今日も残暑厳しい一日でしたが、蝉の声もミ~ンミンからツクツクボ~シに変わりあちらこちらでススキの姿が。その周りには赤とんぼが楽しそうに飛んでいます。
大森の方では黄色く実った稲穂が頭をたれ、早くも稲刈りがすんだ田んぼもありました。
夏から秋へとうつろう、心癒される中川の風景です。
もう何度となく中川を行ったり来たりしていると、通るたびに目に入る光景があります。
雨の日も風の日も道路に面した作業場に並んだ美しい木と作業されるお二人の姿、そして「面皮」の大きな文字。
ここは中川で唯一、面皮加工を営むMさんご夫妻の工房です。
「面皮(めんかわ)」とは磨き丸太や絞り丸太の4面をはつり、美しい木目を見せる加工のことで、日本の伝統的な数寄屋造りの茶室の柱や床柱として使用されています。
「はつる」と言いましたが、昔は便利な電動工具などなく、鋸(のこ)・鑿(のみ)・錐(きり)などの道具を鍛冶屋さんに注文して作っていました。
面皮加工の粗削りに使う道具もその一つ、「釿(ちょうな)」です。「手斧」と書いてそう読むこともあります。
Mさんはじめ、職人さん達の中では「チョンナ」と言っていましたよ。^^
今では機械で行っていますが、今回特別に「チョンナ」での加工をお願いしました。
まずは定規を当てて水平を出し...
はつって行きます。今、振り下ろされようとしてるのが、「釿(ちょうな)」です。
きれいな木目が現われて来ました!正直、「え?これでちゃんと面が出来るの? 」と思いますが、そこはMさんの熟練の感覚で、もくもくと(木だけにもくもくf^^;)とはつられて行きます。
スゴイでしょう?飛び散る木片、チョンナのパワーです。
ほら、こんなに綺麗な面が。手ではつったのですよ。信じられますか?
年季の入った「釿(ちょうな)」。よく手入れされています。色々なサイズをお持ちでした。
そう言えば私の通勤途中にある太秦の広隆寺。
年末になると門に大きく「釿始め」と書かれた幕がかかげられます。
毎年、1月2日に宮大工の仕事初めと一年の無事故を祈願して古式ゆかしく行われるものです。
古代から大建築の前には必ず行われていたそうで、「木槍(きやり)音頭」も奉納されます。
今では一部の職人さんや宮大工さんが使うこの道具。この中川にもしっかりとその技術を守り続けているMさんがいます。
現在は製材機・まるのこを使って粗びきをしています。
まるのこ...鋭い歯で、スムーズに引けているように見えますが...
押す・引くの絶妙なタイミングを合わさないといけません。まさにあ・うんの呼吸です。
この後寸法を出して鉋をかけます。
伝統的な木造建築どころか床の間のあるお部屋すら減ってきた近年、面皮柱の需要は少なくMさんご夫妻も試行錯誤の日々を送っておられます。
そんな状況の中でもお二人は笑顔を絶やさず、何より心奪われたのが奥さまの気遣いです。
Mさんの一挙一動を逃さず、必要な時に必要なものがすぐそこにあります。
そんな奥さまにチョットのろけられてしまいました^^
工房の向かい側に咲き乱れる季節の花々。
「主人が作ってるんです。何度も鹿に踏まれても、また植えたらええやんかって。凄く前向きな人なんです。」
不安な状況下でも、花や野菜を育てて生活や心に潤いある暮らし...
どうかこの面皮柱と加工技術が守り受け継がれますように。
「ようこそ!中川へ」。中川に来られたら、必ずこの光景が見られます。
中川に面皮のMさんあり!!
ハイカーのフランスの方と仲良しになってバスがなくなったから駅まで送って行って下さるそうな。
そんな気さくで優しい職人さんですよ。
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