新編 辺境の物語 第二巻 カッセルとシュロス 中編 23話
第十三章【フィデスの独白ー4】
・・・そうです、私が監禁されているのはルーラント公国のカッセルではなく、バロンギア帝国シュロスの城砦にある牢獄なのです。
戦場で守備隊のお嬢様を見逃したことにより、同邦のローズ騎士団から裏切り者と決めつけられ、牢屋に入れられたのでした。私だけでなく、部下のナンリまでもが投獄されてしまいました。ナンリは身体に焼き印を押し当てられました。私と一緒に捕虜になっていたパテリアは鞭打ちの刑に遭いました。私は縄で縛られ宙吊りにされて地獄のような責苦を受けました。その上、東部州都の軍務部から来ていた監察官のスミレさんも痛め付けられたのです。
エルダさん・・・ああ、助けて・・・
うつらうつらしていました。痛みと絶望感で、ときどき意識が遠くなります。
気が付くとメイドが立っていました。
食事を運んできてくれたのでしょう。ありがたいことに、このメイドは何かとよくしてくれます。
メイドが耳元に顔を寄せました。
「フィデスさん、あなたのお味方です」
「はあ・・・」
メイドの顔には見覚えがあります。騎士団のローラに人間椅子にされていたメイドでした。そしてまた、カッセルで捕虜になっていた時、エルダさんに連れられて私の部屋にやってきたメイドでもあるのです。
どうしてシュロスにいるのでしょう。エルダさんから何かを託されて、わざわざ来てくれたのではないでしょうか。
「あなたは・・・確か、カッセルで・・・」
メイドが黙って頷き、唇に指を当てました。黙っていろと言うのです。
「メイドのミユウといいます」
「はあ・・・ミ・・・ユ」
「必ず助け出します」
カッセル守備隊のエルダさんのことが目に浮かびます。
エルダさん、エルダさん・・・
私はエルダさんが助けに来てくれるのを待っています。
・・・・・
<作者より>
新編 辺境の物語 カッセルとシュロス 第二巻を終わります。ここまでお読みくださり、まことにありがとうございました。
引き続き、第三巻もよろしくお願いします。
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