台風一家

自宅の取り壊しが始まる

家の事を書くと、どうしても情けない内容になってしまうのだが書いておこうと思う…。

とうとう取り壊し初日がやってきた。
せっかくだから(?)と有給をとり、こいちゃんと二人で現場を見に来た私。
到着するとすでに大きなトラックがショベルカーを運んできたところのようだった。

現場の方たちに軽く挨拶をして撮影させてもらう事に。

ショベルカーの先に取り付けられたのは、物を挟むことが出来るような機械。
これが何度も行き来して庭の木や、石を動かしてゆく。
まるで鳥が餌をついばむように、何度も木を持ち上げたり落としたりしながら土から放していく様子が見える。

そのうち前に進みながら、大きな音を立てて自宅の壁や屋根を破壊し始めた。
あっけないもので、触るたびにそれらはガラガラと音を立てて崩れていく。
少しづつ、少しづつ崩しながら瓦礫をどかしてゆく繰り返しである。

今まで私たちの生活を守ってくれてありがとう。
壊してしまって本当にごめんね。
やっぱり泣けてきて携帯を持つ手が震えてしまう…のだが、こいちゃんはあっけらかんとしたもので「新しい家になるんだからいーじゃん。」と気丈にも私を励ましてくれていた。(のだと思う)
「だって、ここで建て替えてなかったら、きっともう一生この家に住んでたと思うよ?それで歳とって余力もなくなった頃に地震が来て死ぬくらいなら、今命が助かったと思えばいいじゃない~。」
勇気出るわ…固執しがちな私と正反対のこいちゃん、やっぱり好き。

人の手ではとても持ち上がらないと思う大きな石や、柱がどんどん動かされていくのは見ていて壮観。
また、プロの操縦による繊細な動きは何時間でも見ていられそうである。

よいしょ。

本当に、器用なもんだ。

ほんの一部しか露出したところを見たことがなかった大きな石も、ごろりと置かれている。
この立派な石も、先住さんのこだわりの庭の演出に一役買っていたはずである。
石にも、ありがとう…。

とうとう応接間の上部はがら空きになってしまった。
結局、こいちゃんと1時間以上見学させてもらい、帰宅した。
こいちゃん、オンライン授業が迫っていたと言うことで、炎天下で汗をかいて作業現場を見学したその足で、大急ぎで帰宅。
へとへとである…。

そして翌日。
こいちゃんはすぐに飽きてしまってついて来てくれないので一人で経過を見に行く。
もうこんなになくなっている。

さすがに涙も枯れてきたが、見慣れた壁が崩れた様を見るのはやはり苦しい。

しかし…この雑巾垂れさがったみたいな状態で、この日の作業は終了…かな?
なんかちょっと派手で面白いんだけど…。
こうやって写真に撮っているけれど、いつか記憶の中からも消えちゃうんだな…。
相変わらず苦しい気持ちを胸に帰宅した。
すると、思いがけずここにも苦しんでるやつがいた…。

え、戻れないの?
玄関先に置いたプラケースの中でひっくり返ったままの亀さま。
スペースの関係で小さなプラケースの中に住まわせたのが相当ストレスだったのか、前日にいっくんにゴシゴシ洗われたのが屈辱だったのか餌を食べなくなった亀さまなのだ。
これはヤバイと言うことで、仕方なく狭いプラケースに以前使用していた隠れ家の岩を入れてやることに。
わざわざ伴侶が取り壊し中の家から回収してくれた。(裏庭に避難させていたのだ)
後日何とか餌を食べ始めて胸をなでおろした。
皆新しい環境に体調くずしまくり。
仮住まいに移ったさくらちゃんもちょっと熱中症気味で心配なのだ。

さて、また翌日。
大きな柱が投げ出されている。
こうしてみるとどこの柱だったのか思い出せない。

思い出つまった階段の手すりも今はなく…。

もう、本当に、何があっても引き返せない、戻ってこない…。
往生際が悪くめそめそする私である。

瓦礫が降り注いだ階段は、もう上る事も出来ない。
こいちゃんといっくんがいなくなるわけじゃないのに。
何でこんなに悲しいのだろう。
馬鹿だなぁ…。

さらに翌日。

ものすごく大きな柱で、こんなものが使われていた箇所を思い出せない。
もしかして天井裏の中…だったりするのだろうか?
それを思い出そうと考え始めるとふと更に悲しい事に気が付いてしまった。
今は頭の中で部屋の中を歩き回るように思い出せるが、数年経てばそれも出来なくなるのだろう…と。

おじいちゃん(父)が直してくれたトイレの扉…またまた涙腺崩壊である。
せっかく新しい材料を買って来て一生懸命直してくれたのに、ごめんねお父さん。
「そんなところ、直さなくてもいいのに」なんて冷たく言い放っていたような気がする。
トイレのドアを持って帰りたい衝動にかられる。
まだまだ住むと思ったから、色んな所を直してくれたんだよね?
私達の暮らしが少しでも良いものになるように、色々してくれていたんだよね?

おじいちゃんがこれを直してくれたのはほんの数か月前なのに、どうして私は…。
穴が開いたトイレのドアも、滑りの悪かったキッチンのドアも、畳の下だって隙間風を防ぐために保温材を貼りなおしてくれたし、ウッドデッキも作ってくれた。
私も小さかったいっくんが階段の手すりを折ってしまった時は一生懸命ボンドでくっつけた。
壁だって伴侶と一生懸命貼ったし、トイレの床もクッションフロアにして住みやすくなる工夫を沢山した。
色んなものを皆で直しながら苦労して作ったりしながら進んできたのに、どうしてすべてを放り出してしまったのだろう。

馬鹿な私は、後悔しながら葛藤を抱えたままで新しい家が建つのを待つしかない。
辛い気持ちになって一人で泣いてしまうのは、まさに自業自得なのだろう。
思い出との別れがこんなにつらいとは思わなかった。
こいちゃんやいっくん、おじいちゃんたちが居なくなった訳ではないのに…と何度も考える。
いつまでも立ち止まる私に伴侶は「一生懸命手をかけた家だから辛いんだよね」と言う。
そうなのかもしれない、辛い!本当に悲しい。
誰か、この気持ちを楽にしてくれるような魔法の言葉を知っている人はいないだろうか…。

さらに数日経つと、一番南にあるお風呂場まで作業が及んでいた。
あっという間に解体が終わっていくのに、私の気持ちは中々前に進めず、これを書きながら泣いている。
我ながら馬鹿だと思う。
想像力の欠如した自分への罰なのかもしれない。
父にも申し訳なくて、悲しい。
 
家を建てることを一人で決定したわけではないとは言え、やはり気持ちは中々上向きになってくれない毎日。
仮住まいに帰ると落ち込み、取り壊される自宅を見ては泣く…。
自問自答を繰り返しつつ毎日を過ごしているのだった。
 

コメント一覧

台風一家
ta29lifeさま
ありがとうございます
家族の前であまりにいつまでもめそめそ出来ないので我慢していますが、こうしてコメント頂くととても嬉しく、また泣いてしまいそうです
凄く慰められます
るぅさん優しいお言葉をくださって本当にありがとうございます。
感謝の気持ちを忘れないように、ちゃんと覚えておきたいと思います
それがきっとお家の供養になるかもしれないですね
ありがとうございます
ta29life
🥲
私も泣いてしまった😢
思い出がたくさんあるからね…
旦那様そんな言葉をかけてくれるなんて優しいですね(*´꒳`*)
一生忘れないとゆぅ言葉と感謝の気持ちが伝わってるはずだもの❣
そして思い出として残るから😊
写真もいっぱい撮ってもらって
あぁ〜このご家族に住んでもらえて良かったぁ٩(*´꒳ `*)۶
ってお家さんが言っているに違いないのだ(๑•ㅂ•)و✧
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