ムーミンパパの気まぐれ日記

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白い杖

2009-07-22 | column
 いつものように酔っ払いながら地下鉄を乗り換える。長い地下道はそこそこ人がいるが、もうすぐ22時という時間なので朝のような人ごみというほどではない。終電に近くなるともっと酔客で一杯になるから、夕方のラッシュとの間のエアポケットのような時間帯である。そんなことを思いながら歩いていると、向こうからカツカツという音を立てながら若い女性が歩いてくる。背が高くスラッとしていてパンツルックがよく似合う。そんな彼女が白い杖を操りながら、黄色い点字ブロックの上をこちらに向かって来るのが見えた。まだまだ距離はあるけれど、地下道だから杖の音は大きく響いている。今時視覚障害を持つ人や車いすの人が一人で歩いている姿は珍しくもないので、さして気にもせずそのまま歩いていたのだが、私の前10mほどのところでアクシデントが起こった。
 その女性の杖がすれ違う二人組の男性の一人の足とからまってしまったのである。幸いにしてどちらも転倒したりすることはなく、女性も少し驚いた表情を浮かべただけで済んだのだが、その一方で男性の方は不満げな顔で彼女の方を振り向きながら過ぎ去っていったのであった。
 あぁ。。ため息をつかずにはいられなかった。どうして避けて歩いてあげられないんだろうか。点字ブロックは君たちのために設置されているわけではないのに。下部に赤い帯のある白い杖は視覚障害者の持つものだということを知らないのだろうか。例え知らなかったとしても、登山でもなければ杖を持つ人は高齢者や視覚障害者などの社会的弱者であることくらいの想像力すらないのであろうか。もっと言えば、見知らぬ人と接触した時に「大丈夫ですか」の声もかけられないのだろうか。まさか「俺とぶつかっておいて挨拶もないのかよ」なんて逆ギレしなかったことを感謝しなければいけなかったのだろうか。ほんの数秒のうちに頭の中を様々な思いがかけめぐる。どこかおかしい。人としての優しさだとか、マナーだとか、そんな大それたことではない。人間としてごく当たり前にやらなければいけないことがなされていない。それはもう怒りでも悲しみでもなく、やるせなさで私の心を満たすのに十分な出来事であったのである。何事もなかったように歩き続ける彼女とすれ違いながら、心の中で「ごめんなさい」とつぶやいた。そんなことが何の贖罪にもならないことは分かっていたけれど、そうせざるを得ない自分がそこにいた。社会を変えるささやかな活動さえ行なっていない自分には謝る資格があるのかどうかすら分からないが。
 この記事を書こうと思ってからいくつかのサイトを巡ってみて、これまで知らなかった知識も得ることができた。みなさんはよくご存じのことかもしれないけれど、視覚障害者などへの接し方については東京都心身障害者福祉センターのサイトが勉強になったので、よければ一度訪問してみてはいかがでしょうか。

(注)視覚障害者の方が持つ杖は白い杖が一般的であるが、道路交通法上は黄色い杖も指定されている。
*道路交通法第14条第1項(目が見えない者、幼児、高齢者等の保護)
 目が見えない者(目が見えない者に準ずる者を含む。以下同じ。)は、道路を通行するときは、政令で定めるつえを携え、又は政令で定める盲導犬を連れていなければならない。
*道路交通法施行令第8条第1項(目が見えない者等の保護)
 法第14条第1項及び第2項の政令で定めるつえは、白色又は黄色のつえとする。

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4 コメント

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残念です (チエちゃん)
2009-07-24 22:23:00
健常者は、健康であること・普通であることの有難さに気づかないものです。
そのことに気づけば、もっと優しくなれるのではないでしょうか。
それが、なかなかできないんですよ。私も含めて・・・

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リンクしていただいた (micomico)
2009-07-25 21:55:34
東京都のサイト、拝見しました。
考えたら当たり前の事だけれど、言われないと気づかない事ばかりでした。
急に体に触られたり、名乗らずにずんずん話しかけられたりしたら、目が見えている今はなんとも思わないですが、そうでなければどれだけ不安か。

身体能力は同じ条件ではないけれど、どれだけ相手の立場にたって考えられるかというのはいろんな条件の人が共存しているこの社会での最低限必要な能力ですね。
その能力の無い人が、弱者を排除したりいじめたりするのかなぁ。
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>チエちゃん (ムーミンパパ)
2009-07-26 09:34:03
わが身のことと思って考えるっていうのは
口で言うのは簡単ですけど、難しいことですよね。
せめて「そうなりたい」という気持ちだけでも持っていたいものです。
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>micomicoさん (ムーミンパパ)
2009-07-26 09:36:14
リンク先まで見ていただきありがとうございます。
まずは声をかける勇気を持つことから始めなければいけないかなとは思ってますが、その時にちょっと知識があるかないかでずいぶん違いますよね。
勉強しなければいけないことは、まだまだあるようです。
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