今日は雑節のひとつ『二百二十日』です。立春からから数えて220日目、つまり立春から219日後にあたりますが、台風等による雨や風の影響を受けやすい日とされます。
近年では大型台風襲来の特異日として9月は17日と26日が知られていますが、古くから二百二十日と同様に、同じく立春から数えて210日目になる『二百十日』や旧暦8月の朔日(ついたち)である『八朔』も台風に見舞われやすい日とされ、農家にとっては三大厄日とされています。
今年の『二百十日』は8月31日でしたが、ちょうど沖縄や九州が台風9号の影響を受け、ほぼ同じコースをたどった台風10号も先週末から今週初めにかけて沖縄や九州が影響を受けたことを考えると、あながち無視できない日だといえそうです。
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さて、農家の方にとっては作物の出来具合いと天候の行方が気になる時期です。京都市内は中心部で田畑を見かけることはありませんが、たとえば右京区であれば西ノ京のあたりだったり北区の上賀茂や左京区の高野あたりでは住宅街や商業地域の裏手に突如として田んぼや畑が姿を表すことがあります。本来の意味とは少しずれますが、まさに「京に田舎あり」といった風情です。
あえて伏せますが、芸術系の大学名で裁判沙汰になった大学に近い白川通北大路あたりも、小洒落たお店があるかと思えばその隣に田んぼや畑が立ち並んでいるという地域です。8月下旬から9月初旬にかけて、その付近の田んぼでは黄金色に色づき始めた稲穂がこうべを垂れ始めていました。そしてその水田の畦地を見てみると、いろいろな野草が、というよりお百姓さんにとっては水田雑草が生え、花を咲かせていました。
まずはチョウジタデ(丁字蓼)の花。
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タデという名がついていながらタデ科ではなくアカバナ科に属する一年草ですが、花後のかたちが香辛料のチョウジ(丁字)に似ていて葉がタデのようであることからチョウジタデと呼ばれています。在来種とされていますが稲作とともにやってきた史前帰化植物とも言われています。花は腋生して、花弁は4枚もしくは5枚の小さな花を咲かせます。
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また、抜いたときの根が太く直根であることから、田んぼの牛蒡という意味でタゴボウ(田牛蒡)という別名で呼ばれることもあります。この別名から、本種の近縁種で熱帯アメリカ原産の帰化植物にヒレタゴボウ(鰭田牛蒡)という和名がつけられています。チョウジタデに似ていて葉の基部に鰭のような翼がついていることからの命名です。
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ヒレタゴボウの花(賀茂川河川敷にて2018年9月に撮影。過去記事より再掲)
このチョウジタデと競うように咲いていたのがアメリカタカサブロウ(亜米利加高三郎)の花です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/41/da/e09f64d0e8d320dc42875dc09ac6fb1d.jpg)
残念ながら在来種のタカサブロウではないのですが、名前のとおり熱帯アメリカが原産地で、タカサブロウと比較すると細くて長い葉に明瞭な鋸歯が入るといった違いがあるようです。ただ葉の鋸歯は区別がつきにくいこともあり、一番明確な相違点は種子に翼があるかどうかでしょう。在来種のタカサブロウの種子には縁が少しへこんだようになった翼があります。
なお、タカサブロウという和名の由来は、高三郎という人がこの草の茎を使って文字を書いたという説と、古名のタタラビソウが転訛したものという説があり、はっきりしないそうです。一つ目の説はタカサブロウの茎を折ると出てくる黒い汁で文字が書けるということに由来し、このことからボクトソウ(墨斗草)とも呼ばれ、古名のタタラビソウは「目のただれを直す薬草」という意味になるようです。
そして、これらにまぎれるように咲いていた小さな花がアゼナ(畦菜)です。
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こちらも湿り気のある場所や湿地で育つアゼナ科アゼナ属の一年草で、同科ですがハナウリクサ属(トレニア属)で道端などの乾地で生育するウリクサ(瓜草)と花はそっくりです。
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ウリクサ(京都御苑の縣井近くで2020年8月に撮影)
お百姓さんにとっては厄介な雑草かもしれませんが、この時期に水田の畦地を見てみるといろいろな野草が花を咲かせているのを見つけることができます。でも、すでに黄金色に穂が色づき、こうべを垂れ始めている水田の畦地でごそごそしていると「瓜田の履」にもなりかねませんので、この点だけはご注意を。