京都園芸倶楽部の元ブログ管理人の書笈

京都園芸倶楽部のブログとして2022年11月までの8年間、植物にまつわることを綴った記事を納めた書笈。

シロヤマブキの実

2018-08-21 17:19:19 | 雑学・蘊蓄・豆知識
白川疏水通でシロヤマブキ(白山吹)の実が黒く色づいていました。



ただ、この実を見つけたときはヤマブキかシロヤマブキのどちらか明確に区別できておらず、ちょうどこの実を見ていたときに、散歩中のご夫婦が近づいてこられ、奥様が「この実は何の実ですか?」と尋ねられました。このときはどちらかわかっていなかったので「ヤマブキかシロヤマブキの実だと思います」と答えると、ご主人がすぐに「これが……」と、以下の和歌を誦じられました。

七重八重 花は咲けども山吹の みのひとつだに なきぞ悲しき

後拾遺和歌集の兼明親王の歌ですが、そして「その歌に出てくる花の実なのかもしれないのですね」とおっしゃられ、すぐに和歌が出てくる教養の深さに、驚かされました。

恥ずかしながら私は誰の歌かもすぐに出てこなかったので、教養があると植物の鑑賞により深みが出ることを再認識いたしました。

なおヤマブキの実ですが、シロヤマブキに似た実をつけますが黒くならず茶褐色に色づきます。

ご夫婦から、別れ際に「何の実か教えていただき、ありがとう」と御礼の言葉をいただきましたが、こちらこそ太田道灌の逸話も教えていただき、勉強になりました。ただ、シロヤマブキの実かヤマブキの実かはっきりさせて、それをご夫婦にお伝えせずに別れてしまったので、その点だけ申し訳なく思っています。

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余談ながら太田道灌の話とは、ある日、鷹狩りに出かけた太田道灌が途中で急な雨にあい、近くにあった粗末な小屋で蓑を借りようとしたところ、出てきた少女は山吹の花ひと枝を道灌に差し出したそうです。これを見た道灌、花をほしいと言ったのではないと怒り、そのまま立ち去ったとのこと。

帰館してこのことを家臣に話すと、家臣から後拾遺和歌集に収載されている兼明親王の件の古歌を踏まえたもので、お貸しできる蓑を持ち合わせていないことを「花だけで実のない山吹」に掛けて(蓑ない=実のない)伝えたのでしょうと教えられます。

それを聞いた道灌、自分の無学を恥じ入って、それ以来和歌に精進し、立派な歌人になったそうです。

元の兼明親王の歌も、兼明親王が住まっている嵯峨の小倉を訪問した客が帰る際に雨が降り出し、貸してあげられる蓑を持ち合わせていなかったことから兼明親王が訪問客に八重咲きの山吹の花を差し出したところ、訪問客はその意がわからないままに帰り、後日あれはどういう意味だったのかと兼明親王の元に手紙が来たのでその返事として返した歌が先述の和歌だということです。

どんなことであれ、即座にこのような対応ができる教養、素養を身につけておきたいものです。

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