これは、惑星カインのクリスの騒動に巻き込まれる前の、バカンスを満喫するジョウのチームの話。
昼はビーチでたっぷり命の洗濯。夜は豪華なディナーに舌鼓を打ち、当地のダンスショーやイベントを愉しむ。ときには、街に繰り出して酒場でゆるりと飲むときもある。
まさに極楽の日々を送っていた。
「ジョウ、今夜はこれからクラブに行かない?」
コンコン。ノックの音とともにジョウの部屋のドアが開き、アルフィンが顔を覗かせる。
花柄の白いワンピースに身を包み、夜に映える。ジョウはカウチに寝そべっていたが、上体を起こして言った。毎日ビーチに出ているせいで、宵闇になじむ獣のように彼は真っ黒に焼けていた。
「いいけど。アルコールをほどほどにするんなら」
「大丈夫大丈夫」
ジョウの元へやってきて、腕を取ろうとする。
彼は目を細めた。
「満喫してくれてるようで、何よりだ」
ここに来てからアルフィンは毎日とても楽しそうだ。リラックスしているし、エステだヨガだ、サップだといきいき活動的に過ごしている。
「うん。とっても楽しい。ジョウのおかげ」
「俺の?」
「連れてきてくれてありがと。感謝してる」
あたしさ、と腕を絡めながら話し始める。
「ピザンにいたころは、海で泳ぐなんて到底無理だったの。ほら、王女の水着とか……盗撮されたら、たいへん。ゴシップとして報道されちゃうでしょ」
「なるほど」
ジョウは神妙な面持ちになる。
アルフィンは続けた。
「宮殿にプールはあったけど。やっぱり……なんかね。人目を気にしないで泳ぐのって、こんなに開放的な気持ちになるのね。最高」
「……まだしばらく逗留するから。もっと楽しめばいい」
優しい顔で、ジョウはそっとアルフィンの髪を耳に掛けてやる。空いている方の手で。
くすぐったそうにアルフィンは微笑んで、
「そのつもり。だから、浮かれてイロイロな種類の水着を持ち込んで、毎日とっかえひっかえしてごめんね。贅沢だって叱らないで。はしゃいでるの」
と言う。
「叱らないよ。こちらとしても目の保養だから」
ジョウは言ってウインク。ぱちっと。
「まあ」
「行こうか。タロスにちょっと声かけてくる」
「遅くなるって言ってもいい?」
ジョウにぴったりくっつきながら、アルフィンが見上げる。
「……朝がえりにならない程度なら、いいんじゃないか」
少し、バツが悪そうにジョウは答えた。
「うふふ。ーーそうだ、ジョウ、言っておくけど。あなた、今の時代、日焼け止めも塗らないでビーチに出るなんて自殺行為だからね。紫外線って怖いのよ」
いきなり話題が変わる。
え? あれ? 何でだ。すごくいいムードってか、甘い雰囲気になってたのに。
クラブ帰りに、どこか休める場所で二人きりでしっぽり……っていう「誘い」じゃなかったのか。ええ? と当惑するジョウ。
そんな彼にお構いなしにアルフィンは滔々とまくしたてた。
「あなた、黒く焼けてるのはとても精悍でかっこいいけど。明日からは少しでも塗りなさいね、日焼け止め。あたしの、貸してあげるから。いーい?老化の原因はほとんどが紫外線。あなた、普段から宇宙灼けしてるんだから、なおさら気を付けないと」
「う、うん……?」
なんか変な雰囲気になっちまったな。頭をひねりつつ、腕を組んだ二人はジョウの部屋を出てクラブに向かったのだった。
END
4巻の冒頭が読みたくなって、季節感無視で書きました。
ところで、カセット文庫で「暗黒邪神教の洞窟」と「銀河系最後の秘宝」を持っているんですが、そろそろCDとかに焼かないと、保存が悪くなって聞けなくなっちゃいますね。。。。 もう20年とかカセットデッキに掛けてないかも。と、気が付きました。だってデッキがないもの~…