イスパ語劇の歴史編纂企画のブログ

イスパ語劇の歴史を振り返る文集を作ります。作業進捗状況を伝えていきます。問い合わせ先はイスパニア語学科吉川恵美子

76-55 高橋正江さんのエッセイ

2012年07月14日 | 日記
お待たせいたしました。2012年7月1日に到着した高橋正江さんの語劇の思い出エッセイの一部をアップいたします。長いエッセイなので記載できるのはほんの一部です。ご本人の了解を得て、お名前はフルネームで記載します。

編集者が未熟なため、スペイン語の特殊記号(アクセントなど)を反映できません。あしからずご了承ください。(吉川)



私は1976年にイスパニア語学科に入学しました。私の大学生活は、すべて語劇に始まり語劇に終わったといえます。新入生オリエンテーションウィークの頃だったと思います。1号館の講堂で、Victor Ruiz Iriarte のLa vida privada de mamaが上演されていました。それを見た瞬間、私は語劇の魅力に引き込まれてしまいました。入学して間もなく、まだ東京生活に慣れず、戸惑いのさなかにあった私でしたが「叩けよ、さらば開かれん」の心持で語劇サークルの門を叩きました。一緒に入部した新入生が土井迫さん、中村さん、広崎さん、私です。この四人のメンバーは卒業まで語劇で活動しました。途中、高雄さん、末松さん、福田さんが加わります。頼りになる諸先輩と、そして頼もしい後輩たちと共に私たちは四年間を駆け抜けました。
 1年のときの語劇の顧問は故マヌエル・ディエス先生でした。ディエス先生は台本をご自分でテープに吹き込んでくださり、私たち一人ひとりにそのテープが配られました。演目は、La cortesanaだったと思います。記憶がちょっとあやふやなので、間違っていたらご指摘ください。邦題が「背徳の城」でした。内容は、財力も権力も名誉もある熟女が、犯した罪ゆえにしだいにその持てるものを失っていくというものだったと思います。と思いますというのは、まだ1年の頃で内容までよく理解していなかったからです。私の役は、その熟女の若いつばめの愛人でした。田舎から出てきたお嬢さん(?)でただ髪が長かったがための配役だったと思います。先輩方はその長い髪をカーラーを使って美しい縦ロールにしてくださいました。素顔で通していた私でしたが、しっかり舞台メイクをほどこし、アイシャドーやアイラインもばっちり入れていただき、もう別の人格になった心地でした。自分とは違う人間・人生を生きてみることができる。それが語劇の魅力かと思います。
 2年になり、ハイメ・フェルナンデス先生がスペインから帰国され、語劇の顧問になってくださいました。フェルナンデス先生は、Lope de Vegaや近松門左衛門などを研究されていらして、私たちの劇の内容まで踏み込んでご指導くださいました。また、劇合宿などでは、一緒に作品研究をしてくださったり、ときにはルンバを踊ったり、またある特別の日にはミサを立ててくださったり、私たちを全人間的に指導してくださいました。
 2年のときの作品は、Alejandro Casona のLos arboles mueren de pieでした。邦題は、「立ち枯れ」でした。未来に希望を失い、死のうとしていた女性が、ひょんなところから、ある男性から自分の老親の死期が間近いので、夫婦を演じてほしいといわれ、その死を踏みとどまることから話が始まります。老いた母親は、嘘と知りながら、その二人を喜んで迎え入れるのでした。一方死のうとしていた女性と夫婦を演じていた男性との間に、次第にほんとうの愛情が芽生えていきます。この作品では、私はその若い女性の役をやらせていただき、先輩から美しいサーモンピンクのドレスを借りて、髪はちょっと金髪風に整えていただきました。二人の愛情が芽生えた証として、キスシーンがありました。実際にはキスはしませんでしたが、これも当時の私としては緊張の体験でした。



引き続き、皆様のエッセイを募集しています。
ご連絡をお待ちします。

上智大学イスパニア語学科
吉川恵美子
emiko-y@sophia.ac.jp


2012年語劇史編纂の作業進行状況

2012年07月01日 | 日記
ブログを閲覧してくださっている皆さま

語劇史編纂企画はどうした?と思われていることと思ます。
企画は進行中です。
ただ、少し、いえ、だいぶ、歩みが鈍いのです。

この間の進展事項をご報告します。

6月5日に65年(昭和40年)卒の齊藤康一さんからご連絡をいただき、1963年上演のLos intereses creadosの資料を寄贈していただきました。また、語劇思い出エッセイもお書きいただけるとのことで、楽しみに待っているところです。

また、本日は80年卒の高橋正江さんからエッセイが届きました。ご本人の了承を得てから一部分ブログに掲載します。

歩みは鈍くても、少しずつ語劇史の断片が集って来ています。
ジグソーパズルなら、何ピースで完成するのでしょう。
50年を超える時間の中で語劇に関わった人の数は500人?1000人?
ピースが多ければ多いほど鮮明な語劇史が浮かびあがるはずです。
貴重なピースをお寄せくださっている皆様、ありがとうございます。


現役学生の語劇活動について少しだけご報告します。
6月15日、16日に春の公演を終えました。
演目は『不思議の国のアリス』でした。
おそらく語劇史上はじめての非スペイン語圏作品でした。
秋の公演は11月10日を予定しています。
演目は、これまた、おそらく語劇史上はじめての学生創作オリジナル台本です。
ご意見はいろいろあるかと思いますが、語劇のあり方を考えるひとつのチャンスだと考え、顧問の私は見守っています。


75年卒業

吉川恵美子

emiko-y@sophia.ac.jp