Journal de Tsurezure

雑多な日常、呟き、小説もUPするかもしれません。

十二国記×ハガレン 言葉の通じない世界、流され、流されてええーっ

2022-02-04 09:00:42 | 二次創作

 言葉が通じないということに驚いた、知らない場所、日本と似ているようで全然違う場所、どうすればいいのだろうかと途方に暮れたといってもいい、そんなときに知り合ったのが鼠、楽俊(らくしゅん)だった。

 「おまえ、海客(かいきゃく)みたいだな、よし、ついてきな」

 鼠が何を言っているのか全然わからなかった、ただ、手招きして着いてこいという素振りをしたので思わず、後をついて行ってしまった、あのときのことを考えると、もし、大変な目に遭ったらとか、騙されたらとか、不安もあった。
 多分、自暴自棄、どうなってもいいなんて思っていたのかもしれない。
 まるで、映画、小説の中の世界に自分が放り込まれた気分だった、物語の主人公なら不思議な力を持っていてチートな能力で困難、それって何ですか、そんな感じだろうけど、自分は村人、平民でもない、人の形をしているだけの、ものだ。


 鼠と一緒に数日間の旅行は決して楽でも平穏でもなかった、時折、声をかけてくる人がいたけど、言葉が通じないという事がわかると不思議そうな顔をする人、でも中には、はっきりと嫌悪の表情で、こちらを見る人もいた。
 だけど、それは自分だけではなく。
 相手の言葉はわからない、でも、表情でわかった。


 着いたところは大きな建物、まるで中国の城を思わせるような建物で、そこで彼女に出会った。
 近所の女子高生、中嶋さん、名前は確か、ああ、陽子、仲が良いという訳でもなく、でも本屋で偶然出会って、そのとき、会話をしたことがきっかけで顔を合わせると挨拶して、本の事を話したりするようになった。
 女子高生の彼女は、覚えて居たときのどこか気弱そうな顔つきではなくて、どこか逞しく感じて、思わず若いっていいなあと思ってしまった自分がいた。 


 「もしかして、ハルさん」

 名前を呼ばれて、会話ができる事が、こんなにも嬉しいと思った事はなかった、そして色々なことを教えてもらった。
 賓満(ひんまん)という妖魔が憑依すれば、どんな国の言葉でもわかっては会話にも不自由はしないということもわかった、賓満を憑依させてあげるからと言われて思わず頷きそうになったけど、一週間ほど悩んで、迷って、それは断った。
 
 
 蝕が起きて日本とは違う、この国に流されてきた人は海客は国によっては下に、人とは見られないということ、でも半獣もと知ったときは、納得した、ここに来るまで鼠を見る人達の視線の意味が。
 凄くシビアというか、厳しいんだなと思ってしまった。

 「楽俊(らくしゅん)」

 鼠の名前は楽俊(らくしゅん)というらしい。
 賓満がなくても彼が自分を、ここまで連れてきたことには本当に感謝してもしきれない、彼は学生で学校に行っていると聞いて、しかも、日本の東大よりも厳しく、難しいと聞いて驚いた。
 彼はかなりというか、上位、凄く頭がいいと聞いて尊敬した、というか納得してしまった。
 (だから、海客のことも、言葉が通じないからって変な目で見ないのだろうか)
 それを通訳して貰うと楽俊は違うと言った、そういう性分なんだという、陽子ちゃんが楽俊は凄いんだというけど、素直に納得できた。 


 城に住むのは断った、迷惑はかけられないと思ったからだ、ただ、慶東国の住民票を作ってもらい、小さい家も借りた。
 王の知り合いということで家主は色々と配慮してくれた、もっと大きな家を借りては、なんていわれたけど無職のアラサー女だ。
 
 一ヶ月、三ヶ月、半年、一年、自分はここで生きていくんだと思ったとき、旅行をしてみようかなあと思ってしまった。
 同行、案内役をつけようかといわれたけど断った、安全な道を行くし、王からの旅券、騎獣も借りたから大丈夫だ。
 
 旅の途中で具合の悪そうな女性を見つけて、思わず声をかけてしまった、でもすんなりと言葉が通じた事には驚いた、彼女は麒麟、芳国の麒麟だという、顔、手、青い痣とただれた皮膚が痛々しかった。
 不意に思い出した、楽俊に助けられたときの事を、あの時の自分だって周りから見れば、ホームレス、いや病人みたいに見えた筈だ。
 騎獣に乗せて、ゆっくりと歩いた、少し豪華なマントを買って、彼女に着せて旅をしていると高貴な人が病気と思われていた。
 蓬山(ほうざん)の湧き水を飲めば良くなるかもという話を聞いて、行ってみようかと思ってしまった。


 「道中、お気をつけて」

 見送られて思うのは麒麟という生き物は獣の姿でも人の姿になっても美人で綺麗、ハンサムなんだなあと思ってしまったことだ、陽子ちゃんの麒麟、景麒(けいき)も二十歳ぐらいの金髪の男性、顔は良かったことを思い出す。
 ああ、自分も麒麟並みとは言わないまでも少しぐらい綺麗ならよかった、クリスマスも年末もとっくに過ぎてしまった自分は、結婚なんて。
 ふと、ある男性の顔を思い出した壁落人(へき らくじん)元気かなあ、同じ日本人、会いに行ってみようかしらと思ったのは懐が温かいからだ。
 芳国の王から感謝の証として、お金を貰ってしまった、騎獣を宿に預け、街で饅頭でも買って食べようと思った時、視界がぐらりと揺れた。

 地震だろうかと思い周りを見る、だが、人々は普通に歩いている、もしかして目眩かと思って膝を折り、屈み込む、その瞬間、背中、全身が重く感じられた。
 何故か思い出したのは川で遊んでいる子供の姿だ。

 「危ないよ」

 川に入った自分は子供達に水から出るように声をかけた、大きな川ではなかった、なのに水が、まるでいきなり。
 何故、思い出した、忘れていたのに。

 そのとき獣の叫び声が聞こえた。


 うっすらと目を開けるとまぶしさに目が眩みそうだった、眠っていたのだろうか、暖かいから、もう少し眠っていたい、でも、体を起こそうとして視線を動かすと窓からの光と背を向けている人の姿が目に入った、黒髪の男性だ。
 疲れるし、獣の姿の方が楽だから人の姿になるのはあまり好きじゃないと言っていたことを思い出した。
 そうか、自分を運んでくれたんだ、今日は家庭教師の火だったかな、他国の言葉を完全には覚えていない自分の為に、時々、尋ねて来ては色々と教えてくれるのだ。
 音を立てないように起き上がって近づきながら、両手を伸ばして抱きついた。

 「ラークシュン」

 


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