8月12日のシンポジウムには、会場のキャパシティをほぼ満たす40名もの人たちが集まってくださった。8月初めから続いていた学校図書館関係諸団体の大きな大会が一段落し、お盆休みにかかる時期だったので、正直に云って、これほどの人たちが来てくださるとは思ってもみなかった。皆さんを動かしたものは何だったのか?
今回のシンポジウムは、『思考力の鍛え方』で紹介されている実践の背景を知りたいという私の個人的な想いに著者である桑田さんたちが応えてくださったものである。皆さんが司書、司書教諭として、どのような働き方をし、それぞれの学校の教育にどのように関わってこられたのか。その過程で何を考え、どのような変容が起こったのか。それを解明することで、これから学校図書館を切り開く手がかりを得られると思った。
パネリストを引き受けてくださった皆さんの実践は一様ではない。共通しているのは、それぞれの学校の風土やニーズに応じて、思考力や言語力を高め、探究型学習につながるツールとプログラムを提供してこられたことである。といっても、6段階モデルやグラフィック・オーガナイザーそのものは、けっして目新しいツールではない。私が注目したのは、これまで日本の学校図書館できちんと使いこなされていなかったこれらのツールが、どのようにして教師と学校図書館職員との協働のためのツールとなりえたのかということである。シンポジウムでは、「学校図書館のミッションの捉えなおし」「学校文化に根差した協働の模索」「研究者と現場の実践者とのコラボレーション」が現状の変化をもたらすカギとなったことが確認できた。
これからの課題は、新しい時代の教育課題に応える学校図書館のミッションを明確にすることであろう。そのためには、ほぼ1世紀にわたって国家的な教育課題に応えようとしてきたアメリカの学校図書館の経験と成果に学ぶことは多い。とりわけ、1988年のガイドラインから1998年の「情報リテラシー基準」を経て2007年に策定された「21世紀の学習者のための基準」の今日的意義を検討しておく必要がある。その上で、単なる理念や方針の表明ではなく、評価とアカウンタビリティをともなう日本型学校図書館の基準やガイドラインを策定することが可能なのかを議論すべきであろう。
今回、シンポジウムという形で私の想いに真摯に応えてくださった皆さんに心から感謝したい。相手(利用者)のニーズを汲み取って適切な対応ができるしなやかさと心意気こそが、皆さんの活動の基本になっているのだろう。これを契機にして、各地でさらに議論を深めていただくことを願って今回のシンポジウムの記録を下記に公開することにした。実践の上澄みだけでなく、司書・司書教諭の働き方(学び方)と、その根底にある思考法と理念を汲みとっていただきたい。
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