吉恋番外編の雪遊びを読み返して、譲二さんだけに子供の頃の思い出話が無いのが寂しかった。
なので、思い出話+彼目線も書いてみました。
恋カフェにショートの彼目線はあるけどね、もう少し長くってことで。
子供時代、他のみんなのは10年前で小学生時代なんだけど、譲二ルートでは譲二さんが中学生ってことで13~15歳くらいの話になる。
ということはヒロインは幼稚園児で12~14年前のことと思われる。
微妙にずれてしまうんだよね。
だから「雪遊び」は10年前の大雪の日ってことで、この思い出では高校生の譲二さんに活躍してもらいます。
だから失恋からも少し立ち直ってるのかな?
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雪遊び~譲二の場合~その1〈子供時代〉
玄関に行こうとする俺に滝沢が言った。
滝沢「譲二様、お出かけですか?」
譲二「ああ、出かけちゃ悪いか?」
滝沢「外は雪が積もって足元が悪くなっております。今日は外出を控えられた方が」
(雪が積もってるから外に出かけるんだろうが!)
(まるで俺が年寄りみたく言うなよ!)
そう怒鳴りたいところだけど、出かける前に滝沢と面倒は起こしたくなかったので、俺は無言でトレッキングシューズを履いた。
滝沢はさらにしつこく話しかけてくる。
滝沢「それでは譲二様、せめてこれを首に巻いてください」
滝沢が持って来たのは、この前のクリスマスにおふくろがプレゼントしてくれたマフラーだ。
おふくろのことだから上等な物なのだろうが、大判サイズで、俺にはダサく思われたから、一度も使っていなかった。
滝沢「奥様が譲二様のために選んだ物でございます。それに首を冷やすと風邪をひきやすいものですから」
俺はもう面倒なので、マフラーを滝沢から引っ手繰るように受け取ると自分で首に巻き、家を後にした。
(私が巻いて差し上げましょう、なんて滝沢なら言いかねないからな)
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実を言うと、今朝起きて一面の雪を見て、庭でそれなりに大きな雪だるまを作ったのだった。
もちろん一人で。
兄貴を誘ってみたものの、「課題を仕上げないと」とかぶつくさ言って、一緒にはやってくれなかった。
それどころか、仕上げた雪だるまを見に来てくれと呼びに行ったら…。
紅一「譲二、お前、高校生にもなって雪遊びでもないだろう」
見てくれるどころか、お説教までされてしまった。
いくら雪がたくさんあるとはいえ、一人で遊んでも面白くない。
俺は大雪が積もった町の様子を見るために外に出かけることにしたのだ。
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ザッザッと小気味いい音を立てて雪道を歩いて行く。
時々そこかしこから子供らの歓声が聞こえる。
道の端には、誰かが作っただろう雪だるまが点々と置かれていた。
大通りはさすがにアスファルトが見えていて、シャーベット状になった雪を踏みながらゆっくりと車が通って行く。
いつの間にか俺の足は黒船近くの公園に向かっていた。
(もしかして…ちびのヤツいるかな?)
その2へつづく