「森崎書店の日々」を観た。
邦画を観ると、いつも思うのは懐かしさ。
この主人公の年頃だった頃の自分を思い出す。
古書店。
自分の知っている古書店も、このような様子で、年季の入ったシンプルな書架に
整然と並べられた古書たち。ほんの浅く手前に整列している本を一冊、一冊取り出し丁寧に乾拭きしている店員さん。
その姿に感動したことがある。
本がいきいきとしてくるから不思議だけれど
なるほど、それはそうなのだと納得した記憶もある。
なぜか現在平積みされている本に興味をそそられないのも
古典的なものが好きで
かつてのものが今でも残されている・・・そういう価値に自分はそそられているのだと
改めて実感したのだった。
止まった空気の感じ。
静かな時間を思う。
柱時計のコッコッコッという音を思い出す。
ずっと聞いているうちに、その音が聞こえなくなる時がやってくる。
子どもの頃、私の家にもあった。
そのふりこをじっと見つめている
襖の絵を見て、不思議な錯覚を覚えて深い眠りについた
その二つが自分の中の止まっている過去の時間という記憶。
そして、目を瞑ると朝になる。
昔から深い眠りの人だった。
本は、はっと吸い寄せられ、手にとり、ある一文に釘付けになり
その勢いのまま買ってしまう。
そういう本は、読めばすっと心に入ってきて
自分のそばに、この先もずっと置いておく運命になることが多い。
この主人公の女の子は
元々本の魅力に気づいていなかったのだけれど
この古書店との出合いが
彼女の中の何かを呼び覚まし
心に寄り添うカタチで
きっとこの先も共に生きていくのだろうと想像する。
「本」と一言で言っても
今は玉石混交で、本当に良い本を見つけられるのは
その人が自分の中にある「たしかなもの」を見出せるかどうか。
良い本に出合うことは
その人自身にかかっているのかなと。
淡々とした中にも
人生における出来事に
どうにもならないことも時にはあり、それを乗り越えて人は生きていく
そういう時期もあるのだと、教えてくれている。
人の優しさが救うということがあるけれど
そういう映画だったように思う。