霜警報の北国
ずっと止めてたタバコをベランダで吸ってみた
彼と出会ったのは20歳になったばかりの私
女友達に騙されて必死に借金を返してた
夕暮れになる時間は私の出勤時間
お水の仕事しか借金を返せるあてはない
良くある話し
勤めてる店で出会った彼
恋に落ちた
彼の為に1日でも早く借金を完済して自由になりたい
私には彼が支え
彼の存在が支え
彼と一緒に居る時間
何にも変えがたい時間
結婚の文字
彼は平凡な結婚を望んでた
結婚生活は若さと情熱
瞬く間に月日が流れる
そんな2人に待ってたのは
価値観の違い
気がつけば家庭内別居
離婚も時間の問題
うつろな時間が過ぎて
紙切れ1枚で別々の人生
その後の彼の私生活は知らない
私は必死に働いた
今年の春
彼の姉から電話
彼は末期癌だと
私は
変わり果てた彼に会いに行くのを拒んだ
走馬灯のように彼と一緒に暮らした日々を思い出す
私が働き
彼は遊ぶ
苦ではなかった
若かった
結婚生活の破綻
彼が選んだ人生の選択だもの
惨めな生活だったのだろうか?
末期癌の連絡に直ぐに答えが出ない
私の生活もある
家族の生活もある
金の無心?
無言電話が始まった
時間は止まる
ずっと昔の私に時計が逆戻りした気がした
別れて10年以上
止めて
無言電話は止めて
もう苦しめないで
知らずにストレスだったのか?
身体は悲鳴をあげて帯状疱疹になった
ずっとズキズキ
もう別々に人生を歩いてる
私はもう、あの時の私ではないのよ
私が貴方に出来る事
何も無い
だから貴方も自分の人生を振り返って
短い私の想いを断ち切って
残された命を
私を苦しめずに
静かに振り返って分かり合えなかった事を
後悔なんかせずに笑ってよ
離れ離れだったけど楽しかった日々を思い出して
もうサヨナラしたいの
私の中では貴方は過去の人
幸せな時間もあった
いつかは、今夜みたいに
また思い出して
分かり合えなかった理由を考える日があるわ
意地悪な貴方
我侭な私
最後の言葉が出ない
有難うとでも言えば良いの?
あの時の私は光ってたわ
そして貴方も光ってた
短い人生なのかな?
そんな遠くない将来、私も皆が待つ国に逝きます
だけど待ってるのは貴方じゃない
幸せだと思えた時間が短すぎたの
だからもう
さようならしたい
私はまだ生きてる
まだ生きたいの
最後くらい
今夜くらい
無言電話しないで
分かり合えなかった貴方
列車が遠ざかるように
もう
もう
もう私を傷つけないで