「新編 辺境の物語 カッセルとシュロス」を第一巻から三巻まで掲載してきました。この続編は「シュロスの異邦人」として二巻分を掲載する予定です。ただいま、一回ごとの掲載分の区分けがうまくいかず、連載の再開に時間がかかっております。申し訳ありません。
その間に、小説の解説を書いてみました。
第一巻、前編 プロローグの場面は、ここは短い文章で、スピード感を出せるように書きました。読者の方が映像化できるようにも工夫したつもりです。カメラが失踪するレイチェルを追う、足が止まる、次に目の前の木に刺さった矢が映り、後ろを振り向く・・・といった感じです。ここで登場する山賊は後に第二巻でローズ騎士団を襲撃する役目があります。
物語の初めには人物の紹介をします。カッセル守備隊の隊員を紹介するときは、副隊長補佐のアリスが兵舎の廊下から見ているシーンとして描きました。アリスがダメな隊員ばかりだし、逃亡した隊員もいると嘆きます。逃亡したと思われているのはリーナで、実はシュロスの城砦に行っていました。そこへシャルロッテことロッティーが現れ、今度は監獄のシーンになって、正体不明の女が発見されることになります。これはエルダです。エピソードを書いて、何かそこで新しい事が起きる、なにかの進展があるようにしたいと思うのです。
月光軍団の隊員を紹介する場面は会議のシーンです。そこからナンリが城壁に上って眺めていると怪しい女を発見する。これはカッセル守備隊のリーナです。
出陣してからはずっと戦場の場面が続きます。あちこちで同時に起きていることを整理しながら書き分けるのが難しいところでした。
第二巻、中編はかなり工夫してみました。
冒頭の【フィデスの独白】は、話の流れからすればカッセルの城砦にある牢獄なのです。そう思わせておいて実はシュロスの城砦でしたというが私なりの工夫です。
第二巻は時間が前後し、場所も変わるので手際よくまとめるのが大変でした。たとえば、チュレスタの温泉でレイチェルたち三姉妹が山賊にローズ騎士団を襲撃するよう頼みますが、そのエピソードの結果はしばらく間を置き、【スミレとナンリ】まで出てきません。しかも、襲撃は回想シーンとして描かれるので、少し分かりにくかったかと思います。作者としては分かっていることでも、独りよがりになってしまうと読む人には伝わらないことがあります。ことにブログでは分割して掲載していたので、すごーく前のことなど忘れられてしまうのではないかと心配してました。
偵察員のミユウは、初めの構想にはなく後から書き加えた人物です。それが思いのほか活躍してくれて、シュロスの異邦人では主役級になりました。
ミユウがエルダと対決するところは会話劇として書きました。二人は敵同士なので、ややもすると相手に反発したり、反対意見のオンパレードになるところを、できるだけ同調するように会話を進めました。ここは、真山青果の「頼朝の死」を参照しました。
フィデスはここまで「独白」、すなわち一人称でしたが、シュロスの城砦に戻ってからは三人称になります。ここの書き分けはうまくいっているかどうか自信がありません。
最後の【フィデスの独白ー4】で、実は冒頭の部分はシュロスの城砦であったことが明らかになります。このことにつき、ある人から、冒頭とラストの間に挟まっている長い部分の出来事は、ほんの一瞬だったのではないかと指摘されました。作者の意図を深読みしていただき、喜んでおります。
第三巻、後編はまたしても戦場のシーンばかりになってしまいました。戦闘の場面より、お嬢様が敵陣に薬草鍋を持って行くところの方が書きやすくて、こちらも楽しんでおりました。読み返してみると戦闘の場面の下手なことが目立ちます。恥ずかしい。
マリアお嬢様が実は王女様であり、しかも、ギロチン好きだとわかります。ここでフィデスが、カッセルの城砦で、お嬢様の隣でマリアが人形の首を直していたことを思い出します。人形を大切にしていたのではなくハサミで切ってギロチンごっこをしていたのでした。このあと、第四巻でも、王女様のギロチン好きは遺憾なく発揮されます。
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