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ハガレンの二次です、現在、pixivとハーメルンで投稿しています。
確か自分は取り調べを受けていたはずでは、だが、目が醒めるとベッドの中だった、しかもふわふわというか、まるでホテル仕様みたいでシーツも気持ちがいい、びっくりした。
「起きたようだね、気分はどうだい」
低音、響く、まるで映画俳優みたいな声に思わず視線視線を向けて体を起こす。
「自分が今どこにいるかわかるかな」
「だから、俺は言ったんだ」
思いっきり机を叩いたのは元、大佐、いや、現在は大統領選に向けて必死に動いているロイ・マスタングだ、彼は怒っていた、以前から国家錬金術師の試験が厳しすぎる、これでは将来、その道を目指す人間がいなくなるのではないかと危惧されていた。
試験の難易度を少し下げてはどうかという意見が世間だけではなく軍内部でも囁かれだしてくると放ってはおけなくなった。
最初は、そんな不満など放っておけば良いという意見もあったが、それに反発する人間が現れた。
試験に落ちた研究者崩れの人間だ、ただのシロウトなら良かったのだが、なまじある程度の知識があるだけにまずかった、失態を犯したのだ。
真理の扉を開く事だけをすれば良かったのだが、そのときに障害、アクシデントが起こった。
「関係のない人間がこちらに来た、つまり召喚というやつか」
「巻き込まれたようです、しかも一般人、市井の人間です」
「これは、そう、軍の管理体制が問われても仕方ないですな」
おい、試験の難易度を下げると決めたのはおまえ達ではないかとマスタングは高官達の顔を見た。
だが、手のひら返しというか面倒ごとは若者に任せる、これは試練だという目で周りは睨みつけてくる、自分一人が悪役なのかと思ったのも無理はないだろう。
「実は帰還させる方法があったのですが、こちらに残りたいと希望する者もいて」
まさかと高官達は驚いた、どんな理由かと聞くと男は少し困惑気味な顔になった。
な、なんだとー、マスタングは心の中で絶叫したい気分になったのはいうまでもない。
テーブルの上の書類は召喚された人間の報告書だ、性別、年齢、家族、今まで自分がどんな環境で過ごしていたのかという事が書かれているが、中には結婚の文字もあるしかも驚いたことに、サンバノ、ジェルソ、ダリウス、キメラの三人だ。
性格にいうとこの三人は普通の人間ではない、合成獣、キメラだ。
「おい、知ってるか、ジェルソさんなんか、嫁を二人ももらったらしいぜ」
「おい、それって重婚とかじゃねえのか」
「キメラだし、軍人ってこともあるから特別待遇だろ」
「おれ、見たぜ、ありゃあ、どう見ても十代だろ、しかも二人とも可愛いんだよ」」
「子供が早く欲しいってせがまれてるらしい、信じられねえ、美的感覚が違うのか」
人間ではない合成獣の姿の方が可愛くて一目惚れだと街中で可愛らしい女の子に両腕を掴まれて歩いている姿を見たという話を聞いたとき、マスタングはそんな馬鹿な話があるかと思った。
だが、軍の所内でばったりと遭遇したのだ。
「これで、あたし達二人とも、ジェルソさんの嫁、ですね、子供も早く作りましょうね、お姉ちゃんは」
「あたしは働く、ジェルソさん一人の給料だと大変だと思うのよ、将来の事も考えないと、子作りは任せた、サポートするから男の子、女の子、最低でも二人ずつ産んでね、子供ができたら一軒家も視野に入れてる、勿論、持ち家をね」
「お姉ちゃん、そこまで考えているの、凄い、あたしなんか」
「子供は若いうちに産んだほうがいいのよ、ねっ、ジェルソさん」
ジェルソは喜んでいいのか、少し複雑な顔だ。
二人の美少女は虫類大好きで子供の頃からトカゲや蛇をこっそりと可愛がる、いや、内緒で飼っていた、将来は大型の外国産の蛙や蛇を飼いたいと思っていた、ところが、飼育には許可だけでなく、厳しい検査が必要だった。
だが、問題は他にもあった、二人の親がいないこと未成年、姉は19、妹は16歳、家庭環境の問題、親がいないというだけで、これではペットもだが、結婚もできないと思っていた矢先、突然二人は、見知らぬ世界に来てしまった、そこでジェルソを見て一目惚れ、恋に落ちたのだ、ペットではない、話すこともできる、しかも大きいのだ、どこかの錬金術師がデブと言ったらしいが、姉と二人を両腕に抱えてもびくともしない力持ち、しかも軍人、普通のサラリーマンよりは高給取り、これを逃す手はない。
そして、自分達姉妹二人を嫁にしてと猛烈アタックの末、無事に結婚までこぎつけた。
若い女の子に腕を取られて歩いているいる太った蛙男を見たとき、マスタングは自分の目を疑った。
若くてイケメンの自分は恋人、彼女はいる、だが、それだけだ、結婚したら一人に縛られると思っていたからだ、だが、二人は反則ではないだろうか。
大統領選、もうどうでも良くなってきたと思ったのも無理はない。
「気分はどうだね」
眼帯をした男性が自分を見下ろしていた。
「あいにくと珈琲しかなくてね、すまない」
手渡されたカップを受け取ると女は少し不思議そうな顔で男を見上げた、聞きたい事は色々とあるが、まずは飲んで気持ちを落ち着けようと思ったのかもしれない。
「融通の利かないところがあってね、軍人というのは仕事熱心といえば、それまでだが、色々と状況を聞いているうちに君は」
まるで警察の尋問みたいに色々と聞かれた事を思い出した、そして一番嫌な事を思い出して惨めな気分にになってしまった、泣きたくても、それもできなくて、机に突っ伏してしまって、それからどうしたんだろうと思って顔を上げて男性を見た。
「その、恥ずかしいところを」
ほんの少しの沈黙の後、女性なら無理もないという言葉が返ってきた。
「君を元の世界に帰る事もできるらしいが、だが、そうしたくはないだろうね」
「その、仕事辞めて、アパート引き払って」
口からこぼれるように淡々と出るのは自分の話は赤の他人からしたら興味はない、つまりは他人ごとだ、だが、吐き出したいという気持ちがあったのかもしれない。
「すみません、こんな他人の事情なんて」
男はベッドの端に腰掛けると続けてと促した。
「話した方が楽になることもあるだろう」
「心機一転、新たにやり直そうと、つまり、仕事も男もアパートも引き払って、気分を変えようと旅行に行こうと思ったんです」
「そうか、それで、今の気分はどうだね」
訳が分からないうちに知らない場所に来て、警察、軍人に色々と質問されて怖いという気持ちになってしまった、だが。
「今は、そんなに悪い気分ではないです」
「ほう、何故だね」
「愚痴を聞いて貰ったら、悩んだって仕方がないだろうって気分になってきました」
ははっと男は笑った、それはいいことだと。
「貴方がいい男だからですよ」
何か困った事があったら軍の移民サポートセンターに来ればいいと言われて女は、ありがとうございますと頭を下げた。
「ブラッドさんでしたね、軍人さんなんですよね」
「退職したばかりなんだよ、だから、わかるだろう、周りの目が、用もないのにオヤジが来ているといいたげな」
廊下を歩いているとすれ違う人たちが皆慰霊して頭を下げている、退職したというが、もしかして偉い人ではと思いながら女は隣を歩く男性を見た、貫禄があるというか、どう見ても下っ端の役人には見えないのだ。
「色々とありがとうございました」
自分の愚痴、たまっていた不満を吐いてしまった後、ブラッドレイと名乗った男性は色々な話をしてくれたのだ、殆どがオヤジギャルというやつだ、十代の少女なら訳がわからないとスルーするだろう、だが、三十路のアラサー、おばさんには丁度よかった、大笑いして腹が痛くなるくらいだった。
「まさか、この年になって女性を泣かす事になるとは思わなかった」
とブラッドさんのあっさりとした言葉を、それも真面目な顔でいうものだから、また笑いたくなった、これもギャグなんだろうか、ついさっきも涙が出るくらいオヤジギャグで大笑いしたばかりだというのに。
軍人という事もあるだろうけど、廊下ですれ違う人は皆、背も高い、日本ではないんだと言うことを改めて実感してしまう。
もうすぐ建物の外に出るというところまで来た。
「ブラッドさん、色々とありがとうございます、愚痴を聞いてくださって、元気づけてくれて、何かお礼をしたいんですけど」
旅行鞄には最低限のものしか入っていない。
「気にしなくていい、移民もだが、君のような巻き込まれて来た人間は、これからが大変だ、礼などは」
ブラッドさんは言葉を切った。
「そうだな、この年になると男も図々しくなってくる、お礼のキスぐらいはいいかな」
どこか楽しそうな笑顔だ、オヤジ、おじさんの笑い顔が素敵、可愛いと思えるのは自分もギャルや少女ではなくなったんだろうと思ってしまった。
持っていたスーツケースを床に置いて、両手を伸ばすと大柄な男の体を抱きしめる、自分がハリウッド映画のボンッ、キュッ、ボンの女優さんみたいなら絵になるんだけど思いながらハグをした後、両方の頬にキスをした。
「なっ、何やってんだ、あのオッサン」
「引退したって言ってたけど」
「非常勤じゃなかったのか」
これを見ていたのは若い軍人だけではなかった、ロイ・マスタングもだ。
木桜 春雨(きざくら はるさめ)性別女性、年齢36歳、年寄りは少し若く見えるらしい、日本人。
真理の扉のアクシデント、錬金術師の不始末ということで、こちらに来ているのが殆どは女性らしいということが判明したのは後のことだ。