間之町口から京都御苑に入るとすぐ右側に九条邸跡である拾翠亭と九条池が、左に進むと閑院宮邸跡の入り口がありますが、近年の苑内のバリアフリー化に合わせて間之町口周辺が日本庭園風に改良され、その一隅でノリウツギ(糊空木)の花が咲いていました。
和紙を漉く際に、コウゾ(楮)などの繊維を水の中で均一に分散させて絡みやすくする役割の「ネリ」がこの樹木の樹皮から取れることが和名の由来ですが、こちらはノリウツギから改良された園芸種でしょうから流通名でもあるピラミッドアジサイ(金字塔紫陽花)という名前で呼ぶほうがふさわしいかな?
花序のかたちがカシワバアジサイ(柏葉紫陽花)のように見え、装飾花はアナベルに似ていると言ってよいかと思いますが、なんとなく派手さが勝ちすぎているようで、個人的には原種のノリウツギのほうが好きです。
4年前の記事ですが、京都府立植物園の植物生態園でひっそりと咲いていたノリウツギの花を紹介してたのを見つけました。
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なお、アジサイと言えば、管理人も園芸相談員を務めている京都府立植物園の園芸相談でも、梅雨の時期の定番とも言える「昨年咲いたのに今年は花が咲きません」というお問い合わせが必ずと言ってよいほどあります。
これはガクアジサイ(額紫陽花)やホンアジサイ(本紫陽花)にヤマアジサイ(山紫陽花)やセイヨウアジサイ(西洋紫陽花)など、前年枝に花芽をつける種は花が咲き終わって真夏を迎えるまでに剪定してしまわないと、花芽をつけた枝を切ってしまうためなのですが、このノリウツギやアナベルは春になって芽を出す当年枝に花芽をつけるので、新葉が芽吹くまでに剪定してしまえば花が咲かないということはありません。
家庭園芸等で栽培を楽しむ種だけですが、少しわかりやすくまとめると、以下のようになるでしょうか。
旧枝咲き:前年枝(二年枝)に花芽をつけるアジサイ
・アジサイ(Hydrangea macrophylla; ガクアジサイ/ホンアジサイ/セイヨウアジサイなど)
・ヤマアジサイ(Hydrangea serrata)
・カシワバアジサイ(Hydrangea quercifolia)
・ラグランジア(Hydrangea hybrid)
新枝咲き:当年枝(一年枝)に花芽をつけるアジサイ
・ノリウツギ(Hydrangea paniculata)
・アナベル(Hydrangea arborescens; 和名はアメリカノリノキ)
ただし、旧枝咲きのアジサイにおいては、園芸品種によって新旧両枝咲きのものもあるようです。
新枝咲きのノリウツギやピラミッドアジサイは、春に新しい枝が出てくるまでに剪定をすればよいので、管理のしやすいアジサイの種といえるかもしれません。
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そうそう、あまり呼ばれることはありませんが、アナベルの和名はアメリカノリノキ(亜米利加糊の木)で、ノリノキとは前述のとおり「糊の木」という意味でノリウツギのことなので、ノリウツギ系は春までに剪定してしまえばよいと覚えてしまってもよいかもしれません。