チケットをいただいたのもあり、お天気に誘われて
目的はJR京都伊勢丹の中にある美術館「えき」。
モーリス・ユトリロ(1883~1955)とその母スュザンヌ・ヴァラドン(1865~1938)
その2人の親子の物語。
私生児として生まれたヴァラドンは幼い時にパリに出る。サーカスの曲芸をしていたが
空中ブランコから落下して退団。ルノワール、ロートレックといった著名な画家たちのモデルとなった。
様々な恋愛関係、18歳で父親のわからない息子を出産し、49歳で21歳年下と再婚する。
自由奔放でエネルギッシュな生き方、ドガが絶賛したデッサン力や個性的な裸婦像などでも圧倒的な
存在感を示している。
ユトリロは母ヴァラドン18歳の時に、パリ・モンマルトルで生まれる。父親は不明。7歳の時に、母の結婚相手に
息子として認知されモーリス・ユトリロとなる。絵画と恋愛に忙しい母のもとで、寂しい環境の中、
10代の頃から飲酒癖があり20歳でアルコール依存症のため入院。
治療の一環として医者にすすめられたのが絵を描くことだった。(チラシから抜粋)
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ふたりのことについては、かつて観た展覧会で知っていたけれど
このようなまとまった作品を観たのは初めてだった。ユトリロの絵は
有名だったので(私にとって)見れば、あぁユトリロだなというのはある。
ヴァラドンの絵は実は数年前までは自覚したことがない。
今回改めて出合って思ったのは、情熱のはじける感覚。
主張の強さ、見せたいものが何なのかが伝わってくる。
太い輪郭線、はっきりとした色彩、美しい女性の体のライン、何が美しい仕草なのか
そういったものを熟知した人。
人が見て、魅力的なものとは何たるかを知っていたからこそ、多くの芸術家たちに
愛されたのでは、そんな感想を持った(あくまでも私の感じ方)。
ユトリロの絵とヴァラドンの絵は、まったく似ていない。
時代の色だけが同じように伝わってくる。
ユトリロは孤独の中に生きて、絵を描いた人。
晩年は結婚もして、71歳で亡くなる。
晩年のことまでは知らなかった、解説には穏やかな日々だったとと記されていたが。
波乱万丈とはこのことかと2人の人生を語られるときには、そうなるだろう。
母を選べない、ユトリロに同情するものの
ドラマティックに生きたからこそ、作品が生まれたのだとすれば
その運命を受け入れて生きぬいた証が、今ここにあるのだとそんなふうに見た。
3枚だけポストカードを買った。
いつも直観で選ぶことにしている。左の一枚だけユトリロのもの。
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ここの美術館は伊勢丹の7階にある。天井も低くて、狭いぶん、作品が我が身に迫ってくるように
感じる。親密であるかのように近しい感覚を持たせてくれたから
絵を味わうには、とても良い美術館だと思った。