年の瀬迫る年末
帰省ラッシュが始まった
息子は来年結婚を控えた婚約者を連れて今晩帰省する
今年の正月は特別なものになるだろう
喜びと忙しさが交差する年末
『ねえ貴方、澄子さんのお腹の子は大丈夫かしら?』
『慎重派の輝夫の事だ心配ないさ』
『でも午後から雪が降るのよ、それに凍結もするみたいだし』
『スタットレスに履き替えているさ大丈夫』
『列車で帰省の方が疲れないのに・・・』
"ただ今~"と元気な声を聞くまで気が休まらない
帰省する息子と婚約者に喜ばれたい母親の久子は料理に精を出す
窓の外は薄っすら積もった雪にお日様の光が反射してキラキラ光ってる
鼻歌交じりに作る料理
味には自信がある
息子の輝夫と澄子は今時の出来ちゃった婚
今年の夏に輝夫からの電話
『職場で知り合った4歳年下の小野 澄子さんという人と付き合ってるんだ』
『お盆にでも紹介しに連れてくるの?』
『子供が出来た、結婚したいんだよ彼女と』
子供が出来ちゃった事には反対も賛成もない
輝夫もそんな歳になってんだと実感
輝夫の誕生日は1月1日
その日に入籍する予定
何処にでもある家庭
来年は息子も家庭を持ち1児の父親
そして久子にとって初孫が出来る
時計をチラッと見た
"はぁ~まだ3時だわ"
帰宅時間まで3時間ある
窓の外をみたら雪が降り出してた
『こりゃあ積もるな、雪かきでもして待つか』
そう言いながら父親の正一は家の周りの雪かき
久子の愛情正月料理は、とっくに出来てた
『親父、お袋、ただ今~』
その声が待ち遠しい
夕方5時、とっくに日が暮れた
『遅いわ』
『この雪だし、帰省ラッシュで渋滞になってるのさ』
『そうね、きっとそうだわ・・・渋滞なのね』
ちょっとガッカリの久子
"明日の朝早く発つから夕方の4時前には着くよ"
輝夫の弾む声が耳に残ってる
4時が過ぎ5時はとっくに過ぎ6時になった
『事故にでも遭ってなきゃ良いけど』
『縁起でもない事を言うな』
時間はゆっくり、しかし落ち着きなく過ぎる
8時を回った時だ
ピンポーン
『輝夫が帰ってきたわ』
『いや~参ったよ、途中で高速は吹雪の為に通行止めでさ』
ちょっと疲れた様子の輝夫と澄子だが料理を見て元気な顔をした
『お袋の料理も食い納めかな?』
『来年からは澄子さんの手料理だものね』
弾む会話
『高速が通行止めになって国道でこっちに向かってた時に事故を見たよ』
『大きな事故だったわ』
『帰省中だったのかな、家族が待ってたでしょうね』
『そう言えば、路面状態は大変だったろう?』
『吹雪の上に凍結』
途中からタイヤチェーン装着して走ったよ
『スタットレスを履いてこなかったのか?』
『履いてたよ、だけど5年目だし溝が減っちゃってて』
『おいおい来年は一家の主だぞ、装備をしっかりしないと』
『そうよ輝夫さんたら何度もスピンして・・・・・』
そこまで言うと澄子は青ざめた顔で
『事故の現場をあんなに間近で見たのは初めて』
『そうだな、あれは酷い事故だった』
『怖かったでしょうね可愛そう』
事故現場を思い出したのか二人は急に黙った
『輝夫?どうしたの?急に涙を流したりして』
『そんな神妙な顔をするな、お前が事故った訳じゃないし』
途中で見た事故が相当ショックだったんだろうな
正一は今日の為に取って置いたブランディーを開けた
『さっ乾杯して二人の門出の前祝をするぞ』
『親父・・・俺たち』
輝夫が言い掛けた時、家の電話が鳴った
『こんな時間に何かしら?』
電話に出た久子
『そんな筈はありませんよ息子は帰ってますが』
『貴方、警察からの電話なの輝夫が在宅かなんて聞くのよ』
『輝夫が在宅かだって?輝夫、お前心当たりあるか?』
『親父・・・・・・・・・・・・・・俺達』
『ちょっと待ってろ電話に出て事情を聞くから』
輝夫と澄子さんのその後はいかに
実際にあった話しだよ
またね
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