小学6年生の二郎(田辺修斗)の悩みは、父親の一郎(豊川悦司)があまりにも型破りで恥ずかしいこと。例えば修学旅行の積立金が高いと思えば、校長と直談判しに学校へ乗り込んでくる。しかし、そんな父のよき理解者である母・さくら(天海祐希)の一声で、一家は東京から、父の故郷・西表島に引っ越すことに!
奥田英朗の同名小説を、個性派映像作家 森田芳光が監督、主演に豊川悦司、天海祐希、北川景子、松山ケンイチが出演。
映画は長男二郎の目線で語られ、破天荒の生き方をする父一郎と上原家の姿が描かれる。
映画の構成は東京を舞台にしたコミカルな前半と、沖縄の西表島を舞台にした後半の2部構成で描かれる。
映画の感想ややネタばれあり
おかしい事におかしいと言えない現代社会を「ナンセンス!」の一声と決めポーズで一刀両断する父一郎の姿が見ていて気持ち良い。
設定では、一郎とさくらは80年に活動した元過激派となっているけど、演じる役者の年齢と照らし合わせるとかなり設定に無理があるように感じたが、あくまでも寓話として判断してその辺は目をつむる事に・・・。
区役所のおばさん、学校関係者、建築業者を相手に自論で相手をねじ伏せる一郎の姿は、豊川のネッチリとした論法と共になかなか良い事を言っているのに共感する。
映画は前半、二郎の目線で現代社会を生きる小学生の姿が面白く描かれ、母の実家を桃子と共に訪ねるシーンで、リッチな生活を送る実家の子供たちのシーンが初期の森田作品に通じる印象を受けた。かなり話としてはギスギスとした話なのだが、桃子を演じた松本梨菜の子供らしい難しい言葉に対して「過激派ってなぁに?」と聞く姿が映画のガス抜きになっていたように感じた。
映画後半、グウタラだった父がキビキビと働く姿が、東京と沖縄の生活の対比になっていて面白い、働くトヨエツもまたカッコいい。
西表島のリゾート開発のエピソードは2003年7月に提訴された「西表島リゾート開発差止訴訟」をモデルにしたと思われるが、自由を求めて移住した上原家だったのに、また新たなる騒動に巻き込まれる誤算は、現代社会の矛盾を批判しているように感じた。
映画の着地点は、「パイパティローマ」というファンタジーの世界に話が行ってしまい、一郎の今までの思想や言論から矛盾するように感じたが、見る人によって好みが分かれると思う。
映画全体としてなかなか面白い作品だった。二郎を演じた田辺修斗の自然体の演技と、他を圧倒する豊川悦司の演技が光る。北川景子はあまりにもナチュラルすぎて本人と判らなかった。森田の演出も奇をてらった物ではなく、正攻法のスタイルに好感を持った。
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