会社の運営は順調そうだ
正二と美奈子は度々、仲良く店に飲みにくる
時折、奈美子が1人でも飲みに来るようになった
酒豪と言う言葉が正しいのか?ボトル1本空けてもケロッとしている
身長150センチと小柄
推定体重40キロの細身
コロコロ良く笑う可愛い奈美子ちゃん
私の店は公認なのか、電話一本で正二が迎えにくる
と言っても運転手付きのベンツで
奈美子を迎えにくる正二は優しい顔
『正二さんは優しいでしょう?』
『優しいよ、何でも好きな物を買ってくれるし・・・』
見ればエルメスのバックに時計に高級なスーツ
『素敵なスーツだね、私好みだわ』
『みゆきママなら似合うかも、着る?』
『着たいな』
『じゃあ、あげるよ洗濯して持ってくる』
『そんな高いスーツは貰えないよ』
『たいした事無いよ、たかが30万のスーツだし』
たかが30万のスーツ?
金銭感覚がない?
本当に持ってきた
良いのか?貰っていいのか?正二に叱られはしないのか?
が、持ってきた時は二人一緒だ
30万のスーツを貰った私は何をお礼したら良いのか悩んだ
悩んだ末、見返りをするのを止めた
そんなある日、再び意外な場所でバッタリ
映画館
ラフな衣装の正二
しかしヤクザのオーラが漂う
激混みの映画館の待合椅子に2人は座ってた
手を振って合図し嬉しそうな顔をした美奈子
ヤクザとは知らずに隣に座った若い男女
『ここに座るな臭い』
ヤクザ家業が炸裂
後で聞けば若いカップルの女性の香水の匂いが嫌だと
ドスのきいた低音の声に驚き若いカップルは直ぐに去る
奈美子も冷たく『ウザイ』
何と奈美子の口からそんな言葉が出るなんて
あぁ~正二色に染まってしまったんだな
ヤクザの女、美奈子
繁華街を歩く奈美子を見つけると腰まで頭を下げて挨拶する正二の舎弟
用事があって市役所に出向いた日
見覚えのある背中に釘付けになった
市役所職員ともめている
市民課に怒鳴る声が木霊
『何で俺の戸籍がないんだ?』
戸籍が抹消されてると訴える正二
オロオロする役所の職員に罵倒
俺の戸籍を探してこい
戸籍が抹消される何て事があるのか?
正二の手には婚姻届
結婚届けの為に訪れた市役所
恐々、正二に声を掛けた
『久しぶりだね正二君、どうしたの?』
『俺の戸籍が消えちまった』
刑務所暮らしが長かったものね何て言えない
刑務所を出たり入ったりで戸籍が無くなるってのもあるのかな?
車の免許証も保険証も無い
推測すると会社の名義は誰かが名前を貸しているのだろう
『人並みに生活しようと思ったら、これだ』
市民課の職員が『抹消の理由が分かりました』
正二の母親が亡くなった時に正二は刑務所の中
母親の死亡と同時に身内によって正二は転出扱い
10年以上も住所不定だと
すったもんだの戸籍復活
直ぐには戸籍を戻せない
本人確認も出来ない
『俺は橋本 正二だ』
婚姻届を机に叩き付けて処理しとけと怒鳴る
『入籍の日付は今日だぞ』
『ご結婚される方を連れてきて欲しいのですが』
『何故だ?』
『一応、本人確認の為に』
『てめぇ~俺を馬鹿にしてんのか?俺が結婚出来ないと思ってるのか?』
『いや・・・そんな訳じゃなくて、一応念のために』
正二は携帯を取り出し
『奈美ちゃん、俺達の結婚届を受け付けないんだよ、しかも俺の戸籍がない
市役所に来てくれゴメンよ』
奈美子への電話は優しい
電話を切った途端
『今、俺と結婚する女がくるから、早く戸籍を探してこい』
市民課の職員には長い1日になりそうだ
『正二君、大変だね、でもここで騒いだら大変な事になるから穏やかにね』
そう言って私は市役所を出たのである
これを読んでるそこの貴方
ちゃんと戸籍はある?
正二君と奈美子ちゃん結婚出来るかな?
続くだっちゃ~