若かったあ、とっても。何も怖いモノはなく、ほぼ自由奔放に生きていた。もう40年以上も前、と言っても江戸時代ではない、念のため。
20代中盤。ある女性と知り合った。何歳だったのかなあ、多分30代前半。結婚していた、つまり人妻。当時僕が住んでいた町でスナックを開店し、僕は気に入って常連になった。素人の美人ママさんは人気があり、店はいつも賑わっていた。たまに亭主が来た。そのうち、ママさんから愚痴を聞かされるようになるが、聞くまでもなく、ロクでもない亭主だった。僕たち客は全員知ってた。なにせ、目の前で見せられるのだから。僕は話しを聞いて、励まして、気付かない内に惹かれて、その内、閉店後も居るようになって、ある夜、ドライブに行った、海に。飲酒運転はノートラブルだったし、夜の海はなかなか素敵だった。そして、キスした。その瞬間から二人の関係は変わった。それを意識し、戸惑い、躊躇う瞬間にアクシデント。車のタイヤが砂にとられスタックしそうになり、必死の思いで脱出したが、車内が砂まみれになり、結局取りきれなかった。後日、それがバレた、亭主に。あの夏の夜の海は穏やかで波の調べを奏で、あの人は綺麗で脆くて魅力的だった。僕は、意識していたかどうか分からないまま、一線を超えた。あの時の音も匂いも感触も、そして喘ぎのような吐息も覚えている。
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