京都御苑内にある宮内庁京都事務所北側の駐車場ではユスラウメが咲いていました。咲いていましたというよりは、すでに散り始めていたのですが、まだまだ見頃ではありました。
ユスラウメは中国原産のバラ科サクラ属に分類される樹木で、学名は「Cerasus tomentosa」です。漢字では「山桜桃梅」あるいは「桜桃」や「梅桃」と書き、桜や桃や梅のオンパレードの表記になります。ユスラウメはサクラが咲き始める頃にウメに似た花を咲かせ、梅雨の初め頃に真っ赤で小さな果実をつけます。日本では江戸時代にはすでに栽培されていて、元々は「桜桃」と呼ばれていたのが、明治時代にサクランボ(セイヨウミザクラ)が導入された際に混同を防ぐため「朱桃(ユスラウメ)」と呼ばれるようになったそうです。
さて、このユスラウメに似た樹木にニワウメ(庭梅)がありますが、こちらは志賀越道近くの白川疏水沿いで咲き始めていました。
こちらも中国原産のバラ科サクラ属の樹木で、中国原産ですが学名は「Cerasus japonica」で「日本の桜」という意味になります。ニワウメも梅雨の頃に赤い果実をつけ食用になり、果実に含まれる種子を漢方では「郁李子」と呼んで「杏仁」などとともに薬用にします。
では、このよく似たユスラウメとニワウメの違いを見分けるポイントはあるのでしょうか。花が咲いている時期に見分けるポイントは「葉」にあります。ユスラウメの葉は表面が葉脈に沿ってでこぼこしているように見えます。
それに対し、ニワウメの葉はつるっとした感じです。
さらに一番のポイントは、ユスラウメの若い葉の裏は産毛のような柔毛で覆われている点でしょうか。学名の種小名「tomentosa」は「毛深い」という意味合いのラテン語で、この様子からつけられたのだと思われます。
あまりよい写真ではありませんが、ニワウメの葉の裏には柔毛はありません。
全体的な区別としては、樹形はユスラウメが開帳性であるのに対してニワウメは株立ち状になりやすく、樹高はユスラウメが3メートルになるのに対してニワウメは1.8メートル程度といった点がポイントになるでしょうか。
花が咲いているこの時期にどちらか迷われたときは、葉をひっくり返して裏を見れば判断がつくと思います。なお、ニワウメの変種で八重咲きの花を咲かせる品種はニワザクラ(庭桜)と呼ばれます。八重咲きであればニワザクラと判断されて間違いはないと思います。