見果てぬ夢

様々な土地をゆっくりと歩き、そこに暮らす人たちに出会い、風景の中に立てば、何か見えてくるものがあるかもしれない。

イグアスの滝

2007-12-23 05:27:09 | 南米
「イグアスの滝」を真上から浴びた。

世界旅行通のモモセ氏から、
「私は世界の3大瀑布といわれる、イグアス、ナイアガラ、ビクトリアの滝を訪れることができましたが、イグアスはその中でも、一歩抜きん出ている感じがします。」とメッセージをいただいた。期待が募る。

クリチバからイグアスの滝観光の拠点となる町フォズ・ド・イグアスまで、バスで10時間。例によってふかふかシートの夜行バスに乗ってイグアスに向かう。
到着した亜熱帯リゾート風の優雅なユースホステル(YH)に唖然としながら、翌日の車の予約を入れた。
ホステルの宿泊客6人と一緒にアルゼンチン側から滝に入るルートだ。
イグアスは、パラグアイ・ブラジル・アルゼンチンの3カ国に跨るイグアス川が造り出す大パノラマだが、アルゼンチン側から見た景観が最も迫力あり有名だと聞いていた。

イグアスYHのツアーデスク担当者の陽気で早口の誘いに乗せられ、つい、ボートで滝下に行くコースまで申し込むんでしまった。滝の下に近づくということは、濡れる可能性があるんですね。と確認すると、彼は、
「そうですね。でも、迫力ありますよ。滝下まで行くのですから」と。
真下から眺めるのだから、きっとすごい迫力なのだろう、水しぶきを浴びるかもしれない。カッパくらいは持っていった方がいいかな、と想像してみたが、そのときの、彼の説明でイメージした状況と、実際の状況はまったく違っていた。

私が彼なら、状況を認識させるために、こう説明する。
「そうです。スピードボートで怒涛のように流れ落ちる滝の真下につっこみます。なので、当然、全身ずぶ濡れになりますから、水着や着替えをお持ちください。眺めるのではなく、滝を全身で体感するんです。大迫力ですよ!」と。

<滝に突入するゴムボート>

そうとは知らず、でも濡れたときのためにタオルと着替えを持っていき正解だった。ライフジャケットを着て20人乗りのゴムボートに乗り、所持品を支給された厚いゴム袋に入れて口をしっかり閉じるように指示された時に、嫌な予感がした。
川の支流でゴムボートに乗ったときは、影に隠れていて見えなかった滝の群が、徐々に視界に入るに従って、川が渦を巻き出した。水かさが多く、岩場の近くでは大きな白波も立っている。
ボートは怯むことなくさらにスピードを増して、渦と波の上を跳ね上がっていく。
私は思わず目の前の取っ手を握り締めた。シートベルトがほしい。
いよいよ滝が見えてきた!という感動を味わう気持ちの余裕はない。大きな滝がいくつか見える中州近くに迫ったとき、ボートのエンジンが一旦停止した。
やっと一息、落ちついて滝を眺めることができる。目の前に広がる滝の群は壮大だ。水煙が様々な場所であがっている。
「これが、世界最大のイグアスの滝群かぁ」と感慨に浸ったその時、ガイドがスペイン語かポルトガル語で何か叫んだ。周囲の乗客たちが、それに応えて気勢をあげ、同時に再びボートのエンジンが唸った。

え?嘘でしょう!と思わず日本語でつぶやいた私。そして、ボートは水煙を立てている滝の一つに向かって突っ込んでいった。
何と果敢な操縦士だろう。乗客はもちろん、ずぶ濡れであるが、滝も川もかなりの水量である。慣れているとは言え、渦の方向や流れを的確に判断し、ガイドの指示に従って滝に突っ込むのは大変だろう。

激しい水音と水圧で全身ずぶ濡れになった若い乗客は大喜び。私は顔を伏せ、サングラスの前を流れ落ちる水を拭き取るのに必死だが、大きな口を開けて滝の水を飲もうとしている若者もいる。水は薄黄土色に濁っているのに。


↑最大の「悪魔の喉口」と言われる滝口に近づく遊歩道。水煙が見える。

滝への突入はそれで終わりではなかった。その後、ボートは方向を変え、さらに大きな滝に向かって2度!さすがに、私も3度目には覚悟が決まり、気持ちよく両手を広げ滝に打たれた。そして気づくと、大きなカッパを着たカメラマンが体を船首にくくり付けて立ち、狂乱の乗客に向かってビデオカメラを回していた。
誰が考えたのだろうか。無謀というか、破天荒というか。華厳の滝や白糸の滝が醸し出す「侘びの世界」とは別世界だ。そう、世界には様々な価値観、様々な観光がある。

<「悪魔の喉口」>

<落ちるのではなく、吸い込まれて行く>


↑ブラジル側からは、アルゼンチン側の悪魔の喉口までの遊歩道が見える

そうと知らずに参加したボートツアーだった。が、全身で体感した水の重さと勢いをオーバーラップしながら、その後の滝群を見て歩くことができた。
アルゼンチン側を歩くには1日必要だった。ブラジル側から道すがら、出国、入国の簡単な手続きを済ませ、アルゼンチン側の国立公園口に到着したのは10時頃。ドライバーと約束した公園口へ戻ったのは、約束の夕方6時ぎりぎりだった。

迫力満点、水量も規模も景観もすべてため息の連続だった。



翌日、ブラジル側から再び滝に臨んだ。ブラジル側は、滝に近づくアクセスが簡単で遊歩道も短め。半日あれば十分に楽しむことができる規模であるが、滝全体を俯瞰できるという意味で、ブラジル側からは、アルゼンチン側とは異なる趣のすばらしい景観に臨むことができる。どちらから先に見るのがいいかと問われても、簡単に比較できないそれぞれの良さがある。
単語力の貧困な私は、とにかく圧巻としか言いようがない。


↑ブラジル側から滝口に向かう遊歩道


↑ブラジル側の遊歩道の突端から「悪魔の喉口」方向を望む。
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3 コメント

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Unknown (uo)
2007-12-29 18:42:43
すごいですね~
迫力満点の文章に興奮しました!

1度この滝を体感してしまうと、
もうどんな滝を見ても、つい比べてしまう
忘れられないイグアスの滝ですね。
返信する
経験は? (ワイン)
2007-12-30 01:54:06
世界を歩いているuoさんは、イグアスの滝は体感されましたか。私は、世界には様々なツアーやツアープログラムがあるのだと、感心するばかりです。
uoさんの言うように、イグアスの滝を観た時は、これでもう他のどの滝も見る気になれないかもしれないと思ったのですが、不思議なことに、ボニートにあった小さな滝に、再び見入っていました。
滝は、その自然の風景の中で、大小の規模に関係なく独自の美しさ、壮大さをもっているものなんですね。
ただし、こんなスピードボート体験をすることはもうないとは思いますが・・・
返信する
Unknown (uo)
2007-12-30 16:16:15
はい、アルゼンチン側、ブラジル側両方から見て
その後、パラグアイに移動しました。

山の中にいて、滝を見つけるとやはり見入ってしまいます。
でも、イグアスは特別です。
1度目に焼きつくと忘れられない、そんな大自然の驚異的な存在です。
貧乏旅でしたので、残念ながらボートは体験していません。
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