科学の本質を探る
【科学の本質を探る⑰】コペルニクスの実像―地動説は失敗作 阿部正紀
2015年11月23日07時44分 コラムニスト : 阿部正紀
【今回のワンポイントメッセージ】
- コペルニクスの地動説はローマ教皇から絶賛されたが、失敗(プトレマイオスの天動説より天球の数が増えた)を恥じたコペルニクスが出版を遅らせた。
迫害されず、絶賛された地動説
【まとめ】
- コペルニクスは迫害されなかった。教皇から地動説を出版するよう勧められたが、失敗作であった(天球の数を増した)ことを恥じて出版を遅らせた。
- 彼はキリスト教的な世界観を抱き、古代ギリシャ思想の原理(一様な円運動)に基づいて地動説モデルを作り、当時流行していた神秘主義思想(新プラトン主義)の「太陽礼賛」と結び付けて人々にアッピールした。
- 彼は観測をほとんど行っていない。科学は、観測データが集められ、合理的な考察によって発達してきたと考える常識的な見解は、修正すべきである。
【次回】
- ケプラーが神秘主義思想から「ケプラーの3法則」を見いだしたことを説明します。
※2017年11月20日に内容を一部修正しました。
※2019年8月28日に内容を一部修正しました。
※2019年8月28日に内容を一部修正しました。
◇
阿部正紀
(あべ・まさのり)
東京工業大学名誉教授。東工大物理学科卒、東工大博士課程電子工学専攻終了(工学博士)。東工大大学院電子物理工学専攻教授を経て現職。著書に『基礎電子物性工学―量子力学の基本と応用』(コロナ社)、『電子物性概論―量子論の基礎』(培風館)、『はじめて学ぶ量子化学』(培風館)など。