はじめ塩商を営んだが,失敗すると仲間の葉宗満(しようそうまん)らと海船を造り,禁制品の硫黄,生糸などをもって日本,呂宋(ルソン),安南,タイ,マラッカ方面と交易し,巨富を築いた。明の海禁政策が強化されると,彼は五島,平戸を本拠として日中の密貿易業者らを率い中国沿海を略奪した。いわゆる倭寇である。・・・
一五四〇年ころ、明政府の海外貿易禁制のゆるみに乗じて広東にゆき、硝石・硫黄・生糸・綿などの禁制品を積んで暹羅(シャム)や南洋方面で密貿易を行なって、数年で巨富をたくわえた。王直の日本来航は、『新豊寺年代記』では天文十一年(一五四二)、『鉄炮記』では同十二年、『日本一鑑』では同十四年と伝えられている。『鉄炮記』の王直は、大明儒生五峰先生として種子島の鉄砲伝来に一役買っている。・・・