記録的な寒波から数日経った頃。
やけに明るい朝、障子を開けるとそこは雪景色だった。
寒いわけだ…。
隣で眠るこいちゃんに「雪だよ!」と声をかけてみたが、そこは高校三年生。
そんなことで「え!?本当!?」
なんて飛び起きたりはしない。
「うーん」と唸ってから、まるで園児でもあしらうかのように「そっかぁ」と言った。
もちろん布団からは出てこない。
高校三年生はもうほとんど学校には行かない。
この日も心ゆくまで惰眠を貪るつもりであろう。
わたしは仕方なく布団を出て1階に降りて行った。
寒い寒いと身支度を済ませ、家を出ると、まだチラホラと雪が舞い散っていた。
雪は音を吸収するのだろうか?
いつもよりさらに静かに感じる朝の道を歩いてバス停に向かう。
雪を見るだけでテンションが上がり、寒さも忘れて家を出たのは何十年前のことか。
すでに娘すらそんな時期を過ぎていると言うのに、そんなふうに懐かしく思い出した。
どんどん感動は薄れ、そのうち何も感じなくなってしまうのだろうか。
溶けかかった雪が足元でベチャベチャと音を立てるのを煩わしく思いながら、会社に向かった冬の朝である。