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学びの根っこには「自ら変わる力」がある!(映画「かすかな光へ」神戸上映に寄せて)

2011年11月22日 | 「学び」を考える

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 日本社会を覆っている混迷や声高に叫ばれる「改革」の価値観におぼれそうになっていた私にとって、2009年元旦の朝日新聞(特集「学ぶ楽しさ」)に掲載された谷川俊太郎さんの詩「かすかな光へ」は、救いであった。この詩をとおして、あらためて学びの原点を見つめなおし、これから向かうべき方向を確認することができたのである。暗闇に光明を見た思いで、さっそくこのブログで紹介させていただいた(今春、自費出版したHere Comes Everybody足立正治の個人史を通して考える教育的人間関係と学校図書館の可能性』にも採録させていただいた)が、同じ思いをもったのは私だけではなかったようだ。東京大学名誉教授で日本教育学会の会長もつとめられた大田尭さん(93歳)も、この詩に注目された一人だ。

かすかな光へと歩む/生きることと学ぶこと
クリエーター情報なし
一ツ橋書房


・・・よく考えてこの詩を読むと、この詩の勘所に使われている「なめる」とか、「さわる」とか、「すでに学びがひそむ」とか、「何故」「どうして」とか、「問いつづける」とか、こういうことを、今の学校教育の中でしっかりやっていますか? この鍵になる言葉を今、日本の教育界に向かって示し、もう一度思い起こしてもらいたい、と私は思うのです。(大田尭・著『かすかな光へと歩む 生きることと学ぶこと』p.51、一ツ橋書房、2011

 

 この詩に重ねて大田さんが語るのは、人の生涯にわたる学びの根っこには「自ら変わる力」があって、これを核心に据えなくては教育そのものが成り立たないということ。(以下、少し長い引用になりますが、ご容赦ください。) 

 

生命というものは、自己創出力、生命科学で言う己を創りだしていく力、自ら変わる力を、あらゆる生命体が持っているということ、このことを根っこにして学習ということが成立しているのだ、というのが私の考えです。あらゆる生命体が持っている「自らを自らで変えていく」能力、そういう能力が根源にあって、その力を通じて、ある段階からその動物の中に、脳と神経系の形成があり、そこから感覚運動の学習が起こるのです。ネズミを例にとれば、迷路実験にもありますように、ネズミは迷路を選んでいちばん近い道を選び解く、そういう学習をやっていく―という仕組みになっていると思うのです。ヒトには、あるいは他の動物の場合にも、傷ついたときにそれを治していく力、自分で治していく力がある。たとえばイヌでも、胃の調子が悪いときは特定の草を食べる。そうすることで治癒力を助けるすべを知っている。それはおそらく、長い時間をかけた学習の成果だと思います。進化というものは、ある意味で学習の積み重ねだと思うのです。そういう重い意味を持っているのが学習だと考えます。

  おもしろいことに、私たちはつねに、新しい外的刺激を限りなく受けることによって、その外的刺激に対応する選択を重ねていく。そういうことで、つねに変わっていっている。分子のレベルで言えば、毎秒毎分変わっているということが言えるのではないでしょうか。まして、私たちの細胞のほぼ半分は、180日のうちに変わると言われているのです。大田尭も大正7年=1918年に産まれて、そして今の老人になった。自ら変わりつづけた。そして、内的外的刺激とのかかわりの中で今ここにある。とこういうことになっているわけですが、不思議なことは、こんなに変わっても、私はまちがいなく生まれたときの私である。それが摩訶不思議だということだと思うんです。生きものというのは変わりつづけるけど変わらない。それ以外の何ものでもない。

・・・他の生き物全部を通底する生命力そのものに根っこをもっているのが学習であって、教育というものは、社会と文化の中に選ぶ余地なく産みつけられた人間の子どもたちが、その文化と社会に馴染まなければならないから、教わらなければならない、ということが起きる。けれども、いくら教えても、根っこである自己創出力、学習能力というものがその一人ひとりにユニークにあるのだ、ということの核心がなければ、それがなければ、それをはずしては教育は成り立たないのではないかと、私は思うんです。(同上、pp.52-54

 

教育史と教育哲学の研究者として一貫して学びの原点を問い続けてこられた大田尭さんの戦中戦後の歩みと教育に賭ける情熱を追ったドキュメンタリー映画「かすかな光へ」監督・森康行)の自主上映運動が各地で進んでいる。そして神戸でも、いよいよ17日から13日まで神戸アートビレッジセンターで上映されることになった。映画では、谷川俊太郎さんご自身が「かすかな光へ」を朗読されているそうだ。この機会に、映画を見て、これからの教育のありようについて、さまざまな想いを分かち合いたいと思う。この私のブログに関心を寄せてくださっている人は下記にご連絡ください。チラシやチケットの問い合わせも、どうぞ。masa-sem@goo.jp

映画「かすかな光へ」神戸上映日程

会場:神戸アートビレッジセンター

上映日程:201217()113(金)*110日(火)休館日 1日2回上映 10:00/11:35

料金:(実行委員会チケット)1,000

 「かすかな光へ」公式サイト

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