お待たせしました。
ほぼ二ヶ月ぶりです。
『譲二の勝手に3年後編』の続きをupします。
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前にも書いたけど、吉恋本家の譲二ルートの3年後編には色々と不満がある。
久しぶりに吉祥寺に帰ってきた譲二さんとのラブラブな話のはずなのに、新キャラの紹介に使われてたり、色々とモヤモヤするものがあって、私の思う『勝手に3年後編』を書いちゃいました。
『譲二の勝手に3年後編』の始めの部分は本家の『譲二3年後編』とほぼ同じです。
そして、時々本家のエピソードに重なるものも入れながら、少しずつ離れていき、玉の緒ワールドの譲二さんの話になってます。
航くんは出てきませんが、本家の『譲二3年後編』では出てこなかった、懐かしいあの人とかあの人とか出てきます。
だから、ネタバレも少々あるものの、譲二ルートの3年後編とはまた別のお話と思って下さい。
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シェアカフェ~その4
〈百花〉
夕方遅く、すでに玲さんのお店の時間になっていたが、お客さんはまだ誰もいない。
玲さんはカウンターに座り、イヤフォンをつけて音楽を聴いているようだった。
百花「玲さん、ただいま」
玲「あら百花、おかえりなさい。今日は遅かったわね」
百花「今日は実習が長引いてしまって」
玲「そう。大学生も大変ね」
百花「玲さんは何の音楽を聴くんですか?」
私の質問には直接答えずに、玲さんは黙ってイヤフォンジャックからプラグを外した。
クロフネの店内に、玲さんが聴いていた音楽が流れた。
百花「クラシック?!」
玲「らしくないでしょ?」
百花「いえ、そんな…」
玲「んふ…。別にいいのよ。アタシのイメージじゃないわよね」
そう言って、玲さんは妖艶に笑った。
百花「クラシックといっても…。何だか不思議な曲ですね」
あのメロディを奏でている楽器はなんだろう。
音哀愁を帯びていて心が揺さぶられる。
百花「この楽器の音色…甘い音がしますね」
玲「ああ…この音はオーボエよ。木管とヴァイオリンの協奏曲なの。不思議な感じはするけど、とても綺麗な曲でしょ?」
百花「はい。まるで妖精が踊っているみたい」
玲「妖精の踊りね…。百花、上手く言い表わすわね。この曲は特に好きだわ。…アタシ、綺麗な物が好きだから」
百花「ええ、とても綺麗な曲ですね」
玲「アタシね、これでも学生時代にクラシック音楽の道に進もうかと思ったこともあったのよね。吹奏楽部に入ったら、ハマっちゃってね」
百花「そうなんですか?」
玲「だけど、父が事業に失敗して、アタシたちを置いて出て行って…。そんな贅沢なことは出来なくなっちゃったけどね…」
百花「そうだったんですか…。それで、前のマスターとは別々に…」
玲「あら、やだ。何かしんみりさせてごめんね。」
百花「私、何も知らなくて…すみません」
玲「百花が気にすることじゃないのよ。もう昔の話なんだし」
そう言うと、玲さんは屈託のない笑顔をみせた。
その5へつづく