京都園芸倶楽部の元ブログ管理人の書笈

京都園芸倶楽部のブログとして2022年11月までの8年間、植物にまつわることを綴った記事を納めた書笈。

名前に『寒』がつく植物

2018-12-22 08:10:02 | 雑学・蘊蓄・豆知識
冬本番を迎え、日ごとに寒さがつのりますね。今日は一年で一番お昼の時間が短い「冬至」ですね。この冬至の日を境に日が長くなる、つまり陰が極まり陽が初めて生じることから「一陽来復」とも呼ばれます。そして年が明けると二十四節気の小寒で、いわゆる「寒の入り」となり、立春までの期間を「寒中」と呼びます。

ただ「寒い寒い」と言ってても暖かくならず、つまらないことですし、ふと「名前に『寒』がつく植物って何があるのかな」と頭に浮かんだので、思いつくまま挙げてみたいと思います。この名前に『寒』のつく植物ですが、「品種名として名前に『寒』がつく植物」「本来の開花時期と違うこの季節に花を咲かせたときに名前に『寒』をつけて呼ぶ植物」「寒中に花を咲かせていることから別名として名前に『寒』をつけて呼ぶ植物」と、ざっくり3つに分けられるでしょうか。皆さんもそれぞれどんな植物があるか、ちょっと考えてみてください。

では、最初に品種名として名前に『寒』がついている植物から紹介したいと思います。まず寒椿(カンツバキ)がありますね。椿と山茶花の交雑種とされています(ただし、異論もあります)が、椿と名前のつくもののサザンカ群として扱われています。



寒菖蒲(カンアヤメ)もそうですね。アヤメ(菖蒲)の仲間ですが、冬の寒い時期に咲く種で、寒咲き菖蒲(カンザキアヤメ)とも呼ばれます。



桜の中にも『寒』を品種名に持つものがありますね。寒緋桜(カンヒザクラ)は旧暦のお正月の頃に咲き始めることから「元日桜」とも呼ばれ、ソメイヨシノ(染井吉野)が咲かない沖縄では、桜というとこの寒緋桜のことを指します。ちなみに、他に緋寒桜(ヒカンザクラ)という呼び方もあるのですが、江戸彼岸(エドヒガン)である彼岸桜(ヒガンザクラ)と紛らわしいので、私は寒緋桜を呼び名に使っています。



そして、この寒緋桜と大島桜の交雑種とされる桜に寒桜(カンザクラ)があります。こちらも春に咲く桜では一番早くに咲き始める桜です。



あと、少し目立たないですが寒菅(カンスゲ)という植物もあります。カヤツリグサ(蚊帳吊草)の仲間で、春にヒトリシズカ(一人静)に似た花を咲かせます。

〔これはオクノカンスゲ(奥の寒菅)です〕


また、こちらもあまり目立たないですが寒葵(カンアオイ)もありますね。

〔こちらは寒葵の近縁のフタバアオイ(双葉葵)です〕


先ほどまでは品種名や和名に『寒』がつく植物たちでしたが、二季咲きの性質を持っているなどの理由で、寒い時期にも花を咲かせることから、この時期だけ通常の和名に『寒』をつけて呼ぶ植物もあります。『寒咲き◯◯』と呼ばれることもある植物が多いでしょうか。

まずは寒木瓜(カンボケ)です。木瓜の花も春に咲きますが、二季咲きの性質をもったものが冬の寒い時期に咲くことがあり、その頃に咲く木瓜を寒木瓜と呼びます。



そして寒牡丹(カンボタン)もありますね。こちらも品種としては春咲きの牡丹と同じですが、二季咲きの性質を持った牡丹で冬に花を咲かせると寒牡丹と呼ばれます。なお牡丹には「冬牡丹」と呼ばれるものもありますが、この冬牡丹と寒牡丹の違いについてはこちらの記事で紹介しています。



菜の花も冬の寒さが残る早春から咲く品種を寒花菜(カンハナナ)と呼びます。こちらは寒咲き花菜(カンザキハナナ)とも呼びますね。



そして、寒中に咲いた花を指して呼ぶ名前にもありますね。寒中に咲いている梅のことを寒梅(カンバイ)とも呼びます。



日本水仙も寒水仙(カンズイセン)の他に日本寒水仙(ニホンズイセン)寒咲き日本水仙(カンザキニホンズイセン)と呼ぶこともあります。



冬の寒い時期に花を咲かせた菊のことも寒菊(カンギク)と呼びますね。

(寒菊というわけではなく、たまたま咲き残っていた菊ですが…)


「寒梅」「寒菊」と書いて、ふと思い出しましたが、先述の「寒桜」と合わせて、それぞれ日本酒の銘柄にもなっていますね(今回のテーマとは関係ありませんが、寒いこの季節においしい鍋料理にもあうので、ついつい…)。お酒の話にちょっと脱線しましたが、まだまだ他にも名前に『寒』がつく植物があるかもしれません。とりあえず思いついた植物を少し整理して紹介してみました。

そうそう、寒菊の「菊」で、もうひとつ思い出しました。この「菊」と今日の「冬至」を名前に持つ椿がありましたね。早咲きでその名も「菊冬至」という品種ですが、ただこの名前は「菊が咲き終わる(閉じる)頃に咲き始める」ということから「菊閉じ」と呼ばれていたのが転訛して「菊冬至」になったという説もあります。


・・
・・・
菊冬至については、こちらの記事でも紹介していますので、お時間ありますときにでもご笑覧ください。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 原種スイセン「ナルキッスス... | トップ | 次の記事へ »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。