村上春樹の初期の作品に『中国行きのスローボート』という短編がある。ストーリーはほとんど忘れてしまったが、「スローボート」という言葉の響きがいつまでも心に残っている。見たことのないスローボートの私のイメージは貧弱で、湖に浮かぶ手漕ぎボートを大きくしただけのボートが黄河を漂っていた。
タイからラオスへ入り、「スローボート」に乗ることにした。
ミャンマー国境に近いタイ北部の街チェンコンでメコン川を小舟で横断し、対岸ラオスへ入国。舟のチケット売り場と間違えてしまったほど簡素なイミグレーションで入国スタンプを押してもらった後、スローボートに乗り換え、ラオスの古都ルアンプラバンへ向かう。
開放感あふれる細長いスローボートに乗り込むのは重いバッグパックを背負った外国人と身軽な現地の人々。
船は時々、エンジンを止めて沿岸に船首を着ける。桟橋も船場もない粘土質の岸辺では、時に棒幅跳び、時に川に足を浸かりながら、人々は岸に降りていく。
メコン川には処々に岩場や大きな渦巻きが現れ、息を呑むこともあるが、船頭は手馴れた舵さばきを見せ、外国人乗客を喜ばせる。川の流れに乗り予想以上に速く走るスローボートだが、ルアンプラバンまでは、2日がかり。
夜のボート航行は禁止されているため、夕暮れなると川岸の小村に立ち寄ってゲストハウスに一泊する。パームツリーのジャングルの岸辺で、ビールを呑みながら暮れ行くメコン川を眺めていると自分がどこの国にいるのか忘れそうになる。
タイからラオスへ入り、「スローボート」に乗ることにした。
ミャンマー国境に近いタイ北部の街チェンコンでメコン川を小舟で横断し、対岸ラオスへ入国。舟のチケット売り場と間違えてしまったほど簡素なイミグレーションで入国スタンプを押してもらった後、スローボートに乗り換え、ラオスの古都ルアンプラバンへ向かう。
開放感あふれる細長いスローボートに乗り込むのは重いバッグパックを背負った外国人と身軽な現地の人々。
船は時々、エンジンを止めて沿岸に船首を着ける。桟橋も船場もない粘土質の岸辺では、時に棒幅跳び、時に川に足を浸かりながら、人々は岸に降りていく。
メコン川には処々に岩場や大きな渦巻きが現れ、息を呑むこともあるが、船頭は手馴れた舵さばきを見せ、外国人乗客を喜ばせる。川の流れに乗り予想以上に速く走るスローボートだが、ルアンプラバンまでは、2日がかり。
夜のボート航行は禁止されているため、夕暮れなると川岸の小村に立ち寄ってゲストハウスに一泊する。パームツリーのジャングルの岸辺で、ビールを呑みながら暮れ行くメコン川を眺めていると自分がどこの国にいるのか忘れそうになる。