見果てぬ夢

様々な土地をゆっくりと歩き、そこに暮らす人たちに出会い、風景の中に立てば、何か見えてくるものがあるかもしれない。

バレンシアのパエリヤ

2007-10-15 02:26:57 | スペイン
バレンシア。その名前から最初に連想するのは、オレンジ。だが、とにかく美味しいパエリヤを求め、バレンシアまで移動することにした。


列車は、オレンジの木の茂るイベリア半島の乾燥地帯を走る。
スペインの鉄道は、これまで歩いたどの国の鉄道より安い。運行本数が少ないために満員列車が多く、座席指定専の超特急列車はかなり前からの事前予約が必須というが、ローカル列車はのどかでシートも柔らかく快適だ。ただし、時刻表通りに列車が運行されない、大きな駅では切符購入に1時間以上かかるなど、慣れないうちは利便性の悪さがやや気になる。
この間、バルセロナから、南部海岸沿いのタラゴナ(Tarragona)やサルー(Salou)といった小さな街まで、ローカル列車で訪ねる経験を経て、スペイン鉄道のゆったりした運行事情に慣れてきた。時刻表通りに運行されない列車に、現地の人たちは動じない。遅れることは当たり前。悠然と構え、余裕をもって行動すればいいだけの話だ。
<田舎の駅の待合室。スペインの画家ダリやミロを思い出させる>

ただ、スペイン語のわからない旅行者にとっては、列車の乗車ホームが、直前まで知らされないという習慣はかなりきつい。不正確な列車運行事情のために、プラットホームの確定は、列車進入直前にならざるを得ないのだろうが、小さな駅では、電光掲示板表示がなく、スペイン語アナウンスのみで発着番線が直前に知らされるので戸惑ってしまう。鉄道の発着番線が直前に決定される状況は、欧州全体に通じる。
およその発着ホームは決まっているのだが、不正確に進入してくる列車の順序によってホームが変更されることはよくある。コペンハーゲン駅では、「20分前に掲示板に番線が表示される」と言われた。乗客は、駅の電光掲示板を頼りに自分の列車がどこから出るのかを知るのだ。
ホームが3つだけの小さな町「サルー」の駅の電光掲示板には、全ての列車が「1番線」と表示されていた。が、ホームは3番線まであり、実際、1番に列車が停まっているときは2番、そして、3番線と、次々に入ってくる順序に列車は停まるので、決して表示された1番線からの出発とは限らない。それでも、駅員に次の列車は何番線かと聞くと、決まって「1番線!」と指を一本立てるのだった。愛すべきスペイン!

列車の話しではなかった、パエリヤの話しだ。
ローカル線に乗って、青空のまぶしいバレンシアに入った。狭い路地が入組む中世の香りの残る旧市内に、滞在先のホステルはあった。すぐに、ホステルの受付スタッフにパエリヤの美味しい店はどこにあるかと聞いた。彼女は、レセプション横に貼られた地図を示しながら「この地図にあらゆる情報があるから、参考にしてね。スーパーマーケット、飲み屋、パエリヤの店、薬屋、美味しいレストラン、ランドリーも」と教えてくれた。ホステルの宿泊者が求める情報は、大きなホテルの宿泊者とやや異なることが、その案内地図を見ても明確で思わず苦笑してしまう。

バレンシアは、パエリアの街だった。
ほとんどのレストランで、昼食メニューにパエリヤがある。店によっては夜でもパエリヤを出すレストランもある。ただし、「注文は二人分から」という店が多く、テーブルクロスのあるレストランでは、海鮮パエリヤが一人分16~20ユーロ(2500~3700円)もするとあって、なかなかハードルは高い。
それでも、ランチメニューやお得なセットメニューでは、選択メニューの中にパエリヤがあるので、そうしたパエリヤをいくつか試してみた。
それぞれコクや香ばしさが異なり、どの店が美味しいというのかは、個人の好み次第なのだろう。私は、オリーブオイル控えめ、ほんのりきつね色の焦げ目が付き、サフランの香高いライスがパラっとし、海鮮の具沢山のパエリヤが好み。何はともあれ、いくつか試して、美味しさは個人の好み次第という結論。高級なレストランの味が必ずしも自分の口に合うということでもない。何にでも言えることではあるが。
これで当分の間、パエリヤからは遠ざかってもいい・・・


↑夜のバレンシア旧市内。市民や観光客にとっては宵の口の22時。


↑ホステル推奨のパエリヤの店「el forcat」店が開くのは21時から。


↑「el forcat」の店内。21時の開店時は客もまばらだが、22時頃から混み始める。


↑「el forcat」の「海鮮パエリヤ」。お得メニューの一皿なので、大きな鍋で炊いたパエリヤを一人分だけ盛ってくる。具はほとんど見えないが味は海鮮風味抜群。


↑昼食時、大きなパエリヤ鍋で炊いて、そのまま店頭に出すレストランも。


↑セットメニューでは大鍋から小盛りで取り分けられる。「パエリヤ・バレンシア」は、とり肉、うさぎ肉が炊き込まれたバレンシア地方特性の逸品。


↑旧市内中心部にある大聖堂の広場周辺。夜遅くまでオープンテラスで人々が食事やアルコールを楽しむ。


↑大聖堂の広場にあるオープンテラスの小さなバーでは、一人分の海鮮パエリヤを炊いてくれる。味はいまいちだが、価格の安さと見栄えは抜群。


↑海の幸に溢れるバレンシア市内の市場。オープンは平日の午前中のみ。


↑市場で新鮮な食材を買い、ホステルのキッチンでパエリヤモドキ(サフラン抜き)を作ってみた。
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