今日9月9日は五節供(五節句)のひとつ「重陽」です。これは、陰陽五行思想で奇数は「陽」であり、一番大きい陽の数である「9」が2つ並ぶ、つまり最大の陽の数が重なるということで9月9日を「重陽」と呼びます。この日は、菊酒や菊の被綿(きせわた)を使い、菊の薬効により健康を祈願することから「菊の節句」とも呼ばれます。
由来からすると重陽が五節供では一番吉兆であると思えるのにあまり知られていない(歳時として話題にならない)のは、本来は旧暦(今年だと10月25日になります)で行われるので、新暦ではちょっと季節感に乏しいからかもしれませんね。
また、江戸時代には庶民の間でこの日に「後の雛祭り」として雛人形を飾り、長寿の願いを込めた「大人の雛祭り」を行う風習もありました。おそらく「上巳」つまり「桃の節句」で飾った雛人形を、半年後にあたる重陽の日に虫干しを兼ねて飾り、今度は大人の女性の幸せを願って菊酒をいただきながら健康長寿を祝ったのだと思います。でも、このように大人中心の風習で子供が関わっていない節句であったことが、ひょっとしたら現在あまり話題にならない理由のひとつなのかもしれませんね。
樋受け鉢に漂う菊の花(過去記事より再掲。2019年11月撮影)