譲二さんルートとの混乱を避けるため、ヒロインの名前は佐々木美緒とします。
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好きになったヒロインに迷わず告白し、実力行使にでてしまう男らしい譲二さん。
ただやっかいなのは、ヒロインが好きなのは譲二さんではなく、別の男の人だった。そう…、たとえばハル君。
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茶倉譲二: 喫茶クロフネのマスター
身長:183cm 体重:70kg
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『それは突然の告白から始まった…』の続き
『秘密のデート』その1
〈美緒〉
夢の中で、ハル君とキスをしている。甘い甘いキス。
でもつむった瞼を開けると目の前にいるのは譲二さん。
譲二さんが言う。
「美緒のことはずっと前から好きだった。」
あれ…。何かがひっかかる。なんだろう?
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朝の光の中、目を覚ます。
まだ眠っている譲二さんの腕の中だ。
さっきの夢の中でも言われた言葉。
「美緒のことはずっと前から好きだった。」
譲二さんと初めて出会ったのは、このクロフネに下宿するようになった時。
2ヶ月くらい前からのことを「ずっと前から」と言うかな?
どういうことだろう?
もしかして、ハル君たちのように譲二さんともずっと昔に会ったことがあったの?
…わからない。
眠っている譲二さんの頬をそっと撫でる。
この人は私の恋人なんだよね。まだ、誰にも内緒だけど。
(これがハル君だったら…)
ダメダメ。そんなことを考えては。もう後戻りはできないんだから…。
目を大きく見開いて、込み上げてくる涙をこらえた。
涙が引いた後、もう一度譲二さんの頬を撫でると、譲二さんは目を開いて優しく微笑んだ。
譲二「おはよう」
美緒「おはようございます」
私もにっこり微笑んで、譲二さんの胸に顔をうずめた。こんな風に抱き合ったままの目覚めは少し照れくさい。
譲二「今日は天気が良さそうだね。」
美緒「はい。まだ朝早いのにこんなに明るいですよね。」
譲二「今日は店を休みにして…、デートに行こうか。」
美緒「えっ、デート?」
譲二「俺と…えっと…付き合い出してから、まだ一度もデートに行ったことないなあと思って。」
美緒「本当に? うれしい。」
譲二さんはお店があるから、デートなんてできないと思っていた。
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『秘密のデート』その2
〈譲二〉
朝の明るい光の中、美緒が俺の頬をなでる感触で目が覚めた。
この頃美緒は時々、俺に甘える仕草をしてくれる。
俺は微笑んだ。
譲二「おはよう」
美緒「おはようございます」
美緒もにっこり微笑んで、俺の胸に顔をうずめた。
本当に可愛い。こんなことをしていると本当に恋人同士のように思えてくる。
「お店を休みにして今日はデートをしよう」と俺は誘った。
美緒「本当に? うれしい。」
美緒の顔は本当に嬉しそうだ。
相手が俺でも、デートに行くのは嬉しいのかな。やっぱり女の子だな。
譲二「吉祥寺だとみんなの目があるから、早めに出て遠出しよう。どこか行きたいところはある?」
美緒「今日は天気もいいし…、遊園地に行きたいかも。」
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『秘密のデート』その3
〈美緒〉
私たちは人目を避けながら電車に乗り、乗り換え駅の構内でモーニングを食べた。
譲二さんは私を喜ばそうと、親父ギャグもまぜながら色々と面白い話をしてくれる。
吉祥寺の古い言い伝えなんかもよく知っていて、次々に話がはずんだ。
(私たち、恋人同士に見えるかな)
遊園地までの電車内は少し混んでいた。
譲二さんは自分の体を盾にして私を庇ってくれる。
(ハル君も私をいつもさりげなく守ってくれたけど、譲二さんも同じように優しい…。
あっ、いけない。また、ハル君のことを考えてしまった。)
遊園地ではジェットコースターに乗り、バイキングやフリーフォールの絶叫系をいくつかこなすと、譲二さんはかなり青ざめていたので、今度はホラーハウスに入った。
こちらは私がキャーキャー騒いで、譲二さんにしがみつき、最後は譲二さんの背中に顔を埋めたままやり過ごした。
譲二さんはとてもうれしそうだった。
その後はランチを食べたり、コーヒーカップに乗ったり、ソフトクリームを食べたり…。
最後はカップルらしく観覧車に乗った。
譲二さんと並んで座る。
譲二さんは肩に手を回して私を抱き寄せる。
私は譲二さんの肩に頭をのせた。
(まるで恋人同士みたい…というか一応恋人なんだけど)
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『秘密のデート』その4
〈譲二〉
俺たちは人目を避けながら電車に乗り、乗り換え駅の構内でモーニングを食べた。
美緒を喜ばせたくて、色々と面白い話をする。
彼女は聞き上手で、俺のおしゃべりをのせてくれた。
遊園地までの電車内は少し混んでいた。
人ごみで美緒が押されないように、俺の体でカバーする。
本当に美緒は華奢で可愛らしい。
彼女をずっとこんな風に守っていたい。
遊園地では絶叫系をいくつかこなした。絶叫系が苦手な俺は少し青ざめてしまったので、次はホラーハウスに入った。
ホラーハウスでは美緒がキャーキャー騒いで、俺にしがみつく。
本当に可愛い。
最後は俺の背中に顔を埋めたままなので、幽霊から彼女を守りながら出口にたどり着いた。
うん、ホラーハウスは何度でも入りたいかも…。
その後はランチを食べたり、コーヒーカップに乗ったり、ソフトクリームを食べたり…。
最後はカップルらしく観覧車に乗った。
2人並んで座る。美緒の肩に手を回して抱き寄せた。美緒は俺の肩に頭をのせてくれる。
肩に美緒の温かさを感じながら思った。
(美緒は楽しんでくれただろうか。)
譲二「美緒ちゃん…。今日は俺に付き合ってくれてありがとう。」
美緒「私こそ…。とても楽しかったです。」
譲二「そう? なら、よかった。」
本当は…ハルとこんなことをしたいんだろうな。
恋人のふりをしているだけの自分が惨めになってくる。
美緒にキスしたいところだけど…。
今はただ美緒を抱き寄せて、彼女の温かさを感じていたい。
帰りの電車では、あまり話しかけられなかった。美緒も疲れたのかあまりしゃべらない。
吉祥寺の町中を2人で歩くのを避けるため、駅からは美緒に先に出てもらった。
俺は本屋で少し時間をつぶしてから、帰ることにした。
『秘密のデート』おわり
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