私は葛飾北斎が大好きです。長野県小布施町には北斎美術館もあり何回となく訪れています。北斎「富嶽三十六景」には一図一図に、北斎の意図や見どころがあります。北斎は、LIFE誌が選ぶ「この1000年で最も重要な功績を残した世界の人物100人」に選ばれた唯一の日本人。「富嶽三十六景」及び「北斎漫画」は、世界のゴーギャン、ゴッホ、セザンヌ、モネ、など多くの印象派画家に影響を与えています。まさに世界の「北斎」です。
「神奈川沖浪裏」
千葉県木更津市
「荒れ狂う波の先には富士山が 北斎力作に命を賭ける」
巨大な波が舟を飲み込まんばかりに襲い掛かってきます。この大波を白と藍で表現しています。船頭たちは、舟べりにただしがみついているようです。荒れ狂う波の先には富士が鎮座しています。動と静、近と遠の鮮明な対比がこの図の主要なテーマです。画家・ゴッホは弟テオに宛てた手紙でこの画を激賞し、またフランスの作曲家・ドビュッシーが仕事場に掲げ交響曲「海」を作曲したことはよく知られています。江戸湾(東京湾)は、漁船や各地からの廻船の通行が盛んで、房総半島から江戸に海産物を運ぶ際に利用されたといいます。図はその際の出来事を象徴的に描いたものでしょうか。
「武州玉川」
東京都府中市
「ぼかし摺藍の波紋は美しく 遠くの富士をより鮮明に」
府中の玉川(多摩川)中流域の渡船場から富士を望んだ描写です。手前の岸、川、対岸と後ろに見える富士と三つに分けられています。川を斜めに配し流れの速さを感じさせています。川の波紋は美しく、対岸から藍をぼかし摺にすることで清らかな水を描いています。この流水表現が北斎の魅力なのでしょう。川を渡る船頭の視線が富士へと導いています。中央の馬は頭を深く垂れて三角形を作っています。
「東海道程ヶ谷」
神奈川県横浜市保土ヶ谷区
「品野坂富士を眺める景勝地 庶民の旅は軽やかな様子」
横浜市保土ヶ谷は、日本橋から出発して四番目にある宿駅です。近くの品野坂は、松の老樹が生い茂っており、ここから富士が望める景勝の地であると「江戸名所図会」は伝えています。駕籠に乗る女性、草履の紐を結びなおす駕籠かき、軽やかな馬の脚どり、逆方向に歩くの虚無僧、さまざまな旅の様子が描きとめられています。
「相州七里濱」
神奈川県鎌倉市稲村ケ崎
「藍一色七里が浜は描かれて 富士山望む江の島あたり」
「富嶽三十六景」の広告文で「或は七里ガ浜にて見るかたち」とあるように、本シリーズ初期の藍摺の一枚です。藍一色で墨絵の趣があります。北斎には珍しく、人物も描かれていない風景画です。鎌倉の七里ガ浜は長く、砂浜と江の島の向こうに富士山を望む景勝地です。しかし、中央の小動岬(こゆるぎみさき)が大きく、左の江の島が極端に小さく描かれています。文様化されたわき上がる雲を見ても実際の風景とは異なるようです。
参照
https://media.thisisgallery.com/20208048
https://fugaku36.net/free/nihonbasi
※5月13日(土)14日(日)は休みます。
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