ハルルートの譲二さんの話の続編
今回はハル君のターンです。
前回ハル君とさよならしてから3年。ヒロインは大学2年生に。
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『じーじ』の続き
再会
〈美緒〉
今日は友人達と女子会で飲みに行く。毎日大学で会っていても、飲み会は久しぶりなので楽しみだ。
遅くなったら、女友達の下宿に泊まるからと譲二さんには前々から告げてある。
ハル君とさよならしてから3年。
譲二さんとはますます打ち解けて、幸せな日々を過ごしている。
ハル君とは高校を卒業してから、大学が違うこともあり、ほとんど会っていない。
もちろん会うのはクロフネで、みんなや譲二さんのいる前でなので、何か特別な話をすることはない。
さみしいけれど、ハル君への思いも少しずつ薄れて来ている。
☆☆☆☆☆
美緒「行ってきます。」
譲二「行ってらっしゃい。芽衣ちゃんちに泊まることになったら、メールか電話を入れてね」
美緒「はい。譲二さん、寂しくさせてごめんね」
譲二「うん。その代わり」
譲二さんは唇に、いつものいってらっしゃいのキスよりも熱いキスをした。
☆☆☆☆☆
授業が終わり、芽衣と涼と待ち合わせる。
涼「ごめん。美緒。本当は女子会の予定だったのに、学科の先輩に押し切られて、合コンになっちゃった。」
美緒「えーっ。今日楽しみにしてたのに…」
涼「ほんと、ごめん。また今度改めて、3人で出かけようよ。だから、許して」
美緒「もー。で、合コンの相手は?」
涼「なんか、H大学の学生らしいよ。向こうが5人でくるから、どうしても私たち3人を入れて数会わせしたいらしいよ。」
芽衣「先輩、今回の合コンにかなり気合いを入れてるらしいから」
美緒「仕方ないねー」
(合コンになるなら、1次会でさっさと帰ろうかな。譲二さんも喜ぶだろうし…)
芽衣「美緒は譲二さんがいるから、合コンしてもしかたないのにね」
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私たちは先輩に指定された店に行く。
まだ、相手の学生は来ていなかった。
H大学と聞いていたけど、何か引っかかる。なんだろう。
先輩「背の高い、イケメンぞろいらしいから、期待してて」
そのうちに男子学生が次々とやって来た。その中の1人の姿を見て、私の心臓は止まるかと思った。
美緒「ハル君!」
ハル君も驚いてこちらを見ている。
芽衣「えっ、美緒の知り合い?」
美緒「うん。幼なじみで、高校時代の同級生なの」
久しぶりに会うハル君は大人びて、相変わらずかっこ良かった。
そして、私はハル君のことが昔と変わらず大好きなことに改めて気づいた。
涼「美緒、知り合いなんだったら、そのハル君の隣に座りなよ。その方が譲二さんも安心できるでしょ?」
美緒「うん…」
涼にハル君の方に押しやられる。ハル君も私の横に来てくれた。
春樹「…久しぶり、佐々木。元気だった?」
美緒「うん。ハル君も元気そうだね?」
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再会~その2
〈春樹〉
無理やり連れて行かれた合コンで、偶然、佐々木と一緒になった。
一目見て、やっぱり佐々木のことが好きだという思いが込み上げる。
他の男に横を取られないよう、佐々木を隅に押しやり、その隣に座った。
〈美緒〉
春樹「合コン相手が佐々木の大学だとは知らなかったよ」
美緒「私もH大学とだけ聞いていたけど、ハル君がいるとは思わなかった」
春樹「友達に無理矢理連れて来られたんだ。数合わせに」
美緒「私も本当は女子会の予定だったのに、先輩に数合わせで連れて来られちゃった」
春樹「それで、佐々木がいたのか…。佐々木は合コンになんか行く必要はないものな?」
心なしかハル君の頬が赤くなる。
美緒「ハル君は、もう彼女ができたの?」
春樹「そんなのできてたら、合コンになんか誘われても来ないよ。学部の勉強が結構忙しくて、彼女を作る暇もないし…」
なぜか安堵する私がいる。
本当はハル君の幸せを願わないといけないのに。
春樹「安心した?」
美緒「えっ」
春樹「佐々木、相変わらず分かりやすすぎ…」
ハル君の側に座り、ハル君の声を耳元で聞くのは…うれしくて、そしてドキドキする。
高校時代を思いだしてしまう。
美緒「なんだか、高校時代を思い出すね?」
春樹「うん。でも、佐々木は高校時代よりもっときれいになった」
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再会~その3
〈春樹〉
美緒「なんだか、高校時代を思い出すね?」
春樹「うん。でも、佐々木は高校時代よりもっときれいになった」
俺の言葉に佐々木の頬が染まる。
明るい佐々木の様子に、譲二さんに大切にされているのだろうということがよくわかる。
俺の心に嫉妬の炎が小さく灯った。
佐々木と他愛ない話をしながら、この後佐々木はどうするのだろうと考える。
なんとか2人きりになる方法はないだろうか?
できれば、このまま直ぐには帰したくない。
☆☆☆☆☆
お開きになった。
みんな盛り上がったみたいで、二次会に行こうと騒いでいる。
俺は佐々木の横顔を見つめた。
涼「美緒はどうする?」
芽衣「私たちは二次会に行くけど」
美緒「芽衣、私はこれで帰るよ」
芽衣「そうだね。譲二さんが待ってるものね。でも1人で大丈夫?」
美緒「うん」
春樹「あっ、俺が駅まで送るよ」
芽衣「それじゃあ、美緒のことお願いしますね。私たちはみんな二次会にいくので」
美緒「じゃあね。また来週」
芽衣「バイバイ」
涼「またね」
〈美緒〉
ハル君と2人で残される。でも、なんで駅までなんだろう?
ハル君はこれからまたどこかへ行くのかな?
美緒「ハル君は吉祥寺まで帰らないの?」
春樹「ああ、俺は最近下宿してるんだ。家までの行き帰りの時間がもったいなくって。」
美緒「そうなんだ」
(電車に乗ったら、後は一人なんだ…)
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再会~その4
〈春樹〉
佐々木があからさまにがっかりしている様子をみて、俺は決心した。
春樹「酔い覚ましに、コーヒーでも飲みにいく? せっかく久しぶりに会ったんだし…」
佐々木は嬉しそうに目を輝かせた。
美緒「うん。」
春樹「佐々木…、分かりやすすぎ」
美緒「え?」
春樹「いや、何でもない」
俺はちょっと考え込んだ。
近くのコーヒーショップに入ってもいいけど…。
できれば、2人だけになりたい。
春樹「佐々木…。その…、もしよかったら、少し歩くけど俺の下宿に来ない? コーヒーはインスタントしかないけど…」
美緒「え? いいの?」
春樹「うん。いつも寝に帰るだけだから、掃除があまりできてないけど…」
俺たちは幼なじみたちのことを話題にしながら、歩いた。
春樹「りっちゃんが佐々木の大学に入ったのは驚いたな。高校時代時代はアイツだけが違う学校だったのに。今ではりっちゃんだけが佐々木と同じ大学か」
美緒「うん。科は違うけど、同じ授業を取ったり、ランチルームでもよく一緒にお昼を食べるよ。私の女友達と一緒でも全然平気みたい」
春樹「りっちゃんらしいな…」
理人すら、俺には嫉妬の対象になっている。自分の心の狭さにイヤになる。
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下宿の鍵を開け、佐々木を招き入れる。
彼女は物珍しそうに部屋に入った。
俺はそっと部屋の鍵をかけた。
春樹「コーヒーを入れるから、座って待ってて」
美緒「あ、手伝うよ…これでいい?」
佐々木はお湯を沸かす俺の横に並んで立つと、手際良くマグカップを食器戸棚から出しコーヒーを入れた。
俺はそんな佐々木に見ほれた。
春樹「手際がいいね」
美緒「インスタントだもん、たいしたことないよ?」
俺は佐々木の両肩を持って振り向かせた。
黙って見つめ合う。こんな風に見つめ合うのは3年前の別れ以来だ。
あの時、佐々木は俺と譲二さんを同じくらい好きだと言ってくれた。
それなのに譲二さんを取ると言った。
はっきりとは言わなかったが、譲二さんと肉体関係があるようなことをにおわせた。
まだ、高校生で、童貞だった俺にはどうすることもできなかった。
俺は大学入学後、同学科の女の子と成り行きで寝てしまった。
今の俺なら、彼女を抱くことが出来る。
どちらからともなく、唇を求め合う。
キスは、あの別れの時に佐々木としたのが俺のファーストキスだった。
3年ぶりのキス。それはとても甘くて、彼女を抱きしめながら、何度も繰り返した。
唇を離してキツく抱きしめる。
俺は佐々木の下の名前を呼んだ。
春樹「美緒、このまま帰したくない…」
美緒「ハル君…」
美緒が俺の胸に顔を埋める。
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再会~その5
〈春樹〉
合コンで出会った美緒を俺の部屋に連れて来た。
美緒は俺の腕の中にいる。
美緒「私、女子会のつもりだったから…譲二さんに友達の部屋に泊まるかもって言って出てるの…。泊まるときはメールするねって」
春樹「俺の部屋に泊まってくれる?」
美緒「…うん」
春樹「お湯が沸いたみたいだから、コーヒーを入れるよ。美緒は…譲二さんにメールして?」
俺たちは無理に引きはがすように抱擁をといた。
マグカップにお湯を注ぎながら、心臓は激しく鼓動を打っている。
10年以上前からずっと思い続けた女(ひと)と一夜を過ごすのだ。
テーブルの上にコーヒーを置く。
美緒「メール送ったよ」
そういって俺を見つめる美緒の顔は、少し青ざめている。
ソファに並んで座り、美緒を抱きしめた。
春樹「ごめんね。俺のために嘘をつかせて」
美緒「ううん。私がハル君ともっと一緒にいたいだけだから…」
春樹「せっかく入れたから…、さめないうちに飲もう」
譲二さんのコーヒーのように美味しくはないけど、と言いかけて言葉を飲み込む。
美緒「うん」
コーヒーを飲みながら、美緒の腰に回した手を離すことができない。
美緒をベットに横たえて、覆い被さった。耳元で囁く。
春樹「今夜、美緒を俺のものにしてもいい?」
美緒「うん…。いいよ。」
耳から首筋へゆっくりとキスをしていく。唇を重ねると、堪えきれなくなって、熱いキスで求め合った。
美緒の服を脱がせていく。
キスしながら、一枚、一枚脱がすごとに彼女があらわになる。
10年以上前から大好きな彼女の俺の知らなかった部分。
白い素肌にキスすると、美緒は感じるのかかすかな喘ぎ声をあげる。
初めて彼女を知る喜びとともに、「ああ、この姿を譲二さんはこの3年間見続けて来たのだ」と思うと胸が苦しい。
春樹「美緒、とっても可愛い」
美緒「ハル君…」
俺が愛撫するたびに、美緒は可愛い声をあげる。
その甘い声に俺は理性がどんどん飛んでいく。
この声も譲二さんは毎日聞いているのか…。
その嫉妬心を押さえるために、美緒の唇にキスをして黙らせた。
耳元に息を吐いて、もだえる美緒にそっと囁く。
春樹「美緒の中に入ってもいい?」
百花「…ああ、…うん…」
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再会~その6
〈春樹〉
美緒の中は温かくて柔らかかった。
美緒は「あ…」と言う微かな声をあげ俺を包み込んでくれた。
美緒の唇にキスをしようとして顔をみると、美緒は静かに涙を流している。
俺はうろたえて囁いた。
春樹「ごめん。なにか痛くしてしまった? それとも…?」
さすがに譲二さんのことを考えているの?とは聞けなかった。
美緒「ううん。私、嬉しくって…。この3年間、ハル君とこうしたかったんだって…今やっとわかった。」
嬉しい? その答えに俺の胸はいっぱいになって、自分の行為に夢中になった。
俺の動きに合わせて、美緒は小さく、大きく声をあげた。
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快感の余韻に浸りながら、美緒の顔を見るとまだ涙を流している。
指でそっと拭うと、そこにキスをした。
春樹「大丈夫だった?」
美緒「うん」
美緒が俺にしがみついてくる。
美緒「ハル君と一つになれて…、本当に嬉しかった。」
春樹「俺もだよ…。ずっと美緒を抱きたかった…。とても嬉しい」
春樹「美緒…。譲二さんではなく、俺を選んではくれないか?」
美緒「…」
春樹「今すぐ、決めなくてもいい。選択肢として、俺のことも入れて考えて欲しい」
美緒「ハル君…」
春樹「ほら、そんなに泣かないで…」
俺は涙を流す美緒が愛おしくて愛おしくて、キスをした。
熱いキスを繰り返すと気分は高まって、もう一度彼女を抱いた。
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再会~その7
〈春樹〉
明るい日差しの中、味噌汁のいい匂いで目が覚めた。
目を擦りながら起き上がると美緒が朝食の用意をしてくれている。
美緒「おはよう」
春樹「おはよう。早かったね?」
美緒「なんだか、目がさめちゃって、冷蔵庫の中のものを使って簡単だけど朝ごはん作ったよ?」
春樹「何にもなかっただろ?」
美緒「んー、でもタマネギとかお味噌とかあったから、味噌汁にして、卵もあったから目玉焼きを作ったよ」
春樹「ご飯も炊いてくれたんだ?」
美緒「お米がなかなか見つからなかったけどね」
春樹「ありがとう」
美緒を後ろから抱きすくめる。信じられないくらい幸せだ。
美緒を振り向かせて、キスをする。
何度も繰り返すと気分が高まって…。
ヤバいヤバい…。なんとか理性で押さえた。
美緒「ハル君…。ご飯を食べたらもう帰らないと…」
お皿を運びながら、美緒の言葉で俺は現実に引き戻された。
春樹「もう少し…、ゆっくりしていけよ」
美緒「そういうわけにもいかないの…。譲二さんが…待ってるし…。あんまり遅いと疑われると思う…」
春樹「…そうしたら、また時々こんな風に食事を作りに来てくれない?」
美緒は少し迷っているようだった。
春樹「…泊まれなくても…、時間が合う時に美緒に会いたい。俺も忙しくて、滅多に会えないと思うけど…。このまま一夜限りで終わるのはイヤだ」
もう一度美緒を抱きしめてキスをする。
尻込みする美緒に約束させた。
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再会~その8
〈譲二〉
美緒「ただいま…」
譲二「おかえり、美緒。楽しかった?」
美緒「うん」
美緒を抱き寄せて、キスした。
丸一日ぶりというだけなのに、どれだけ美緒を欲していたかを認識した。
つい、キスが長くなってしまう。
譲二「ごめん。部屋で着替えておいで」
美緒の後ろ姿を見送って、さっき抱き寄せたときのことを思った。
抱きしめた時、ほんの一瞬だけど、美緒は体を強ばらせた。
もちろん、付き合い始めた頃は、俺に押し切られてのことだったから、俺の腕の中で体を強ばらせることはよくあった。
しかし、ここ最近はそんなこともなくなっていた。
(何かあったのだろうか? 泊まるのは芽衣ちゃんの部屋だとは言っていたけど…)
美緒の姿が消えた2階への入り口をじっと見つめた。
〈美緒〉
自分の部屋に入って、ベッドに腰を下ろした。
まだ、ハル君との一夜の余韻が残っている。だから、譲二さんに抱きしめられたくはなかった。
昨夜は本当に夢みたいだった。
まだ、こんなにもハル君のことが好きで、ハル君を求めていたなんて…。
(どうしよう?ハル君に押し切られ、新しいメアドを交換し、必ず連絡すると約束させられたけど…。)
譲二さんは私のことに関しては鋭いところがあるから、直ぐに見破られるのではないかな…。
メールが来た。
『美緒へ
昨夜は俺と過ごしてくれてありがとう。
とても嬉しかったし、とても気持ちよかった。
って、ちょっと恥ずかしいよね。
俺はやっぱり美緒が大好きだ。
今は譲二さんの恋人だけど…。
いつか必ず美緒を取り返してみせる。
添付で授業とかバイトのスケジュールを送ります。
よかったら美緒も教えて?
美緒が大好きだよ
春樹』
ハル君からの久しぶりのメール。とてもうれしい。
〈譲二〉
その夜、一日ぶりの美緒を抱いた。丹念に時間をかけて愛した。
美緒は愛らしい声をあげて、俺の腕の中で乱れた。
☆☆☆☆☆
美緒の喘ぎ声がする。
ふと見ると、美緒は男に抱かれて悦んでいる。
その男の顔はわからない。
俺は止めようと叫ぶが声がでない…。
あともう少しで2人に手が届きそうで届かない。
駈けていこうとしても、足が動かない。
美緒が男に抱きついて、その背中に爪を立てた…。
☆☆☆☆☆
ぐっしょりと寝汗をかいて目が覚めた。
心臓の鼓動が激しく打っている。
時計の針は午前2時。
隣を見ると美緒があどけない顔で寝息を立てている。
どうして、あんな夢を見たのだろう。
昨日の夜、美緒が外泊したのが気になったからか?
今までも、芽衣ちゃんちには時々泊まって帰ることがあったのに…。
あの夢は美緒を自分のものにして間もない頃に時々見ていた夢だ。いつの間にか見なくなっていたのだが…。
俺は起き上がって、美緒の唇にそっと口づけた。
美緒はくすぐったかったのか、むにゃむにゃ言って寝返りを打った。
少しずり落ちた布団をかけ直してやり、シャワーを浴びにいった。
シャワーを浴びると目が冴えて寝付けなくなってしまった。
もう一度一階に行き、ウィスキーを取り出し、水割りにして飲む。
美緒の浮気を疑うなんて…。
酒の力を借りても、眠れそうにない。
☆☆☆☆☆
再会~その9
〈春樹〉
美緒と再会してから2週間が経った。
今日は美緒が昼食を作りに来てくれることになっている。
スケジュール交換はしたものの、俺の授業やバイトの兼ね合いで、今日まで会えなかったのだ。
メールが来た。
『買い物をしていくから、あと30分くらいで着くよ。
美緒』
美緒を部屋で待ちわびる。
チャイムが鳴り、ドアを開けると美緒が立っていた。
直ぐに招き入れると、俺は彼女を抱きしめた。
美緒「ハル君。お腹空いたでしょ?すぐ作るね」
春樹「俺は昼食よりも、美緒が食べたい」
美緒「だって…」
唇を重ねてその言葉を消した。
2週間ぶりの美緒はあまりにも可愛らしくて、一度抱くとどうしても手放すことが出来なかった。
美緒はしきりに「食事の支度をしなければ」と言い続けていたが、俺は適当に聞き流していた。
時間がどんどん過ぎて行く。
美緒は時計ばかり見ている。
美緒「ハル君。そろそろ料理しないと、5時ぐらいには帰るって言って来てるから…」
春樹「…どうしても、帰らないといけないの?」
美緒「え?」
春樹「今日は泊まって行けよ。」
美緒「そんなことできないよ…。」
春樹「譲二さんとこれまで通り続けるのならね」
美緒「え?」
春樹「美緒はもう大人なんだから…譲二さんのところにずっといなきゃいけないということはないはずだよ。俺と一緒にここに住んだっていいはずだ。」
美緒「…ハル君と一緒に住む?」
春樹「そうさ。一度よく考えてみて欲しい」
〈譲二〉
美緒は言っていた時間より少し遅れて帰って来た。
そして、直ぐにシャワーを浴びた。
夕食を食べた後は、すぐ2階に上がった。
俺が部屋を覗きに行くと、自分のベッドでぐっすり寝ている。
俺はベッドサイドに座り、美緒の髪をそっと撫でた。
美緒は寝ぼけて俺の手を掴むと呟いた。
美緒「ハル君…」
俺の心臓は凍り付いた。
…なぜ? 今、ハルの名前がでるのだろう?
☆☆☆☆☆
その時から俺の苦悩の日々が始まった。
愛する女性に裏切られているかもしれない。
いや、そもそも美緒は俺を好きになってくれたことなどないのかもしれない。
少なくとも、一番目でないことは確かだ。
この三年間あまりにも幸福だったから忘れていたが、美緒の心の中には絶えずハルが住んでいたのだから。
そして、ハルも美緒のことをずっと好きだった。
好き合った2人が俺の知らない場所で出会い、何かあったとしたら、俺には全く勝ち目はない。
しかし、美緒を手放すことだけは、絶対にできない。
まだ、間に合うはずだ。
何とか対策を考えないと…。
☆☆☆☆☆
再会~その10
〈美緒〉
譲二さんにハル君とのことがバレてしまった。
最初は譲二さんに謝ったりしたけど、譲二さんにののしられると、私も譲二さんにきつく言ってしまった。
美緒「最初に私を無理やり自分のものにしたのは譲二さんじゃない。私はあの時、ハル君のことが大好きだったのに…。私の気持ちを無視したのは譲二さんよ!」
そんなことをいうつもりはなかったのに…。
それとも、3年間ずっと心の底でそんな風に私は思っていたのだろうか?
私のきつい言葉に、一瞬譲二さんは黙って、悲しそうな顔をした。
ああ、譲二さんを悲しませたくはなかったのに…。
言い争っても、喧嘩しても、私が生意気なことを言っても、譲二さんが私に手をあげることはなかった。
こんなに大切にしてもらっているのに。
それでも、一度ハル君に傾いた気持ちを戻すことはできなかった。
ハル君への思いは堰を切ったように私の中で溢れていた。
〈譲二〉
美緒「最初に私を無理やり自分のものにしたのは譲二さんじゃない。私はあの時、ハル君のことが大好きだったのに…。私の気持ちを無視したのは譲二さんよ!」
美緒の言葉が胸に突き刺さり、言い返すことができなかった。
そもそもの始まりが間違っていたのだろうか?
しかし、あれ以外に美緒を俺のものにする方法があっただろうか?
何もしなかったら、ハルと美緒は付き合って…。結局俺の出る幕はなかった。
俺たちは、もう終わりなのか…。
☆☆☆☆☆
嫌がる美緒の中に無理矢理分け入った。
激しく腰を動かしながらも、惨めな気持ちになる。
こんなにも愛してるのに…。
美緒を愛する気持ちはハルなんかに負けてないのに…。
でも…美緒を抱けるのは…これが最後になる予感がした。
横たわって涙を流している美緒に話しかける。
譲二「俺ではダメなの?」
美緒「…」
譲二「俺ではハルの代わりにはなれないのか?」
美緒「…」
譲二「…ずっと…、俺の側に居てくれるって約束したじゃない…」
美緒「ごめんなさい…」
譲二「…」
俺は無様に食い下がった。
譲二「…俺を…捨てないでくれ…」
なけなしのプライドすら崩れていく。
譲二「…捨てないで…」
美緒をきつく抱きしめた。
美緒も俺の背中に手を回して優しく抱きしめてくれた。
でもそれは…、俺を愛してるからではなく、惨めな男への同情からの行為にしか過ぎないのだと…、俺にはよくわかっていた…。
それでも「このまま時が止まってしまえばいいのに」と願わずにはいられなかった。
『再会』おわり
☆☆☆☆☆
この続きは『それぞれの道』~その1~その5になります。