美佐が入院して2か月余り過ぎた。
街は新緑が美しくケヤキやイチョウの樹を覆い、歩道に涼しい影を落としていた。
ゴールデンウィークも間近のある日、麻衣は何時ものように美佐のいる病院を訪れた。
部屋に美佐がいないのでリハビリ室を覗いてみた。
何人かの患者がいて、平行棒の間をそろりそろりと歩いていたり、滑車に付いた紐を引っ張っていたり、肩に赤い光の出る電気を当ててもらっていたり、脚に器具を装着してもらっている人達がいた。
美佐はと見ると、椅子に掛けて白衣を着た男性に右側の肩や腕をマッサージしてもらっていた。
麻衣は部屋へ戻り、洗濯物を整理しながらリハビリが終わるのを待った。
暫くすると歩行器を押しながら、美佐が一人で部屋へ戻ってきた。
「お母さん、随分良くなったわね。よく頑張ったものね。」
「ええ、凄い回復力でしょう。もうすぐ一人で歩けそうよ。」
美佐はまだ少しぎこちない口調で、自慢げに笑顔で答えた。
「今、リハビリ室でマッサージをしてくれていた人、いつもの女性と違うわね。」
「ああ、あの方は理学療法士さんで、あの方にも何時もお世話になっているのよ。」
麻衣の問に美佐は答えた。
「へえ、理学療法士さんね。」
この職業は以前から聞いたことがあった。
「あのリハビリ室にもいろんな資格を持った人がいるのね。
去年お婆ちゃんのお見舞いに、お母さんと老人ホームへ行ったとき、張り絵や折り紙を教えていた人がいたでしょう。
あの人も作業療法士さんなんだって、この前伯父さんが言ってたわ。」
麻衣はだんだんリハビリに関わる人達に興味を持ち始めた。
美佐の汚れた衣類を入れた紙袋を持って、麻衣はエレベータの前で扉の開くのを待っていた。
「麻衣じゃないか。」
突然背後から声がした。
振り向くと高校の同級生克実が、ポロシャツの普段着姿で立っていた。
「どうしたの。こんな所で。」
と驚いて訊ねると、
「麻衣こそどうして、ここにいるんだ。」
エレベーターの扉が開いたので中に乗り、1階のロビーの長椅子に二人は掛けた。
麻衣が母の病気の顛末を話した。
克実の方は、彼の母が家の階段を踏み外し、右足を骨折して昨日入院したとのことだった。
「明日は金曜日だし、もう一日休暇を取っているんだ。
明日、麻衣の仕事が終わったら会わないか?」
翌日、仕事を終えた麻衣は約束の喫茶店へ向かった。
街は新緑が美しくケヤキやイチョウの樹を覆い、歩道に涼しい影を落としていた。
ゴールデンウィークも間近のある日、麻衣は何時ものように美佐のいる病院を訪れた。
部屋に美佐がいないのでリハビリ室を覗いてみた。
何人かの患者がいて、平行棒の間をそろりそろりと歩いていたり、滑車に付いた紐を引っ張っていたり、肩に赤い光の出る電気を当ててもらっていたり、脚に器具を装着してもらっている人達がいた。
美佐はと見ると、椅子に掛けて白衣を着た男性に右側の肩や腕をマッサージしてもらっていた。
麻衣は部屋へ戻り、洗濯物を整理しながらリハビリが終わるのを待った。
暫くすると歩行器を押しながら、美佐が一人で部屋へ戻ってきた。
「お母さん、随分良くなったわね。よく頑張ったものね。」
「ええ、凄い回復力でしょう。もうすぐ一人で歩けそうよ。」
美佐はまだ少しぎこちない口調で、自慢げに笑顔で答えた。
「今、リハビリ室でマッサージをしてくれていた人、いつもの女性と違うわね。」
「ああ、あの方は理学療法士さんで、あの方にも何時もお世話になっているのよ。」
麻衣の問に美佐は答えた。
「へえ、理学療法士さんね。」
この職業は以前から聞いたことがあった。
「あのリハビリ室にもいろんな資格を持った人がいるのね。
去年お婆ちゃんのお見舞いに、お母さんと老人ホームへ行ったとき、張り絵や折り紙を教えていた人がいたでしょう。
あの人も作業療法士さんなんだって、この前伯父さんが言ってたわ。」
麻衣はだんだんリハビリに関わる人達に興味を持ち始めた。
美佐の汚れた衣類を入れた紙袋を持って、麻衣はエレベータの前で扉の開くのを待っていた。
「麻衣じゃないか。」
突然背後から声がした。
振り向くと高校の同級生克実が、ポロシャツの普段着姿で立っていた。
「どうしたの。こんな所で。」
と驚いて訊ねると、
「麻衣こそどうして、ここにいるんだ。」
エレベーターの扉が開いたので中に乗り、1階のロビーの長椅子に二人は掛けた。
麻衣が母の病気の顛末を話した。
克実の方は、彼の母が家の階段を踏み外し、右足を骨折して昨日入院したとのことだった。
「明日は金曜日だし、もう一日休暇を取っているんだ。
明日、麻衣の仕事が終わったら会わないか?」
翌日、仕事を終えた麻衣は約束の喫茶店へ向かった。