背中合わせの二人

有川浩氏作【図書館戦争】手塚×柴崎メインの二次創作ブログ 最近はCJの二次がメイン

どこへでも 最終話(ジョウ×アルフィン)

2021年05月22日 09時12分19秒 | CJ二次創作
「5」へ

「もう……ジョウったら」
アルフィンは涙で目の前がかすむ。鼻の付け根にくしゃっとしわを刻んだ。
ジョウの胸に額を当てたままくぐもった声で言った。
「ふだんはあんなとーへんぼくなのに、たまにピンポイントで気障なんだもの」
「唐変木?」
「ほんと詐欺みたい、こんなの。詐欺師」
「詐欺師って、お前な」
さすがにひどい言われようだと、アルフィンの顔をのぞき込もうとして、ジョウは動きを止める。
アルフィンが泣いている気配が胸元でしたから。
「・・・・・・」
背中を、撫でてやる。繰り返し。しばらくそのまま時間を待った。
「ジョウ」
ややあって、アルフィンがそっと呼んだ。もう声は震えていない。
「ん?」
「あたしと結婚して」
アルフィンが言った。くっとあごを持ち上げる。
正面から至近距離でジョウを見つめる。そして続けた。
「あたしとこれからもずっと一緒にいて。あなたの隣がいいの。ほかには何もいらない。
ーー愛してるわ」
ジョウの目前でとびきりの笑顔が花開く。真っ白な百合が風に揺れるように。
ジョウにしか見せない、極上の笑みだった。
ジョウは言葉をなくした。ただ、アルフィンを見つめる。
目が離せない。まばたきもできない。
息を呑む美しさだった。
アルフィンは続けた。
「あたし、半年離れているあいだ、寂しかった。ジョウと直截会えないの、寂しくて寂しくて堪らなかった。
コロナに罹ってもいい。あなたに会いたい。あなたのところに行きたいって、ずっと思ってた。
もしこのままあたしかあなたか、どっちかコロナに罹って万が一のことになったら、ーーもう二度と会えないかも知れないと思ったら、怖くて仕方がなかった。じっとしていると、自分がじわじわ死んでいきそうな気がした」
物を食べても味がしなかった。綺麗な景色を見ても心に入ってこなかった。
だから、あたしわかったの、と続けた。
「あたしはあなただけでいい。ずっと好きよ。今までもこの先もあなただけが好き。隣に置いて。大好きなの」
そこまで言い終わらないうちに、ジョウがアルフィンを抱き上げた。
ひょいと脇の下に手を差し込んで。急に視界が高く開けてアルフィンが思わずきゃっと歓声を上げる。
タオルケットが床に滑り落ちた。
「俺の負けだ、アルフィン」
ジョウが言った。アルフィンを抱え上げたまま。
「完敗。君にはかなわない」
昔も今も。すがすがしいほど。
まっすぐな光のような女(ひと)。
「ジョウ」
アルフィンが笑う。足が地に着かず、宙ぶらりん。幸せで、無重力のエリアに浮いているみたいだった。
「まるで天国にいるみたい」
そう彼に告げると、ジョウも笑った。
「君と一緒なら、いつもどこにいても天国だ。
最高のプロポーズをありがとう。一生忘れない」
言葉が足りない。追いつかない。
アルフィンのように、わき上がる想いを言葉にできない。
だからジョウはアルフィンにとびきりの口づけを捧げた。
「愛しているよ」


「おっ、兄貴とアルフィンだ」
翌日。きれいに晴れたアラミスの空の下。
連れだって街角を行くマスク姿の男女をエアカーの運転席から見つけたリッキー。
マスクをして私服でいても二人はすぐに分かる。まずスタイルがいい。黒髪で長身のジョウと金髪碧眼でモデル体型のアルフィン。歩いているだけで人目を引くことこの上ない。
有名人のふたりが、ガード甘いなあ真昼間っから。パパラッチされちゃうぜ。
そう思いながらエアカーを徐行させてリッキーがウインドウを下げて身を乗り出した。歩道に寄せる。
「兄貴い、アルフィン」
「リッキー」
二人がリッキーに気づいて歩を止める。驚いた表情。
「どうしたの。カッコいい車に乗っちゃって」
「レンタルした。いいでしょ」
えっへん、と鼻を指先ではじく。
「ゆうべは、仲間と遊んだのか」
「うん。でも、3人で、個室だぜ。たった1時間でお開きにしたよ」
飲食店や歓楽街にも感染症対策が徹底的に布かれている。若いとはいえ、リッキーもクラッシャーのプロだ。罹患して、チームに迷惑をかけるような真似はしない。
「あんたにしちゃえらいわ」
「ひどい言われようだな。ーーで、お二人さんは今日はこれからどこへ行くんだい?」
リッキーに訊かれて、ジョウとアルフィンは顔を見合わせる。
なぜかジョウは照れた風に目線を逸らした。リッキーが? と首を傾げてアルフィンを見る。
「どこへでも、と言いたいところだけど」
アルフィンがふふ、と微笑んで言葉を引き取った。ジョウの腕に腕を絡ませ、マスクを着けたままウインク。
マスクごしに幸せオーラがまばゆくあふれ出る。
「今からふたりで婚約指輪を買いに行くの。……行ってきます!」


END

手柴の対の話がほしくて、読み切りで書いたのですが。
途中でビックカップルのご結婚のニュースが入ってきて、とてもとても幸せな気持ちになってこんな展開に。
自分でもびっくりです。
星野源さん、新垣結衣さん、ご結婚おめでとうございます。末永くお幸せに。

最近、PIXIVはじめました。昔の手柴やらCJやらを公開しています。
あちらでしか読めない話もありますので、よろしければご覧ください。
安達 薫

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