やって来ました、月一チェーホフ。
今回は「三年」を読みました。
この作品は1895年に発表されたものです。
風采の上がらないお金持ちの主人公が、ある若い女性に求婚し、女性の方は愛はないけれど、主人公の財力とモスクワという都会生活に憧れて結婚します。
こういう話って悲劇や大どんでん返しがあるように見えますが、さすが中期チェーホフ作品、またまた特に波乱もなく終わっていくのです。三年の間に子どもができたり、亡くなったりでするのですが、そして普通ならそこが、大きく扱われるのですが、それに関して触れているのはなんと1、2行程度です。
不貞も特になく、ただただ人物たちの日常がリアルに描かれているだけです。
またまた、ここで高田映介講師の解説であります。
チェーホフはどうやら、トルストイの「クロイツェル ソナタ」を意識しているらしいのです。
この作品は、主人公の妻が、お金持ちで美男子、パリっ子、音楽家プレイボーイと不貞をし、主人公はその不貞相手を殺してしまうのですが、
トルストイの主張としては、妻に性愛だけを求めていたがゆえに殺人という罪を犯す主人公を描いた、禁欲至上主義のようです。
このわかりやすい構図を敢えて避けたのが、「三年」という作品なのだとか。そうです。淡々と話は進み、なにも起こらないのですね。ここが中期チェーホフの真骨頂。
ただ、先生の解説がないとリアルな視点が独特な作品だなというくらいでした。
視点が独特というのは、ここはこの人物の視点のほうがもっと迫真的なのに別の人物視点なので穏やかな、悪くいうと希薄な感じがするのですね。それでもひきこまれていく作品なのです。不思議な感じがしました。
来月はやや長めの「曠野」を読みます。