いやぁ、ひっどい雪だ。
午前中、我が家の駐車場には、TVの公表積雪量以上のドカ雪が降り積もり、雪まみれになっている愛用軽自動車「むっちゃん」が「はやくだして!はやくだして!」と声にもならぬ悲鳴を浴びせかけてきているのが嫌が応にも理解できたので、僕はひたすら無心になって汗をかきかき、雪をかきかきやったのでした。
すると、そんな姿を察してか、同じくひたすら雪かきに精を出していた隣の一軒家に住むじいさんが、徐に僕に声をかけてきたわけです。「なぁ、ちょっと、一服しようや。」
ほれ!と差し出されたのはマイルドセブンスーパーライト。「先生に今のうちに良くしとかないとな!」などと、僕を先生と呼ぶ72歳のじいさんの冗談を笑顔半分で交わしつつ、遠慮という言葉を噛みしめつつも、せっかくのその好意を僕は素直に受け取り、「あざぁーっす!」と一本頂戴し、火を点けてくれた御礼に、こちらも火を点け返したのでした。
隣のうちのじいさんは、僕が今の部屋に引っ越してきてから約五年ちょっと面識があり、今年「旭川しょうゆ焼きそば」に絡んだ新聞記事に僕が出たときも何気に見ていたらしく、『Expressong』『あかし』を買ってくれたじいさんでもあるわけです。
で、「今日は休みか?」と訊いてきたので、「いやぁ大掃除だわぁ」と答えると、「いいアワビが入ったから、あとで一杯やろうや!」とじいさん。何気に除雪機を回してくれたりもしていたし、こちらは無下に断る理由もなかったので、「いいっすよ!」と答えてから雪かきも一段落して部屋に戻り、「さて、そろそろ大掃除を始めるかぁ!」と気合いを入れかけたところ、ピンポーンと鳴った部屋のベル。
「4時位にスーパーに買い物行くから手伝ってくれや!それから、一杯やろう!」と言われ、迎えた午後4時。まさか、隣のうちのじいさんと買い物するとは思いもよらず、しかしながら何だか楽しくなってきて、クリスマスの鶏類や惣菜を買い込んで、いざ、じいさん家へ。
「ホントにいいの?」と恐縮していたこの僕に、じいさんは「なんも、いいっしょ!あんちゃん、気持ちいいんだもん!呼びたくないやつなら呼ばんから」と、40以上歳の離れた若造に、また深く刻まれた皺で顔中をしわくちゃにして笑うのでした。
「おじゃまします!」と敷居を跨ぎ、先ず僕の両目に飛び込んできたのは、壁にかけられた表彰状の多さだったわけで、「おっちゃん、これ、すごいね!」と言うと、「50年以上無事故無違反!すごいべ!」とまた笑うのでした。
ほかにも、17歳くらいからやっている釣りの話や、心筋梗塞からの復活の話を、アワビは勿論、イズシやスーパーで買った惣菜をつまみながら、ビールを片手に展開してくれて、で、色々と話を聞いていると、じいさんの奥さん、一ヶ月ほど前に倒れて今、入院しているらしく、深くは突っ込んで訊かなかったけれど今日、じいさんが家に招いてくれたことに、僕は何となく心境を察してしまって、涙をこらえるのに必死だったわけです。
じいさんは僕に似てものすごい頑固だし、淋しさの欠片も絶対見せはしない人だけれど、「ごちそうさまでした!じゃ、そろそろ行くわ」と僕が席を立ち帰ろうとした時、一瞬見せたじいさんの表情はいつになく淋しそうなテイで、若干後ろ髪をひかれかけながらも、僕は靴ひもを結び直したのでした。
僕はじいさんにサンタさんみたいなことはできなかったかもしれないけれど、話し相手になるだけで、ちょっとでも気が紛れたとするならば、それはそれでよかったんじゃないかなと思ったりもするのです。
メリークリスマス。
Official webはこちら
午前中、我が家の駐車場には、TVの公表積雪量以上のドカ雪が降り積もり、雪まみれになっている愛用軽自動車「むっちゃん」が「はやくだして!はやくだして!」と声にもならぬ悲鳴を浴びせかけてきているのが嫌が応にも理解できたので、僕はひたすら無心になって汗をかきかき、雪をかきかきやったのでした。
すると、そんな姿を察してか、同じくひたすら雪かきに精を出していた隣の一軒家に住むじいさんが、徐に僕に声をかけてきたわけです。「なぁ、ちょっと、一服しようや。」
ほれ!と差し出されたのはマイルドセブンスーパーライト。「先生に今のうちに良くしとかないとな!」などと、僕を先生と呼ぶ72歳のじいさんの冗談を笑顔半分で交わしつつ、遠慮という言葉を噛みしめつつも、せっかくのその好意を僕は素直に受け取り、「あざぁーっす!」と一本頂戴し、火を点けてくれた御礼に、こちらも火を点け返したのでした。
隣のうちのじいさんは、僕が今の部屋に引っ越してきてから約五年ちょっと面識があり、今年「旭川しょうゆ焼きそば」に絡んだ新聞記事に僕が出たときも何気に見ていたらしく、『Expressong』『あかし』を買ってくれたじいさんでもあるわけです。
で、「今日は休みか?」と訊いてきたので、「いやぁ大掃除だわぁ」と答えると、「いいアワビが入ったから、あとで一杯やろうや!」とじいさん。何気に除雪機を回してくれたりもしていたし、こちらは無下に断る理由もなかったので、「いいっすよ!」と答えてから雪かきも一段落して部屋に戻り、「さて、そろそろ大掃除を始めるかぁ!」と気合いを入れかけたところ、ピンポーンと鳴った部屋のベル。
「4時位にスーパーに買い物行くから手伝ってくれや!それから、一杯やろう!」と言われ、迎えた午後4時。まさか、隣のうちのじいさんと買い物するとは思いもよらず、しかしながら何だか楽しくなってきて、クリスマスの鶏類や惣菜を買い込んで、いざ、じいさん家へ。
「ホントにいいの?」と恐縮していたこの僕に、じいさんは「なんも、いいっしょ!あんちゃん、気持ちいいんだもん!呼びたくないやつなら呼ばんから」と、40以上歳の離れた若造に、また深く刻まれた皺で顔中をしわくちゃにして笑うのでした。
「おじゃまします!」と敷居を跨ぎ、先ず僕の両目に飛び込んできたのは、壁にかけられた表彰状の多さだったわけで、「おっちゃん、これ、すごいね!」と言うと、「50年以上無事故無違反!すごいべ!」とまた笑うのでした。
ほかにも、17歳くらいからやっている釣りの話や、心筋梗塞からの復活の話を、アワビは勿論、イズシやスーパーで買った惣菜をつまみながら、ビールを片手に展開してくれて、で、色々と話を聞いていると、じいさんの奥さん、一ヶ月ほど前に倒れて今、入院しているらしく、深くは突っ込んで訊かなかったけれど今日、じいさんが家に招いてくれたことに、僕は何となく心境を察してしまって、涙をこらえるのに必死だったわけです。
じいさんは僕に似てものすごい頑固だし、淋しさの欠片も絶対見せはしない人だけれど、「ごちそうさまでした!じゃ、そろそろ行くわ」と僕が席を立ち帰ろうとした時、一瞬見せたじいさんの表情はいつになく淋しそうなテイで、若干後ろ髪をひかれかけながらも、僕は靴ひもを結び直したのでした。
僕はじいさんにサンタさんみたいなことはできなかったかもしれないけれど、話し相手になるだけで、ちょっとでも気が紛れたとするならば、それはそれでよかったんじゃないかなと思ったりもするのです。
メリークリスマス。
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