毎年、荒神橋近くの鴨川河川敷に自生しているヤブカンゾウ(藪萱草)の花を楽しみにしているのですが、今年は蕾は大きくなってきてはいるもののまだ咲いておらず、今か今かと楽しみに待っていたら、今月初めに本満寺の境内で咲いているのを見つけてしまいました。
境内の参道沿いに植えられたものは咲き終わりに近い状態で、同じく境内にある駐車場横の花壇に植えられた花が二輪、咲いていました。
およそ1か月前の先月初旬に、金戒光明寺の塔頭のひとつである西雲院の花壇で園芸種のヘメロカリスが咲いているのを見つけましたが、個人的にはヤブカンゾウ等の原種の花のほうに魅せられてしまいます。原種と言っても人が栽培した時点で原種と言えるのかどうか怪しいと言ってしまうとそのとおりなのですが……
こちらは昨年の6月に鞠小路通で見つけたヘメロカリス。同じ色で花弁のかたちも似ているようですが、同じ品種かどうか私には判別できません。
ヤブカンゾウは在来種扱いですが、本来は中国が原産で史前帰化植物だということ。いま園芸品種として色とりどりの花を楽しませてくれるヘメロカリスは、16世紀後半に中国からヨーロッパに持ち込まれ、20世紀中頃にアメリカでの改良が大きく花開き、さまざまな園芸種が作出されたというのがおおまかなヘメロカリスの園芸史。
たしかに園芸種は華やかできれいと思うのですが、原種系の清楚な咲き姿のほうが、花を見ていると憂いを忘れるという言い伝えから名付けられたワスレグサ(忘憂草)にふさわしいような気がします。この数年、さまざまなことが立て続けに起こり、花を見ただけでは取り去ることができないほどの憂いが溜まりに溜まっているかもしれません。でも、花を見て少しでも心を落ち着かせ、明後日の夜には天に瞬く星空を眺められますように。