吉祥寺恋色デイズ 茶倉譲二の妄想小説。譲二ルート続編のお話を彼氏目線で眺めてみました。
ネタバレありです。
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茶倉譲二 続編第九話~その4
〈譲二〉
百花「明里さん、いらっしゃいませ」
出迎えた百花ちゃんに、明里は矢継ぎ早に話しかける。
明里「百花さん、話は聞いたわ。大変だったわね」
百花「私は、何も…」
明里「譲二は結局戻ることになったけど…あなたたちなら大丈夫だって思ってる」
明里「だって、譲二がこの喫茶店を続けた理由は、百花さんなんだから」
百花「え?」
俺は慌てて明里を止めたが、明里は構わず話し続ける。
以前、俺が明里に話した思い出の女の子のことを…。
その女の子のために俺が喫茶店のマスターになったということを…。
百花ちゃんはその思い出の女の子が自分のことだと言われて、不思議そうに聞いている。
そして、おずおずと明里の言葉を遮った。
百花「あの…マスターがクロフネを始めたのは、前のマスターに恩返しをするためだって聞いたんですけど…」
明里「私にはこう言ってたわよ」
譲二「ちょ…明里 !」
慌てる俺に構わず、明里は話を続けた。
明里「昔会った小さな女の子に作ったサンドイッチをすごく褒めてもらえて」
明里「その子の笑顔が忘れられないから、って言ってたけど」
(明里…それを言っちまうか…?!)
譲二「いや…だから、明里…」
俺の言葉を遮ると、明里は女優のように演技たっぷりに言う。
明里「あの子に会った吉祥寺で喫茶店を開いて、サンドイッチを作ってたらもしかして…いつか、その子に会えるかもしれない」
最後の言葉は俺の方を向いて言った。
明里「…なんてロマンチックなこと言ってたくせに」
譲二「いや、それは…」
しどろもどろな俺に、明るくハルが言う。
春樹「ジョージさんって意外とロマンチストだったんだね」
理人「僕はマスターがそこまで一途だったことに驚きだけど」
理人「だってそれってもう10年以上も前の話でしょ?」
明里「私には、その子のおかげですげーやる気になった、なんて言ってたのよ」
譲二「もういいから余計なこと言うなよ」
キツく言ってみたものの、明里には全然効かない。
明里「やだ、照れちゃって」
(ダメだ…。やっぱりこいつにはいつまでたっても敵わない…)
一護「まあ、そのくらいじゃねーとこいつは譲れねえよな」
みんなは口々に俺をからかい始めた。
(あ~あ、だから黙ってたのに…)
百花ちゃんにも、どうして黙ってたのかを聞かれる。
譲二「なんか面と向かって言うのも恥ずかしいでしょ、こんなの」
百花「そんなこと…」
譲二「先代のマスターに恩を返したいっていうのも、嘘じゃないしね」
苦笑交じりにそう言うと、百花ちゃんは「私…嬉しいです」と言ってくれた。
『じーじ』が作ってくれたサンドイッチが大好きだったから、と。
その笑顔は掛け値無しに嬉しそうで…。
(しかも…なんて可愛い顔で言うの…その言葉を)
俺はもう、嬉しさと照れくささで身悶えしてしまいそうだ。
追い打ちをかけるようにみんなの声が飛ぶ。
春樹「ジョージさん、顔赤いよ」
一護「いい大人が照れるなよ」
剛史「ひゅーひゅー」
理人「良かったね! マスター」
(うわ~、いたたまれない)
竜三「俺もジョージのサンドイッチは旨いと思うぞ!」
ありがとう、リュウ。
ちょっとズレてるけど、その気持はありがたく受け取っておくよ。
その5へつづく