吉祥寺恋色デイズ 茶倉譲二の妄想小説。譲二ルート続編のお話を彼氏目線で眺めてみました。
ネタバレありです。
☆☆☆☆☆
茶倉譲二 続編第九話~その8
〈譲二〉
とうとう、兄貴やみんなも帰ってしまい、百花ちゃんと二人きりになった。
ガランとした店内はいつもと同じはずなのに、なんだかひどく寂しかった。
感慨にふける俺を気遣って、百花ちゃんが言った。
百花「…私がいますから」
健気に俺を見つめてくれている。
譲二「…うん、ありがとう」
そうなんだ。
クロフネは閉めてしまっても、ここには百花ちゃんがいる。
どこにいても、実家で忙しくしていても、きっとクロフネにいる百花ちゃんのことはいつでも思い浮かべることができるだろう。
俺を見上げる百花ちゃんに言った。
譲二「クロフネがなくなっても、百花ちゃんはここにいる。…そう思うと、安心するね」
傾きかけた茶堂院グループを立て直すのは一筋縄ではいかないだろう。
忍耐力も試されることになるだろう。
だけど…。
譲二「俺には夢ができたからね」
百花「夢…?」
きょとんと首を傾げる。
譲二「うん」
百花ちゃんの頭をやさしく撫でた。
しばらくはこの癒やしともお別れだな…。
でも、寂しいなんてことは言ってられない。
百花ちゃんとクロフネを再開する。
それが俺の今からの夢だ。
夢のためにも絶対に茶堂院グループを立て直さないと。
どんな困難があったとしても。
心の中で自分を奮い立たせていると、百花ちゃんが言った。
百花「あの…ちよっとだけ屈んでもらっていいですか?」
譲二「ん? こう?」
少しかがんでみると、百花ちゃんの手が優しく頭を撫でた。
(これじゃ逆だ…)
驚いて苦笑する俺に百花ちゃんは言う。
百花「でも、今こうしてもらいたいのは…譲二さんの方だと思ったから」
そっか…。
俺が今、一人で頑張らないと、って悲壮な決意をしてるってことを百花ちゃんには見抜かれてたのか…。
必ずここに戻ってくるつもりではあるけれど、それが一か八かの綱渡りだってことも…。
譲二「ありがとう…」
百花ちゃん。
いつも俺を支えてくれてありがとう。
俺はこの先、どんなに辛くて苦しくても立ち止まったりはしないよ。
こんなに俺のことを思ってくれる可愛い恋人の元へ、クロフネで待ってくれる君の元へ戻ってくるまでは。
必ず帰ってくるから…。
それまで……今と変わらず待っていてくれ…。
『茶倉譲二 続編第九話』 おわり