水分をよくとる習慣のある人は、あまりとらない人に比べて、高血糖症になりにくいことが示された。フランス人のコホート研究(D.E.S.I.R.試験)の成果で、D.E.S.I.R.研究グループを代表してUniversite Paris‐DiderotのR. Roussel氏が、9月12日にポルトガルの首都リスボンで開幕した欧州糖尿病学会(EASD2011)で発表した。
最近の報告によると、身体の水分量の制御にかかわる抗利尿ホルモンであるバソプレシンと糖尿病リスクとの間に独立した関係があることが示されている。ただ、バソプレシン分泌に関して水分の摂取が影響することが知られているにもかかわらず、日常の水分摂取と高血糖発症とに関係があるかどうかは解明されていない。そこでRoussel氏らは、フランス人のコホート研究であるD.E.S.I.R.(Data from an Epidemiological Study on the Insulin Resistance Syndrome)試験の参加者を対象に、水分の摂取と高血糖リスクとの関係を調べた。
対象は、フランスの男女で、年齢は30歳から65歳。登録時に正常空腹時血糖だった3615人を、9年間フォローアップした。この間、参加者には3年ごとに健康診断を受けてもらった。また健診では、毎日の水分、ワイン、ビールおよび甘味飲料の平均摂取量についても問診票などにより把握した。
主要アウトカムは、水分の摂取量別(1日当たり0.5L未満、0.5~1.0L、1.0L超の3群)にみた高血糖症(空腹時血糖の異常あるいは糖尿病)の発症とし、オッズ比と95%信頼区間で評価した。
その結果、フォローアップ期間中、565件の高血糖症が確認された。交絡因子(性別、登録時の年齢、体格指数、空腹時血糖、運動量、喫煙の有無、中性脂肪、HOMA-IR、総コレステロール、γ-GTPおよび糖尿病の家族歴)で補正後、毎日の水分の摂取量に関する高血糖症のオッズ比を求めたところ、0.5L以下の水分摂取量群を1.0とした場合、0.5~1.0L群で0.64(95%信頼区間:0.49-0.83、p=0.003)、1.0L以上群で0.73(同:0.55-0.97、p=0.003)だった。さらに1日当たりのビール、甘味飲料およびワインの自己申告消費量で補正した後のオッズ比を求めたところ、0.5L以下の水分摂取量群を1.0とした場合、0.5~1.0L群で0.68(95%信頼区間:0.52-0.89、p=0.016)、1.0L以上群で0.79(同:0.59-1.05、p=0.016)となり、同様の結果が得られた。
これらの結果から演者らは、「水分摂取量が多い人では、高血糖症の発症リスクは低いことが示唆された」と結論した。その上で、この関係はバソプレシン値が介在するものなのか、また水分の摂取を増加させるような指導をすると高血糖が防げるのかなどについては、今後さらなる研究が必要であると指摘した。
(日経メディカル別冊編集)