京都園芸倶楽部の元ブログ管理人の書笈

京都園芸倶楽部のブログとして2022年11月までの8年間、植物にまつわることを綴った記事を納めた書笈。

一年ぶりに見つけた……これも年に一度の邂逅?

2022-07-07 18:09:44 | 歳時記・文化・芸術



昨日の早朝のことですが、高野川河川敷の川縁におそらく実生で勝手に生えたネムノキ(合歓木)の葉の上に、一匹(昆虫学に則れば一頭がただしい数え方ですが)アオドウガネ(青銅鉦)がじっとしていました。翌日(つまり、今日)が七夕で、夜に葉が閉じる様子を「合い歓ぶ」という意味の漢名を持つネムノキに広い意味でコガネムシの仲間がいるのは縁起がよいことだろうかと思いながら、しばし眺めていました。一向に動かないのは前日までの雨天で体が冷えているからでしょうか?



同属の近縁種に褐色のドウガネブイブイ(銅鉦蚉蚉)がおり、この写真ではわかりにくいのですが、アオドウガネとともに、ほぼ同じ大きさのカナブン(金蚉)より丸みを帯びた体つきをしています。前翅の間にある三角形の小楯板や頭部もカナブンが角張っているのに対し、アオドウガネやドウガネブイブイは角が張らずに丸みを帯びています。フォントで譬えれば、カナブンがゴシック体でアオドウガネ等が丸ゴシック体でしょうか。

それほど珍しい昆虫でもないのですが、前回見たのがちょうど一年ほど前の今頃だったことを思い出しました。まるで七夕の織姫と彦星のようだなあと独りごちながら思わず笑みがこぼれてしまいました。

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さて、ちょっとだけ脱線。以前から気になっていたドウガネブイブイの『ブイブイ』という名称ですが、漢字で書くと前述のように『蚉蚉』だそうです。この蚉とはカ(蚊)のことで、蚊と同義の漢字です。蚊という漢字は形声文字であり「文」の音を借りて羽音を表したものですが、この『ブイブイ』は羽音を表現するために『蚉』という字を借りただけなのでしょう。カナブンの『ブン』も同じだそうですね。

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閑話休題。話を元に戻すと、七夕の前日に虫との一年ぶりの邂逅でふと思い立ち、笹は持ち合わせていませんが、今までやってみようと思いながらできずじまいだったカジノキの葉を短冊の代わりにして七夕を楽しんでみようと、思いつきにワクワクしながらカジノキが生えている疏水分線まで足を伸ばし、疏水に沿って続く白川疏水通に実生で勝手に生えていたカジノキの葉を3枚だけ持ち帰りました。

カジノキは古代から神木として尊ばれ、古来は笹ではなくカジノキの枝や葉が用いられたそうです。深く切れ込みの入った葉から切れ込みの入らない葉まで、そのかたちは千差万別です。



七夕の起源は、日本古来の年中行事である『棚機(たなばた)』や中国から伝わった『乞巧奠(きこうでん/きっこうでん)』に由来していると考えられていますが、平安時代の宮中行事として、サトイモ(里芋)の葉についた夜露を天の川に見立て、そのしずくをたらして磨った墨で、神木であるカジノキの葉7枚に和歌を書きつけ、星に手向ける風習があったそうです。

帰宅後に、硯で墨を磨って……ではなく、無粋ながら筆ペンで書いてみました。和歌を詠めるほどの才能はないので、一枚は万葉集に収載されている山上憶良が詠んだとされる七夕にまつわる歌を原文で書いてみました。


(冒頭の写真を再掲)


悪筆であることはご容赦ください。葉から受ける印象だと筆を走らせても墨を弾いてしまいそうに感じますが、意外や意外、しっかりと墨が乗ります。コピー用紙等と比べても書きやすいように感じます。五色の短冊もよいですが、カジノキの葉を短冊代わりにしてみるのも楽しいですよ。

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さて、あらためて、今日は五節供(五節句)のひとつである『七夕』です。本来は旧暦で祝うとよいのでしょうが、今年は奇しくも梅雨が明けました。今日も不安定な空模様の地域もあるそうですが、今晩は星空が眺められるでしょうか。星空と書きましたが、童謡「たなばたさま」の歌詞にある『きんぎんすなご(金銀砂子/沙子)』というような満天に散りばめられた星が瞬く、こちらも歌詞にある『おほしさま、きらきら』な夜空を見るのは都市部だと夢のまた夢と言えるかもしれません。もちろん文明の利器で生活が大変潤っている部分もあるのですが、ふと本当の豊かさってなんだろうと思ってしまいます。

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