こいちゃんが家を出て、一日中一緒に過ごしていたさくらちゃんはどんな気持ちでいるのか。
出て行った当のさくらちゃんははじめのうちこそこいちゃんの寝ていたベッドを名残惜しそうに見つめたりしていたが、最近はすっかり忘れてい待ったような…。
「毎日さくらちゃんの写真を送ってね」と言ってくるこいちゃんだけどなかなか大変。
バタバタしていると忘れてしまうし、背景があまりに汚いと(どんなだ)カメラを向ける気にもならない。
忘れてしまって放置していたらいっくんからお叱りを受けた。
「お姉ちゃんにちゃんと写真送ってる?毎日送ってあげなよ」
どうやら二人は水面下で連絡を取りつつ、私が写真を送らなかったことをぼやいていたこいちゃんを可哀想だと思ったらしい。
なんだかんだ言いながら離れているほうが仲の良い二人…。
さて、最近ではカメラを向けるとじっとこちらを見ることが増えてきたさくらちゃん。
もしかして、この動作をされると動いてはいけない、などと学習したのか?
雰囲気でじっとしておく事が得策だと察知したのか?
そんなことを考えながらさくらちゃんがどんな気持ちでいるのかと考えたりする。
表情筋のないさくらちゃんが悲しんでいるのか喜んでいるかはわからない。
こいちゃんの事を恋しくて泣いていたとしても私にはわからない。
そんな風にさくらちゃんの心情を推察しつつ、勝手にさくらちゃんを可哀想に思い、悲しんだりする私。
当のさくらちゃんは、すっかりこいちゃんの事も忘れて、晩御飯の事や散歩の事を考えてあくびをしているかもしれないというのに…。
人間は自分の見たいように、都合のいいように他者や周りを見ると言うから、
「こいちゃんをいつまでも思い出して寂しがる健気な犬」像を求めているのかもしれない。
どう頑張ってもさくらちゃんの気持ちはさくらちゃんにしかわからないわけだが、少しでも穏やかに幸せに過ごしてくれることを願うのみである。