世界遺産とは、1972年にユネスコ総会で採択された世界遺産条約に基づき「世界遺産リスト」に記載された、「顕著な普遍的価値」をもつ建造物や遺跡、景観、自然のことです。 「顕著な普遍的価値」は、どの国や地域の人でも、いつの時代のどの世代の人でも、どのような信仰や価値観をもつ人でも、同じように素晴らしいと感じる価値のことで、そうした価値をもつ世界遺産は、人類共通の財産といえます。
世界遺産は、人類が作り上げた「文化遺産」と、地球の歴史や動植物の進化を伝える「自然遺産」、その両方の価値をもつ「複合遺産」に分類されます。文化遺産が最も多く、世界遺産の総数は1,000件を超えますが、まずは「文化遺産」に絞り掲載して行きたいと思います。
イギリス
「プレナヴォン産業用地」文化遺産2000年
「ブレバヴォン鉄鉱石をも産出し 産業革命牽引するも」
ブレバヴォンはイギリス・ウェールズの南東部にある町です。交通の便が大変悪い場所ですが、18世紀から19世紀にはイギリスの産業革命をけん引した都市でした。それはこの地で産業の発展には欠かせない石炭と鉄鉱石が採れたからです。18世紀後半に建設されたブレナヴォン製鉄所は、溶鉱炉跡がほぼ完全な形で残されています。 当時の最新鋭の技術で造られた溶鉱炉です。ビッグ・ピットと呼ばれる炭鉱は1980年に閉山しましたが、三年後一部が国立石炭博物館となります。体験型の博物館でかつて使われていた坑道を、観光客は鉱夫のようにヘッドライトをつけて見学することができます。世界遺産に登録されたのは2000年のこと。製鉄所や炭鉱、労働者の住居跡などがイギリスのどの炭坑町よりもほとんど完璧に残っていることが評価されました。
「ニュー・ラナーク」文化遺産2001年
「ユートピア社会主義を体現する 生活協同組合の発展こそ」
イギリス北部の村ニュー・ラナークは、スコットランド・サウス・ラナークシャーの都市ラナークから約 2.2 km のところに位置するクライド川沿いにあり、18世紀末の産業革命時に造られた紡績工場と労働者住宅群から成る産業集落です。1786年にデヴィッド・デイルが綿紡績工場や工場労働者用の住宅を建設したことを起源とします。デイルの娘婿であった博愛主義者で社会改良主義者のロバート・オウエンも名を連ねていた共同所有のもとで、ニュー・ラナークは事業的にも成功を収め、いわゆるユートピア社会主義を体現する存在となりました。人道主義者だった彼は、工場の利益を労働者のためにつぎ込みました。村にある店舗はオーウェンが開いたもので、ここでは品物を一括購入で安く仕入れ、原価に近い値段で住人に売っていたといいます。このシステムは後に生活協同組合へと発展しました。ニュー・ラナークの工場は1968年まで操業していたが、衰退期を経て、1975年に村の取り壊しを防ぐためにニュー・ラナーク保全トラストが創設されました。
「ソルティア」文化遺産2001年
「ソルテアは理想の街の原型に 清潔と安全を重視も」
イギリスの世界遺産、ソルテアは、ウェストヨークシャ州にある町のことで、実業者タイタス・ソルトによって1853年につくられた、ヴィクトリア朝時代のモデル・ヴィレッジです。町の名はソルトと、エア川を組み合わせたもの。モデル・ヴィレッジとは、工場とその労働者のための施設や住宅から成ります。ではなぜソルトはこの何もない土地に町を建設したのでしょうか。それは彼の工場があったブラッドフォードにありました。時は19世紀半ばの産業革命、ブラッドフォードには伝染病の蔓延と大気汚染の問題があったのです。この問題は工場の生産性にも影響したため、ソルトは工場の移転を決意します。移転にあたり交通の便を重視するのはもちろんですが、これまでの経験も踏まえ労働環境の改善も行われたのです。碁盤の目に区切られた町には、850軒の労働者の住宅に加え病院や公園などが建設されました。町は清潔と安全性が何よりも重視されたのです。それはすべて工場の生産性を上げるためのものでしたが、結果的には理想の町になったのです。ソルテアの町は現在でも当時の姿を保っています。
「ダーウエント峡谷の工場群」文化遺産2001年
「ダーウエント近代工業幕開けで 均一品質大量生産」
イギリス中部のダーウェント川流域に、17世紀から18世紀の産業革命初期に建てられた紡績工場が点在しています。大量生産を市場で初めて行った工場たちで、近代工業産業の幕開けとなった場所です。ここはダーウェント峡谷の工場群という名称で世界遺産に登録されています。1771年設立のクロムフォード・ミルは『世界初の近代工場』といわれ、ここで使われたのが水力紡績機で、この機械によって初めて均一の品質の製品を大量生産することができました。川沿いに工場が建てられたのは、水車による動力で機械を動かしたからです。また工場の周りには、当時の労働者の集合住宅郡もそのまま残っています。これが初の社員住宅であり、団地の始まりとなっています。ほかにも、ベルパー、ミルフォード 、ダーリー・アベイ 、ジョン・ランブの工場群が対象となっています。リチャード・アークライトのマッソン・ミルにある労働繊維博物館には約68万もの糸巻きが展示されており見物です。
参照
https://www.unesco.or.jp/activities/isan/worldheritagelist/europe_1/
https://worldheritagesite.xyz/
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