https://medalist-pr.com/special/interview2.html
米津さんが主題歌を担当されると聞いた時、つるまさんはどう思われましたか?
つるまいかだ
だいぶ昔の思い出話になってしまうんですけど、私は昔ボーカロイド楽曲にハマっていて、その時に初めてハチさんのことを知ったんです。初めて聴いたのは「Persona Alice」です。当時「週刊VOCALOIDランキング」というものがありまして……それをきっかけにハチさんのファンになりました。
米津玄師
非常に懐かしい話ですね。
思春期の頃、周りの人があまり知らない“自分だけのもの”を好きでいたいという思いがあって。ハチさんの楽曲を好きでいることが、自分の不安定なアイデンティティを形作るひとつの要素になってくれていたんです。 大人になった今も、当時の不安定な自分のことも大切に思っているし、その頃の感覚を忘れないためにも、米津さんの曲は新曲が出る度に欠かさず聴いていました。だから、アニメになるだけでも念願が叶った気持ちなのに、さらに米津さんが主題歌を歌ってくださるとなった時は、ちょっと現実の出来事だと信じられなかったですね。でも「いや、ここで喜ばないでどうするんだ」と、担当編集さんと「すごいよ、音楽界の金メダリストだよ!」って大はしゃぎしました。ハチさんのことを好きな人は星の数だけいて、あくまで私はその中の一人だったというだけなのですが、偶然とはいえすごく嬉しかったですし、本当に光栄なことだと思いました。
米津玄師
まさかそんな初期から聴いてくれていたとは露知らず、とても嬉しいです。
主題歌「BOW AND ARROW」の制作にあたり、米津さんは『メダリスト』のどの辺りから着想を得たのでしょうか?
米津玄師
主人公二人の関係性にすごく尊いものがあるなと、それが作品の第一印象でした。自分は成人男性ということも含めて、やっぱり司に感情移入するところが大きいというか。いのりとの対等な関係は前提としてありつつも、年齢が離れているので、自分だったらあの年代の女の子と大人としてどうやって向き合うだろうかと考えたり、想像したりしていたんですよね。自分は司ほど実直な人間ではないので、こんなに巧くはできないだろうなと。そういうところから、作品のためにも自分のためにも1曲作れるんじゃないかと思いました。
「BOW AND ARROW」というタイトルの由来は?
米津玄師
モチーフが最初から決まっていたわけじゃなくて、アニメ尺の曲を作り終わって、タイトルを決めなきゃいけないという話になり、どうしようかなと思っていたんですよね。ただ“押し出す者”と“押し出される者”という関係性の象徴的なものとして「手を放す」っていう言葉だけがあって、そこにどう決着つければいいんだろうと。“押し出す者”と“押し出される者”なら戦闘機のカタパルトとか、ハンマー投げとか、そういうことをうろうろと考えて、最終的に弓と矢、「BOW AND ARROW」っていうことになりました。今になって弓と矢にしておいてよかったと思います。
つるまさんは「BOW AND ARROW」をお聴きになって、いかがでしたか?
つるまいかだ
一聴して米津さんだ! と確信できる唯一無二のメロディラインに、紛れもなく『メダリスト』を表現した歌詞が乗っていて、感動が大きすぎて噛み締めるのに時間がかかりました(笑)。米津さんも仰っていた「手を放す」は、私も一番刺さったフレーズです。手を握ることって、子供の心の安全基地を形成するためには絶対に必要な過程ですけど、個人として生きる強さを獲得するためには、冒険や旅立ちも必要で。そうした“送り出す”側と“送り出される”側の敬愛を『メダリスト』では描きたいなと思っていたので、それを「手を放す」という温かくて強いフレーズで表現できるんだと、すごく感動して心に刻まれました。そうか、あれは「手を放す」って言うんだと。
米津玄師
ありがたいことです。やっぱり主題歌というものを作る時って、自分は部外者なので、これで大丈夫かなみたいな不安は毎回ありますから。だから、そういう言葉を聞けると安心できるというか、すごく嬉しいです。
つるまいかだ
米津さんしか作ることができない特別に調合された絵の具で『メダリスト』が熱く彩られたみたいな、作品に新たな名前をつけてもらったみたいな、そういう気持ちになりました。私からは出てこない言葉で、この世界を新しく語られているような……。「ソワレ」とか絶対に出てこないです。カッコよすぎると思って、すごく嬉しかったです。「BOW AND ARROW」っていうタイトル、私は第1話の映像が上がった時のエンディングクレジットで初めて知ったんですけど、観た瞬間に「BOW AND ARROW」……そうか「弓と矢」なんだって感動しました。