗口をきちんと守っていたせいか、虫歯の茶色部分が薄くなってきたような気がした。
(さ~すがライオンね、歯科グッズは、ぜ~んぶライオンだもンね、絶大の信頼のメーカーだもンね!)
 なんて呟いたものの、
(そんなわけないわよね、レジンがはがれちゃったのだから)
 見慣れてきたせいかもと思い直した。
 あの歯科医院にしようと決めてからも、なかなか行けないのである。今日は新宿へ出かけるし、今日は美容院へ行くし、今日はスーパーへ買い物だし、今日は電話がかかってくるし、今日は笹塚へ行く用事があるし、今日は昨日出かけて疲れちゃったし、今日は家の中でやることがたくさんあるし、今日は歯科医院へ行く気分じゃないしと、来る日も来る日も自分にいろいろ言い訳しながら、パソコンに向かうとブックマークしてある歯科医院が今日は休診じゃないかしらとか、行こうかどうしようかウダウダウダウダと迷い続けたが、一番の理由は、
 ――今日は歯科医院へ行く気分じゃないわ――
 ということだった。
 それが、大雨の降る日、何故か行く気分になったのである。よりによって雨が降っている日にと、自分で自分の心理が不思議。
(今日、行こうっと、あそこの歯科医院、行こうっと!)
 もうその日はワクワクするくらいテンションが上がっていた。何事も気分で行動することの多い私だが、ついに歯科医院へ行く気になったその日まで、半月余り経ってしまったと気づく。
(どんな歯科医師かしら? どんな歯科衛生士や受付の人たちかしら、やさしい人がいいナ、優秀でやさしくて感じの良い人ばかりがいいナ)
(雨だから患者はきっと少なくて待たされないわ)
 まだ小降りにもならない昼下がり、傘をさして歩きながら小さなショルダーバッグに健康保険証を入れたのを確かめ、浮き浮きワクワク自宅を後にした。
 最寄り駅へ向かう道を歩きながら何軒もの歯科の看板はもう見ないで、ついに、決めてあった歯科医院に着いた。 〔続く〕


最近の心境

2024年06月02日 | 最近のできごと
そろそろ梅雨入り。雨の日は嫌い。まず気分的に、ああ雨と落ち込む。雨の降る音を、風情があるなどと感じたことはない。若いころからずっとだが、雨の日はやたらと眠くてダルいのである。意欲も低下。何もしないでソファかベッドで横になってスマホかKindleかテレビか長電話。
 運動不足を自覚しながらも、毎日のルーティーンのストレッチやテレビ体操だけは欠かさない。外出もしたくない。まるで自律神経失調症みたいに、ダルくて眠くて、何かの意欲が湧かない。それでも食べたり飲んだりだけは変わらない。家事は運動になると、テレビで専門家が言っていたが、いつもより身体を動かすのも億劫でダルいのに、コーヒー飲みたい、紅茶飲みたい、ごはん食べたい、お腹が空いたと私の脳が身体に命じて、ソファやベッドから勢い良く起き上がる。
(じっとしてたってエネルギー消費してるからだわ!)
 自動的に消耗している基礎代謝のせいだと気づく。


以前居住のマンションも出入りするたび、エントランスの傍の満開のツツジが眼を楽しませてくれたが、現在居住のマンションはそれより少し広い面積の生け垣と、裏庭というか中庭というか、そこにもツツジが満開に咲いていた。
 ツツジが終わりかけると、その傍の高木に白い小花がたくさん咲いたが、何という名の樹木か知らない。
 今月は紫陽花の季節。
 紫陽花は雨を思わせる花ということらしい。
 梅雨の時期は嫌いだが、ブルーの紫陽花が好き。
 ベランダでミニ・トマトを栽培しているという話を姉から聞き、私も試してみたいなと思っている。ただし、トマトは普通サイズが好きで毎日食べているが、窓を開けた時の観賞用に楽しめるかもしれない。


フルーツコーナーで真っ先に眼を惹かれたイチゴの季節も終わった。スーパーへ行くたびに買っていたイチゴ。私は大粒のあまおうが大好きで、買う店は2軒のどちらかに決めていた。食材の買い出しが週に1度、新宿など電車で出かけた帰りに週1、2度だから、毎日のように食卓を見て浮き浮き。
 1パック買うと3日は美味しい、という時期は短く、2日で食べきらないと少しずつ傷んでしまう日々に。
 やがて、店頭でパック越しに見ても、
(う~ん、鮮度がちょっと……)
 と、手に取るパックを選ぶ時間が、かかるようになった。何度も、あれこれ手に取るのはマナー違反に思うものの、パックを裏返してみると、やはり鮮度と傷みの箇所が見える。
 そこで、あまおうを諦めて、とちおとめを見ると、パック越しに見ても、
(あ~ら、鮮度がいいわ!)
 と、パックを裏返しても問題なく、買って来るようになった。あまおうとは甘味が微妙なところだが、予想以上に美味しい。
 あまおうよりとちおとめのほうが鮮度が高い理由が、テレビの番組を見てわかったような気がした。
 物流の2024年問題がテーマの情報番組だったが、もうすでに始まっているらしく、福岡産のあまおうと栃木産のとちおとめでは運送の所要時間の違いがあったのだ。1日違えば鮮度も違うのは無理もないこと。
 週に1度行く、〈開かずの踏切〉を越えた、駅の反対側のスーパーでも、電車での外出の帰りの成城石井でも、新宿のデパ地下でも、あまおうよりとちおとめのほうが鮮度が高くなってきて、やがて、とちおとめの鮮度も落ち気味の時期になり、ついに店頭からイチゴが消えた。
 ――と、思っていたら、あるスーパーに、イチゴのパックが棚の上にあり、
(あああっ、イチゴ!!)
 思いがけなくてササッと近寄って見る。
(やよいひめ。イチゴっぽいネーミング。食べたことないわ)
 群馬産。手に取る前にパッケージ越しに見て選ぶ。選んだパックを裏返してみると、表側より小粒が多い。
 イチゴの種類は多数あり、全部食べてないから一概には言えないけれど、小粒は甘味が薄い。
 鮮度も良く、傷みもなさそうなので、1パック買った。
 イチゴの味はする、それなりの美味しさ。
 最寄り駅とは逆方向にあるスーパーで、月に2回ぐらい行く。通りに面して、広いキャベツ畑や、昭和の雰囲気の商店やクリニックや飲食店などがポツリポツリとあったり、森のように鬱蒼と樹木が繁った家か施設かわからないし建物があるのかどうかも不明の場所など、眺めながら歩いて行くと新鮮な気分に包まれる。もう少し距離があれば散歩コースになるかもしれない。
 初めてその通りを歩いていて交差点に来た時、マップで見ていたもう1軒のスーパーへ行くつもりだったが、右か左かわからず、通りかかった高齢女性に聞いた。ポシェットをかけていただけの女性で、この辺りに住んでいそうな人という直感は当たった。すぐ教えてくれて、途中まで私も行くと言うので少しお喋りしたが、毎日、夕方、この辺りをウォーキングしていると微笑んでいた。おっとりしている雰囲気で、平穏で幸せに暮らしているように想像された。
 今年の冬みかんが終わった時期に、清見オレンジを産地直送で買って美味しく食べた。1箱25コ詰めで、毎日夕食後に1コ食べていたが、最後まで鮮度は落ちず美味しかった。
 産地直送は〈JAタウン〉で買うが、以前、キウイフルーツ、りんご、みかんも箱詰めで買ったことがある。
 りんごやみかんは1か月美味しく食べられたが、キウイフルーツ30コ詰めは、
(国産のキウイフルーツって、こんなに美味しい!)
 と、食べるたびに呟いたのは20数日ぐらい。届いた時は、追熟が必要という説明書が同梱されていたが、早く食べたくて追熟前から固いキウイフルーツを数日間、食べていた。なくなるころは熟し過ぎで美味しさ不足となった。
〈JAタウン〉でイチゴは冷凍かゼリーなどで販売されているが、それらはあまり食欲をそそられない。最近、買って来るのは、甘夏、キウイフルーツ、小玉スイカ。それと朝食べるバナナ、時々、グレープフルーツや桃など。最近、フルーツもスイーツもよく食べるのに、太らないのである。果糖の摂り過ぎで太った時期もあるが、駅までの往復早歩きや体操&ストレッチや家事の運動の時間が、以前より長くなったためだと思う。
 

転居の数か月後、区役所から特定健診の案内書類が送付されて来た。
 受診の有効期限が3月で、受けないうちに過ぎてしまい、書類は捨てた。
 すると、最近、また特定健診の案内書類が送付されて来た。受診の有効期限は来年3月になっている。
 その有効期限内に体調が悪くなったら受けようと思い、捨てないで保管してある。
 前居住区の時は、5月にクーポン券付きの書類が送付され、有効期限は8月の末だった。
 居住区によって、そんなに違うものなのかと不思議。
 親しい人に話すと、
「体調が悪くなったら健康診断どころじゃないでしょ、病院へ行くでしょ普通、かかりつけ医に診察してもらうでしょう」
 と、呆れられ、それもそうだわと思った。
 その日は就寝時まで〈かかりつけ医〉という言葉が脳にイン・プットされてしまった。
(転居前の〇〇区には、ちゃんといたのに)
(いつ体調が悪くなっても診てもらえるって安心してたのに)
(地球の反対側みたいに遠く感じられる所で開業したから、行けなくなっちゃったし……)
(そうだわ、かかりつけ医を探さなくちゃ)
 いざという時、ちゃんとカルテがあって、診察してくれるかかりつけの医師を探そうと決心した。





東映オンデマンド

2024年05月12日 | 最近のできごと
 高橋英樹主演の1976年から1981年の時代劇ドラマ『桃太郎侍』を、東映オンデマンドで観ることができることを知って、3月下旬に登録した。東映オンデマンドはAmazonプライムビデオの中の1つのチャンネルと知ったのは、登録後だった。
 その登録ページに、Amazonプライムビデオは1か月の無料体験、その日以降は月額600円、東映オンデマンドは14日間の無料体験、その日以降は自動的に有料期間となり、月額499円という説明を読んでいて、登録後はそれと同じ説明のメールがAmazonプライムと東映オンデマンドからそれぞれ送信された。
 そのため、Amazonプライムビデオと東映オンデマンドは別々の登録になるのかと思い込んでいたら、そうではないと知ったのが、いつものようにテレビの前でワクワクしながらリモコンを操作した数日前のことだった。
 東映オンデマンドを見るためにはAmazonプライムに登録していないと見られないことと、Amazonプライムと東映オンデマンドの登録料が月額600円と499円というメッセージがテレビ画面に出て、このまま利用を続けるかどうかの選択メッセージが表示されたのだった。
 さらにそこには、登録していればAmazonプライムビデオも見られるし、東映オンデマンドの他のどの動画も好きなだけ見られるというような誘いのメッセージが表示されていた。
(そんなことは百も承知、というより、〈言わずもがな〉なのに)
 思わず呟いた。よけいなメッセージである。
 Amazonプライムビデオは1か月の無料体験中に、観たい洋画はすべて観てしまっているし、他に新しいので観たい映画がないので、1本も観ていない。それで、登録解除をしてしまったのだ。すると登録解除のメールが送信されて、Amazonプライム会員の登録解除によって、さまざまなサービスが得られなくなると具体的なサービスをいくつも挙げてのメールが送信されたが、東映オンデマンドも観られなくなるとはどこにも書いてなかった。
 かつてAmazonプライム会員登録を1年ぐらいごとに数回したことがあるが、洋画を観るのが目的で、音楽とか雑誌購読とかショッピングの当日配送など他のサービスはどうでも良かった。ショッピングの送料無料は良かったけれど。
 Amazonプライムビデオの登録を解除しても、東映オンデマンドの月額499円支払えば、ずっと利用できると私は思い込んでいたのだった。
 その時点で、高橋英樹主演の『桃太郎侍』全258話の中の135話を東映オンデマンドで観ていたが、その10話ぐらい前の回からBS日テレの再放送で観ていたから、ストーリーの新鮮さは少し失われていた。もっとも『桃太郎侍』のストーリーは毎回、ワン・パターンではあるけれど。
 1話が46分と短いドラマである。1話だけではもの足りなくて、2話か3話、続けて観たり、連日のように観ていて1日の午前と午後で5話も観たこともあるが、平均1日3話ぐらい。午後から外出の日は1話だったり。
 全258話を観終えたら、東映オンデマンドを登録解除するつもりだった。時代劇はあまり好きではないし、他の古い東映作品にも俳優にも全く興味はない。
 けれど時代劇俳優の市川雷蔵と高橋英樹の2人だけには惹かれた。ルックス、表情、雰囲気、声、セリフの言い回しなど抜群の演技力に魅力を感じた。市川雷蔵は、『眠狂四郎』の翳りを漂わせた剣豪役も素敵だが、溝口健二監督の『新・平家物語』は、何度観ても陶酔させられる素晴らしい作品で最高に好き。高橋英樹は『桃太郎侍』も魅力的だが、12時間ワイドドラマの『織田信長』は、もっと独特の演技力と独自の解釈や表現が素晴らしくて初めて深く魅了された。あのドラマをどこかのオンデマンドで観られないだろうか。――と、ちょっぴり未練がましい私。時代劇は好きではない私を、一時期とは言え夢中にさせたということもあり、2人とも不世出の名優に感じられる。
 結局、東映オンデマンドを見続けるためにはAmazonプライム会員登録をというメッセージが出た時、少し迷ったが、半分以上の回は再放送ですでに見ていたため、登録を選択しなかったので、東映オンデマンド登録解除となって、現在は観ていない。
 すると、生活に小さな変化が起きた。1日に1時間半か2時間余りテレビの前に座って『桃太郎侍』を観ることがなくなったら、その日にやるべきことが結構捗(はかど)るのである。家事の他に、たとえば本の整理やクロゼットの整理、衣類の見直しやウエス作りなど、手間も時間もかかる作業が遅々として進まなかったのだが、
(ああ、今日はいろいろやったわ!)
 と、満足感に包まれて1日を終える。
 今に始まったことではないが、今日できることを明日に延ばすな、ではなく、〈明日できることを今日やるな〉の性分の私。夜、就寝時には、その日にやるべきことだったあれこれを思い浮かべ、
(ああ、今日も、あれもこれもできなかった、明日はできるわ、何とかなるわ)
 と、同じようなことを呟く日が多い。
 また、高橋英樹主演の現代ドラマは好きではなく、他の時代劇ドラマも録画して見てみたが、あまり楽しめなかった。
 ひたすら、『桃太郎侍』にハマり込んでいたというか夢中になっていた日々が、終わったような気がする。周囲の人たちと会って食事の時など、勢い込んで高橋英樹の魅力について喋り始める私に、「ま~た、高橋英樹」と呆れられたが、もうそんなこともなくなる。
(テレビの前に座っている時間が長いと、運動不足になりそう)
 そう気づいたりもする。運動不足にだけはなりたくない。週に2日か3日か4日の外出日以外の、一日中〈おうち時間〉の日も、テレビの前で過ごすより、できるだけ身体を動かしたい。とは言え――。
 先日DVDの整理をした後、ケヴィン・コスナー主演のサスペンス映画『追いつめられて』のDVDを観たら、もうもう陶酔の極みのひとときを過ごし、続けて『アンタッチャブル』を観て楽しんだ。映画の内容の面白さはもちろん、海軍将校役のケヴィン・コスナー、財務省捜査官役のケヴィン・コスナーが最高に素敵で素敵で何度観ても深く魅了されてしまうのである。
(運動不足にならない程度に、やっぱり好きな映画を観るのはやめられないわ!)
 そう呟いた。

 


マンション管理組合

2024年04月14日 | 最近のできごと
 転居したばかりのころ、郵便物がドッサリ送られてきた。インターネットを利用するようになって以降、メールの通知がほとんどだから、郵便物は少なくてラクだった。20数年も慣れていたので、小説とメールとネット記事の文章以外は読みたくない私にとって、〈ドッサリ郵便物〉は小さなストレスだった。
 ガス・水道・電気などのライフラインは居住区が変わるとネット上での更新をしなければならず、行政機関や税金も新たに書類で届ける必要があったり、宅配ボックスは新規登録のため、メールと書面の手続きとカード受け取りと代金振込用紙が送られたり、何故かダイレクトメールもよく送られて来た。DMはすべて、開封しないで〈受取拒否〉のメモをセロテープで貼り付け、ポストに投函すれば郵送されなくなる。20年近く、そうしていたので、DMはほとんど来なくなり安心していたのだが、新居の住所を何から知って郵送されるのか不思議だった。リフォーム会社や不動産関連のDMが多く、片っ端から未開封のまま〈受取拒否〉のメモを貼り付けてポストに投函していたし、管理会社・ライフライン関連・税金関連、あちこちへの住所変更届の書面などの郵便物は、数か月でなくなって落ち着いた。住所変更届は住民票添付で返送だから、その都度、区役所の出張所へ取りに行く煩わしさがあった。オンラインでも可能だが、個人情報なので書面の提出を選択した。
 現在でもよく郵送される郵便物に、管理組合からの通知がある。
 マンションの維持と管理を行う組織が、居住者で構成される管理組合で、法律による義務付けがあり、その管理状況はマンションの資産価値に影響する。住み替えの活動は1年2か月かかったが、不動産営業担当者との相談の際の〈希望条件〉で、居住区域やセキュリティや広さや向きなどなど、15項目の中の1つに管理のことも含めていた。管理会社と管理組合の活動状況のことで、内見前に、管理規約と管理組合の活動状況の書類を営業担当者が管理会社から法的定めにより取り寄せて、添付メールしてくれる。それに眼を通すのが大変だった。現在のマンションはその書類の量が、予想以上にというより極端に多く、その理由が住んでから納得した。
 取り出した郵便物を歩きながら1つ1つ、ざっと確認して行くと、
(ま~た、来た)
 と呟き、感心したくなったのが、管理組合理事会報告書。管理会社からは転居後しばらくだけで最近はほとんどないが、管理組合理事会報告書が、何と毎月郵送されるのである。
(理事会を毎月、やっているなんて!)
 3か月か4か月ごとぐらいが一般的だと思うが、毎月とは驚きだった。
 その報告書の枚数が結構多く、毎回、何とA4記録紙10ページぐらいある。
 さらに驚愕したのは、管理組合理事会報告書は、管理会社のフロントマンが作成するのが一般的なのに、理事長が作成しているのである。
(そう言えば内見前に取り寄せた管理規約と管理組合の活動状況の書類が、どっさりとあったわ)
 といっても管理規約は分譲時の管理会社による作成。管理組合の活動状況は大規模修繕その他の記録もあるが、管理組合理事会報告書は含まれていない。
 小説とメールとネット記事の文章以外は読みたくない私だが、もちろん大事な書類だから、毎月郵送される管理組合理事会報告書は眼を通す。
 ――第〇期第〇回理事会報告書 地区の会館会議室 役員名 理事長 副理事長 理事 監事 大規模修繕委員3名 管理会社2名 メーカー担当者1名 オブザーバー3名――
(オブザーバーまでいるなんて)
 と驚かされたが、大規模修繕関連の専門家もいるらしい。出席者が20数名とは、戸数が小規模と中規模の中間のマンションにしては多い人数に感じられた。
 最後に3か月先までの毎月の理事会予定日まで記載されている。
 けれど――。
 最近の報告書に、理事会の役員希望の人は名前を記入して理事長に届けて下さいとあり、
(輪番制じゃないんだわ、良かった~)
(何て理想的! 理事会役員は希望者がなるなんて!)
(そうよ! 輪番制で仕方なく理事になるのではなく、意欲のある人希望する人がなるのが一番いいわ!)
 たいていは理事長は立候補、役員は輪番制である。以前のマンションでは約10年に1回輪番が廻ってきた。1回目の時は監事で、管理費・修繕費の年間入出金明細の書類を20㎝ぐらいの厚さで理事長から渡され、
「えええええっ、これ全部ううう~!?」
 思わず驚愕の声を上げてしまった。数字の羅列に弱いというか見るのが嫌いで不得意な私。イチジュウヒャクセンマンと呟かなくては桁数の金額の把握もできない。当然、渡されてすぐになどできるはずもなく、キッチンのカウンターの上に乗せたままにしておいたら、遊びに来た友人が、何これと呟くので、「監事だからこれ見て確認するんだって、数字の羅列って嫌いなのに、嫌だわ、どうしようどうしよう」と半泣き口調で言ったら、「見てあげる」と言い、帰り際に書類を持って行ってくれたので助かった。
 2回目は監事ではなく理事。10数名が集まってさまざまな議案の相談をするが、大半のマンションのように、会の進行は管理会社のフロントマン、理事会報告書もフロントマン作成だった。
 その以前のマンションは管理組合はなく、すべて管理会社に委託だった。
 マンションによって管理会社も管理組合もそれぞれである。
(あの理事長さんが頑張ってくれているのね)
 初印象はとても良かった。初めて会ったのは引っ越し当日。タクシーで新居のマンションに到着した時、何とエントランスに立っていた男性が歩み寄って来て、「理事長の〇〇です」と声をかけて来たので、私も名乗って丁寧な挨拶。内心、
(理事長さんのお出迎え!)
 と感激してしまった。時刻は夜の7時台。夕食後くつろぐ時刻に、わざわざ私のためにと思いがけなかったのだった。
 エントランスは比較的広い。外に到着したばかりの引っ越し業者が他のスタッフと電話連絡を取ったり何かしている間、理事長さんと少し世間話をした。
(感じのいい人)
 穏やかで、にこやかで、人柄が良さそうという印象。
 ところが、引っ越し業者のリーダーの人がエントランス内に入って来た時、理事長さんが、
「台車は使わないで下さい。床が傷(いた)むから。弁償して貰うことになるから」
 と、やや厳しい口調で言った時は驚かされた。 
(私の出迎えじゃなかった! 引っ越し業者に注意する目的があったのだわ)
 そう気づいた。断捨離し尽くしても、ダンボールは200コ以上。特に本と衣類が多かった。搬出は4人、搬入は6人のスタッフ。引っ越し業者のスタッフさんたちは全員、体格が良く、親切でやさしくて感じのいい人ばかりだったが、台車の使用を禁じられ、ダンボールを腕や肩の上に抱えての搬入作業は大変だったと思う。
(温厚そうだけれど厳しそうな人)
 と、理事長さんの口調にそう感じたが、その後、道路で出会って少し話した時も、感じの良い人という印象は変わらず、
(管理組合は理事長さんが頑張ってくれているのね)
 と、つくづく安堵している。