恋、ときどき晴れ

主に『吉祥寺恋色デイズ』の茶倉譲二の妄想小説

話数が多くなった小説は順次、インデックスにまとめてます。

茶倉譲二 続編第三話~その7

2015-09-05 08:13:28 | 吉祥寺恋色デイズ 茶倉譲二

吉祥寺恋色デイズ 茶倉譲二の妄想小説。譲二ルート続編のお話を彼氏目線で眺めてみました。
ネタバレありです。
 

☆☆☆☆☆

茶倉譲二 続編第三話~その7

〈譲二〉

その日は百花ちゃんも学校が休みだったので、一緒にクロフネの掃除をすることにした。


1階の掃除が終わり、俺は自分の部屋を片づけに2階に上がった。

引き出しの中を片付けていると、奥から子供の頃の写真が出て来た。

兄貴と2人で写っている写真だ。

2人とも鼻の頭に泥をつけて、顔いっぱいの笑顔で写っている。


(そうだな…。この頃は兄貴のことが大好きだったんだ。大きくて、頼りになって、何でもできる兄貴は俺のヒーローだったっけ)


あの頃の兄貴への思いを思い出して、ちょっと切なくなった。

ぼんやりしていて、ノックの音に気づかなかったようだ。


百花「譲二さん?」


百花ちゃんに突然呼びかけられて慌てた。


譲二「えっ? あっ」


とっさに写真を隠そうとしたけど…、手からひらりと落ちてしまった。


百花「あ、落ちましたけど…え?」


慌てる俺に百花ちゃんは不思議そうな顔をした。


譲二「ちょっと掃除してたら、奥から出て来たんだけど」

譲二「今さら子供の頃の写真を見て、懐かしく思っちゃって…」


ちょっと感傷的になっていたこともあって、照れくさくて必死で言い訳した。


百花「これ…紅一さんの家にも飾ってありました…って、譲二さんの実家ですけど…」

譲二「え? 茶倉の家に?」

百花「はい」

百花「紅一さんが、話してくれたんです。譲二さんといろんなことをして遊んだって」

譲二「兄貴が…」

譲二「そっか…兄貴もあの頃のこと覚えてたんだな」


しみじみつぶやくと、百花ちゃんが心配そうに聞く。


百花「…お兄さんと、ケンカしてるんですか?」


俺は百花ちゃんに兄貴とは小さい頃は仲が良かったこと、いつも、一緒に遊んでたことを話した。


譲二「ただ…大人になるといろいろ事情があってね」


また百花ちゃんを考えこませてしまった。

ダメだな~俺は…。

何か無いかな……何か彼女を元気づけるようなこと…。


譲二「あ、そうだ…明日、2人で出かけよっか」

百花「いいんですか?」

譲二「どこか行きたいところある?」


思い切ったように百花ちゃんが言う。


百花「井の頭公園がいいです」

譲二「え? そんな近場でいいの?」

百花「はい! 譲二さんと一緒にスワンボートに乗ってみたかったから」


キラキラした笑顔を見せる百花ちゃんがいじらしくて、頭を撫でる。


譲二「そんな可愛いこと言わないの。オジサン、困るでしょ」

譲二「じゃあ明日のデートのために、張り切って掃除しようか」

百花「はい!」


実家のこと、兄貴のこと。

何もかもが片付いた訳じゃないけど、ひとまず百花ちゃんと仲直り出来たのは嬉しい。

それに今まで言えなかった子供の頃の苦しかった話を、百花ちゃんに聞いてもらえたことは俺に安心感を与えた。


そうだな…。

明里が言ってたように、俺は思っていた以上に百花ちゃんに頼ってたんだ。

一生懸命に窓を拭いている百花ちゃんの横顔を見ながら、俺は幸せな気持ちに包まれていた。


茶倉譲二 続編第三話 おわり



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